
ARC channelの新シリーズは、ARCHECOが自分たちのブログ記事を動画で解説する回。今回の題材は、中古車の買取販売です。月の取扱台数は60台ほど、買い取ってから納車までは平均3週間。在庫が寝ると資金が回らず値落ちも起きるため、社長の目標は平均2週間。
担当者に話を聞き、部署ごとに帯を分け、工程を四角で囲んで矢印でつなぐ。全員が「この順番です」と納得する立派な図ができたのに、「どこを直せばいいか」と聞かれると話が止まる——。原因は図の描き方ではなく、仕事を遅くしているものが図に入っていなかったことでした。
業務フローを描く目的を一言で言えるか。現状を共有したいのか改善したいのかで、必要な詳しさが変わります。記事がまず置く目的は「関係者の合意」。部署によって理解が違うので、図を見て「そこは違う」と言ってもらうためのものです。
業務フローは仕事全体が誰の手を通って進むか、ワークフローは申請から承認までの経路、マニュアルは作業のやり方。全体の順番と細かな操作を同じ図に詰めると読めなくなるので、作る前に目的・対象範囲・関係者・表記ルールを決め、粒度は「読み手が判断できる最小の単位」に合わせます。部署をまたぐならスイムレーン図。記号は四角(作業)・ひし形(判断)・矢印(流れ)など最小限にし、抜けを防ぐには管理者でなく実際に作業している人に「うまくいかなかったときはどうしますか」と例外から聞く。叩き台は表計算やスライドで十分です。
ここまでそろえれば関係者が確認できる図になります。けれど題材では、全員が納得した図を前にしても改善案が出ませんでした。整備にどれだけかかるのか、名義変更は書類を待つのか。順番の線だけでは、その答えが読めないのです。
記事では工程ごとの所要時間を実際に測りました。車ごとにいつ次へ渡ったかを記録し、作業していた時間と手前で待った時間を分ける。すると査定や名義変更は分単位、整備は日単位で、作業時間を全部足しても数日にしかならない。買取から納車までの平均3週間との差のほとんどは、図に書かれていない待ちだったのです。
最も長かったのは名義変更に入る手前の待ち。買取の時点で印鑑証明・譲渡証明・委任状のどれかが足りず、事務がお客様に連絡して郵送を待っていた。図では買取から名義変更へ矢印が伸びているだけで、書類不足と届くまでの時間は箱の中に入っていません。
そこで記事は、工程と工程のあいだを主役にした「受け渡しの表」に書き換えます。渡す側・受け取る側・渡すもの・件数、そして一番右の「そのまま進められた率」(%C/A)。受け取る側が差し戻しも問い合わせも追記もせずに使えた割合で、渡す人の自己評価でなく受け取る人に聞いて測ります。この題材では営業から事務への受け渡しが群を抜いて低かった。作業を速くする話と待ちを減らす話を分けて見るこの方法は、バリューストリームマッピング(VSM)と呼ばれます。
確認が終わるまで何でも止めていないか。記事は人が判断する場所と止め方を「停止点の表」に整理します。査定の金額決定はお金が動くので止める、整備要否は費用が発生し、納車前の最終確認は取り消せないので止める。一方で書類の不備チェックは差し戻せて、出品価格はあとで変えられるので非同期でいい。判定基準は「金銭が動く・取り消せない・外部に送信される」。どれにも当たらない確認は、先に進めてあとから追認します。
営業から事務への受け渡しには、買取の場に書類チェックリストを画面に出し、そろうまで次に進めないようにしました。営業の手元の作業は少し増えましたが、事務が書類を待つ時間は目に見えて縮んだ。すると次に最も長く待つ場所は撮影の手前へ移ります。制約を狙って改善するとその場所は制約でなくなり、別の場所へ移る——制約理論の考え方で、改善は一回で終わらないので測り続ける仕組みを先に作るのです。
AIの置き場所も受け渡しの表から考えます。記事が挙げるのは、書類を撮影した画像から不備を自動判定すること。すでにそのまま進められる受け渡しより、欠損が多いところを狙う(実装結果の数字は記事にはなく、導入先の判断として読む)。
現場で始めるなら、受け渡しの表に担当者の役割・渡すもの・月の件数を入れ、そのまま進められた率は受け取る側に聞き、前工程の完了から着手までを日時で測る。停止点の表には、人が判断する場所と同期か非同期か、その理由を書く。図が完成したことを改善の完了にしないこと。遅い場所と情報が落ちる場所を特定できれば、道具は付箋でも表計算でもいい。「壁が寂しい問題にはまだ解がない」と記事は締めていますが、仕事を速くするのは表に残した実測データです。作図の記号やツールの選び方は元記事に詳しく載っています。動画とあわせてどうぞ。
ARC channel
10年間、大企業と新規事業を作ってきた ARCHECO(アルチェコ)が、自分たちのブログ記事を動画で解説しています。
紹介する事例は、記事と同じく公表された事実のみで、内部の事情や個人の責任は推測していません。
解説してほしい記事があれば、コメント欄で教えてください。