Archeco
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STAGE-GATE

ステージゲート法

段階ごとの通過判定基準と、答えるべき問い

ステージゲート法とは

ステージゲート法とは、新規事業を「調べる・確かめる・作る」の段階に分け、段階の終わりごとに置いた関門(ゲート)で、次の段階に進めるかを判定する進め方です。1回の大きな投資判断ではなく、小さな判断を何度も重ねることで、外れたときの損を小さくします。

段階(ステージ)確かめることの範囲。顧客と課題 → 提供価値 → 解決策 → PoC の順に進む
関門(ゲート)段階の終わりの判定。続ける・直して戻る・やめる、のどれかを決める
判定の材料事業計画の出来栄えではなく、その段階で集めた事実(顧客の声・観測データ・検証結果)
判定者予算を出す人と、現場をよく知る人の両方。同じ基準を事前に共有しておく

もとは製品開発の手法(ロバート・クーパーが提唱)ですが、新規事業では「作る前に何を確かめるか」を揃える道具として使われます。ARCHECO が社内外の審査で使ってきた回答シートを、汎用の形に直して下に公開しています。

4つの段階と通過判定基準

顧客と課題(CPF)→ 提供価値(VPF)→ 解決策(PSF)→ PoC検証計画の順に進みます。各段階で答えるべき問いと、そのとき使う道具(テンプレート)を並べました。問いはクリックで開閉できます。

  1. 1顧客と課題(CPF)
  2. 2提供価値(VPF)
  3. 3解決策(PSF)
  4. 4PoC検証計画

STAGE 1|Customer Problem Fit

顧客と課題(CPF)

通過判定基準

解くべき課題仮説と顧客が明確になっており、解決策のアイデア(方向性)が存在する。

「誰の、どんな場面の、どんな困りごとか」を事実で固める段階です。解決策の具体的な作り方やビジネスモデルは、まだ要りません。n=1 でも、課題が実在する事実を添えることが求められます。

01

主な対象と課題

  • ターゲットと、ターゲットが直面している課題は明確か
  • ターゲットが関わるのはどの市場か
  • 課題は、どんな場面・業務プロセスで起きる、どんな不満・未充足なニーズか

使う道具顧客インタビューJTBD

02

課題に気づけた理由

  • この課題に、自分たちのチームだけが気づけている有利な状況はあるか。あるならその根拠は

使う道具VRIO

03

課題に取り組む動機

  • 課題とチームの結びつき(原体験)はあるか

使う道具WANT・CAN・SHOULD

04

副対象(協力者・関係者)の課題

  • 提携先・パートナーなど、主対象以外の関係者と、その課題は明確か

使う道具ステークホルダーマップ

05

インサイト

  • 「実現は難しい」と思い込まれがちだが、調べてみると実態が違った点はあるか

使う道具顧客調査

06

課題を解消できる見込み

  • どんな解決策が実現できれば、この課題は解消できそうか
  • 解消できると考える根拠と、いちばんの困難は何か

使う道具解決の方向性の幅出し

07

課題から成果(KGI)への因果

  • 対象の課題・解決の方向性・それが利用者の KGI にどう効くかを、簡潔に図で示せるか(ビジネスモデル図ではない)

使う道具因果の図解

08

課題仮説の一次検証

  • 課題の存在を示す事実(関係部署へのヒアリング、現場での気づき、生活者・企業の声。n=1 でよい)はあるか
  • なぜその課題仮説を置いたのか、根拠は何か

使う道具ヒアリングシート顧客インタビュー

09

誰の課題か(セグメント)

  • 地域・属性(年齢・業種・規模など)・価値観・行動(既存サービスの利用歴など)で、どんなセグメントの課題か

使う道具ペルソナ

10

いつ・どこで起きる課題か

  • 企業・生活者の行動と感情の流れのどこで「不」が起きているか
  • 不が起きている接点(店頭・電話・自社サイト・SNS など)はどこか

使う道具カスタマージャーニーマップ業務フロー

11

どんな種類の課題か

  • 機能的な課題(待ち時間・高コスト・手間)、情緒的な課題(不安・不満)、社会的な課題(孤立・自己表現できない)のどれか

使う道具JTBD

12

課題の深刻度

  • 「解決手段が無く放置できない」「別の手段で解決できるが不満」「我慢できる」のどれに当たるか。事実を添えて

使う道具顧客インタビュー

13

予算・時間・頻度

  • 課題に関わる予算の上限(企業ならどの部署のどの予算か)と、いま実際に払っている金額
  • いま割いている時間と、課題の発生頻度

使う道具現状コストの測定

14

外部環境と市場規模

  • 社会の変化を踏まえて、この課題は今後どう増えるか
  • TAM・SAM・SOM で、検討に値する規模と成長性があるか

使う道具PESTTAM・SAM・SOM

15

自社が・今、取り組む理由

  • なぜ自社が取り組むべきか
  • なぜこのタイミングで取り組むべきか

使う道具WANT・CAN・SHOULDVRIO

STAGE 2|Value Problem Fit

提供価値(VPF)

通過判定基準

発見した課題仮説に対して、どのような価値をどのように届けることが課題解決につながるのかが明確であること。

課題を解く「価値」と、それを事業として成り立たせる形を決める段階です。1つのアイデアに固執せず、解決の方向性の幅を残したまま、競合・自社の強み・収支を照らし合わせます。

01

課題・手段・価値の三階層

  • ターゲットの課題を頂点に、いま存在する解消手段と、それぞれが提供している価値を三階層のツリーにすると、今回の提供価値はどこに位置するか

使う道具ロジックツリー

02

価値が課題を解く仕組み

  • 解決の方向性は次のどれか: ①課題の発生頻度を下げる ②発生時の影響を弱める ③検知・対応を速める ④発生後の回復を早める ⑤そもそも発生しない状況をつくる

使う道具解決の方向性の5分類

03

事業モデルと収支

  • 課金の方式(物販・従量・ライセンス/サブスクリプション・手数料・広告・データ販売)はどれか
  • 取引の形(B2C・B2B・B2B2C・C2C)はどれか
  • 費用と収益の構造を、具体的な数字で示せるか

使う道具事業計画書収益モデル

04

顧客・競合・自社(3C)

  • 顧客がいま時間とお金を使っている競合サービスは何か
  • CPF で置いた顧客と課題の仮説から、差分はあるか
  • 自社が競合と戦うための強みと、提供価値の独自性は何か

使う道具3C分析

05

機会と強みの適合(PEST→VRIO→SWOT)

  • 政治・経済・社会・技術の観点で、どんな機会があるか
  • 強みのカテゴリ(提携基盤・実績・顧客基盤・データ・知財・コンテンツ・資金)と、その中身を VRIO(価値・希少性・模倣困難性・組織)で分析するとどうか
  • 弱みと、その補い方。まだ顕在化していない将来の脅威は

使う道具PESTVRIOSWOT分析

06

WANT・CAN・SHOULD

  • チームがやりたい事業の形と、そう思うに至った原体験
  • いまの資産で確実に実現できる事業の形と、その根拠となる資産
  • 使命感を持って実現すべきだと考える事業の形と、その背景の課題

使う道具WANT・CAN・SHOULD

07

CAN から SHOULD への成長の筋書き

  • やれること(CAN)から始めて、やるべきこと(SHOULD)に至る成長の筋書きは。それはやりたいこと(WANT)と合っているか
  • 1年・3年・5年で、使う資産・獲るべき強み(成長のレバー)と、関係者との関係はどう変わるか

使う道具バックキャスティングロードマップ

STAGE 3|Problem Solution Fit

解決策(PSF)

通過判定基準

ソリューションの実現性・可能性・魅力・優位性が具体的に伝わること。

解決策を「作れるか・売れるか・続けられるか」の目で詰める段階です。関係者の意向を段階で示し、実現可能性・KPI・収支・競争上の位置・体験の流れまでを一続きで説明できるようにします。

01

関係者の協力意向と社内の連携

  • 関係者ごとの利用・協力の意向は、どの段階か(間接的に確認 → 担当者が前向き → 決裁者に説明済み → 決裁者が前向き → 確約・契約済み)
  • 味方・競合・巻き込むべき相手と、いまの関係を図にできるか
  • 社内の技術・関連部署との連携は要るか。要るなら、開発状況・ニーズの検証・最大のリスクは

使う道具ステークホルダーマップ

02

実現可能性(フィージビリティスタディ)

  • このサービスは実現できる見込みがあるか(結論)
  • 最も大きな挑戦は何か。技術のボトルネック、最大のコスト・投資、法外な費用が生じるリスクは
  • 時流・規制・利用者に求める能力が、ボトルネックにならないか

使う道具フィージビリティスタディ

03

課題と解決策の整合

  • n=1 でよいので、解決策が狙いどおり機能する兆しや事実はあるか
  • VPF のツリーにある別の価値を提供した場合の意見も整理したか

使う道具ロジックツリー顧客インタビュー

04

売上 KPI の検証状況

  • 1年後・5年後の売上につながる KPI のツリーと、そのうち事実(インタビュー・公開情報)で検証済みの箇所はどこか

使う道具KPIツリー

05

三つの収支シナリオ

  • 5年後の売上、単月黒字・累積黒字までの期間を、強気・標準・慎重の3通りで示せるか

使う道具事業計画書

06

競争上の位置と参入障壁

  • 競合を二分する適切な二軸は何か。各象限での優位性と、競合が後から入れない参入障壁は

使う道具ポジショニングマップ

07

中核となる体験の流れ

  • サービスの中核の流れを、カスタマージャーニーマップ・サービスブループリント・シーケンス図・構造化シナリオのいずれかで示せるか

使う道具サービスブループリントカスタマージャーニーマップ

08

サービスと操作の可視化

  • 将来実現したいサービスを象徴するキービジュアル(1〜2枚)と、主要な流れのモックアップ・ワイヤーフレームはあるか

使う道具ワイヤーフレーム

STAGE 4|PoC Plan

PoC検証計画

通過判定基準

検証する項目と、合格とする結果(勝ち筋)が、検証を始める前に合意されていること。

PoC を「動くものを作る工程」ではなく「判断の材料を取りに行く工程」として設計する段階です。何を確かめ、どんな結果なら次へ進むのかを、始める前に関係者と合意しておきます。ここが曖昧なまま始めると、動いた後で議論が振り出しに戻ります。

01

実行可能性の検証

  • 期待している価値は提供できるか(運用上の障壁は無いか、膨大な費用がかからないか)。この段階で検証すべき項目は何か
  • 簡易に確かめる方法: ①疑似的・部分的な運用で成果データを取る ②既存の基盤・ライブラリで手早く運用してみる ③有識者への深掘りインタビュー(8人程度)
  • どんな結果が出たら実行可能性を担保できたと言えるか(勝ち筋)

使う道具検証計画

02

売上ポテンシャルの検証

  • KPI ツリーのうち、売上・顧客獲得・提携開拓など影響度の高い KPI を達成できる見込みはどれくらいか
  • 今すぐ測れる先行指標は何か。取り方: ①PoC を使ったテストマーケティング(PV・CV・流入元) ②疑似運用 ③既存基盤での簡易運用 ④有識者インタビュー ⑤調査会社のアンケート(500人以上)
  • どんな結果が出たら想定売上を担保できたと言えるか

使う道具KPIツリー検証計画

03

システムの実現性の検証

  • 開発で実現性が不確かな部分はどこか。フィージビリティスタディすべき点は
  • 確かめ方: ①プロトタイプ開発 ②実現できる研究機関・提携先・ベンダーとの連携 ③技術課題の有識者インタビュー ④論文・特許の調査
  • どんな結果が出たら実現性を担保できたと言えるか

使う道具フィージビリティスタディ

04

リスク管理の実現性の検証

  • 評判・競合参入・安全・セキュリティなど、いま直面するリスクと将来の脅威はあるか
  • 確かめ方: ①専門家(法務・研究部門・提携先)による受容可能性の見解 ②回避のための体制・契約 ③転嫁のための体制・保険・契約 ④軽減のためのバックアップ・拡張計画・冗長設計
  • どんな結果が出たらリスク管理を担保できたと言えるか

使う道具検証計画

05

本番とのギャップ

  • 簡易な検証と実際のサービス運用の差はどこか。この検証では確かめきれない点は何か

使う道具検証計画

ゲートで止まる新規事業の型

審査が「計画の出来栄え」を見てしまう

資料が整っているほど通り、事実が少ないほど落ちる審査になると、作る前の検証が飛ばされます。ゲートで見るのは、その段階で集めた事実の量と質です。

どの段階でも同じ基準で判定している

顧客と課題の段階で収支の精度を問うと、まだ答えられない問いで止まります。段階ごとに、答えられるはずの問いだけを問います。

合格の条件を、検証した後に決めている

結果を見てから基準を決めると、どんな結果でも「進める理由」が見つかります。PoC の勝ち筋は、始める前に合意しておきます。

ゲートが「やめる」を決められない

続ける・直す・やめるの3択のうち、やめるが事実上選べないと、ゲートは承認の儀式になります。やめた案件の学びを残す場所を先に用意しておきます。

社内ベンチャー制度・社内起業制度にゲートを組み込む

社内ベンチャー制度や社内起業制度は、「誰の案を、どの基準で、どこまで支援するか」を決める仕組みです。公募で集めた案を、1回の審査で予算化まで決めてしまうと、作る前に確かめるべきことが飛ばされます。

公募 → 顧客と課題の審査(CPF)→ 提供価値の審査(VPF)→ 解決策の審査(PSF)→ PoC の計画審査、のように、段階ごとに小さな予算と期限をつけてゲートを置くと、外れた案を早く・安くやめられ、残った案に資源を寄せられます。

審査員を経営層だけにせず、現場や顧客に近い人を入れること、審査の基準と問いを応募者に事前に公開することも、制度が形骸化しないための条件です。

社内ベンチャーそのものの作り方は、社内ベンチャーとは?作り方・成功のポイントで詳しく扱っています。

出口の選び方:社内で育てる・子会社化・カーブアウト・JV・譲渡

ゲートを抜けた事業を、どの器で育てるかも最初から選択肢に入れておきます。器によって、本体の資産をどこまで使えるかと、意思決定の速さが変わります。

社内で育てる既存事業の資産(顧客・販路・信用)を使い回せるなら、本体の中で事業部として育てるのが速い。
子会社化意思決定の速さや人事・報酬の制度を本体と分けたいとき。資産をどこまで本体から使えるかが設計の中心になる。
カーブアウト事業を切り出し、外部の資本や人材を入れて独立させる。本体の資産と切り離すほど、使えなくなるものも増える。
ジョイントベンチャー(JV)自社だけでは足りない技術・顧客・販路を持つ相手と、出資して共同で事業をつくる。
譲渡自社が持つ理由が薄れた事業を、より伸ばせる相手に渡す。ゲートで「やめる」と決めた事業の、学びと資産の生かし方でもある。

ARCHECO では、受託だけでなくプロフィットシェアやジョイントベンチャーの形でも事業に関わります。契約の形は料金・契約プランにまとめています。

よくある質問

ステージゲート審査とは何ですか?

新規事業を段階に分け、各段階の終わりに「次へ進めるか」を判定する審査です。1回で大きな投資を決めるのではなく、段階ごとに小さな予算と期限をつけ、その段階で集めた事実をもとに、続ける・直して戻る・やめるを決めます。

ステージゲート法のデメリットは?

段階と書類が増え、判定が形式的になりやすいことです。資料の出来栄えで判定したり、どの段階でも同じ基準で問うたりすると、手続きが重いだけになります。段階ごとに答えられる問いだけを問い、判定の材料を事実に限ることで避けられます。

ステージゲートはアジャイルと両立しますか?

両立します。段階の中では短い検証を何度も回し、段階の終わりのゲートで資源配分を判断する、という組み合わせが一般的です。ゲートは開発の進め方ではなく、投資判断の節目を決める仕組みです。

ゲートでは何を評価すればいいですか?

その段階の通過判定基準を満たす事実がそろっているかです。顧客と課題の段階なら課題が実在する事実、提供価値の段階なら価値と競争上の位置、解決策の段階なら実現性と収支、PoC の段階なら事前に合意した勝ち筋に対する結果を見ます。

社内ベンチャーと子会社の違いは何ですか?

社内ベンチャーは本体の中に置かれた新規事業の組織で、子会社は別の法人です。社内ベンチャーは本体の資産を使いやすい一方、意思決定や制度は本体に縛られます。子会社は独立性が高い代わりに、本体の資産を使う手続きが増えます。

このページの問いやテンプレートは自由に使えますか?

使えます。社内の審査や研修で、そのまま、あるいは自社向けに直してお使いください。ゲートの設計や審査会の運営まで手伝ってほしい場合は、ステージゲート伴走としてご相談いただけます。

ステージゲート伴走

自社の新規事業や社内ベンチャー制度に合わせて、段階・通過判定基準・問いを設計し、運用が回るところまで伴走します。

ゲートの設計

段階の切り方、各ゲートの通過判定基準と問い、提出物と判定者を、自社の事業と体制に合わせて設計します。

回答シートとテンプレートの整備

このページの回答シートを自社向けに直し、各工程で使うテンプレートをそろえます。

審査会の運営(オプション)

審査会の進行、判定の記録、「やめる」判断の後の学びの整理までを担います。

メンター役(オプション)

応募者・事業チームに伴走し、各段階の問いに事実で答えられるよう、検証の設計と実行を支援します。

新規事業そのものの立ち上げ(MVP・PoC の開発と市場検証)は新規事業コンサルティング、社内で回せる人を育てる研修は新規事業研修で扱っています。