
今回は『ブログ記事を動画で解説』シリーズの回。2026年9月、Anthropicは、中国のAI企業が自社の利用者の会話をClaudeへ転送していたと報告しました。この報告を入り口に、仕事で使うAIの会社を、名前と性能のほかに何を確かめて選ぶのかを考えます。答えは3つ。資料の経路、契約、そして今ある機能だけで仕事が成り立つか。最後に、この3つを社内の誰が確かめるかも整理します。
2026年9月10日、AnthropicはAIの悪用レポートを公開しました。Claudeの悪い使われ方をまとめた文書で、その中に中国のAI企業Moonshot AIの事例があります。レポートによると、Moonshot AIは自社の顧客から受けた質問をClaudeに転送し、答えを作らせていました。Anthropicの許可は得ておらず、転送した質問は、ある10日間だけで約30万件。利用者の氏名やメールアドレス、利用者の会社のデータも含まれていたとされています。なお、この報告にMoonshot AI側の説明は入っておらず、Anthropicの報告として受け止める回です。
経路とは、質問が、どの会社を通って答えになって戻るかの道筋。宅配の荷物が配送会社の拠点をいくつか通るのと同じです。契約した会社の名前だけでは、途中で誰が資料を扱うかは分かりません。
確かめ方は紙に書くこと。大事な資料を入れている外部のAIをひとつ選び、自社から契約した会社へ、さらに渡し先へと矢印を引き、行き先が分からなければ疑問符を書く。矢印の先の会社ごとに、会社の名前、資料が学習に使われるか、保存期間、保存する国の4つを書き込みます。書けない所が、契約した会社に聞く場所です。
2025年8月28日、Anthropicは個人向けの利用規約を改定し、入れた会話をAIの学習に使ってよいかを利用者が選ぶ方式にしました。許可すると会話データの保存期間は5年、許可しない場合は30日とされています。この期間をどの日から数えるかはブログ記事では扱っておらず、自分の契約の決まりで確かめます。
一方、法人向けの規約では、顧客が入れた会話や資料をAIの学習に使ってはならないと定めています。ただし社員が自分の個人アカウントを使っている場合は別で、そこに入れた会社の資料には個人向けの決まりが適用されます。画面にClaudeと出ていても、どのアカウントの契約かで扱いが変わるのです。
もうひとつが利用ポリシー。法律、医療、金融、採用など人の人生に直接影響する用途は高リスクとされ、人がAIの答えを確認することと、相手にAIを使っていることを伝えることが求められます。法律相談なら、法律の資格を持つ人が確認します。
ブログ記事の見立ては、仕事で使うClaudeを法人契約のアカウントにそろえ、個人アカウントには会社の資料を入れない運用にすること。確かめるのは、個人向けか法人向けか、学習への利用、保存の条件、自社の用途が高リスクに当たるかの4つです。
きっかけは、Anthropicのトップの発言です。2026年9月12日(アメリカ時間)、CEOのダリオ・アモデイ氏が論考を公開し、AIの能力を高めるペースを落とし、世に出す前の安全の確認に時間をかけるよう提案しました。開発を止めるのではなく、確かめる時間を取るという提案です。
提案は3段階。第1段階はAnthropic自身の安全の確認で、外の評価者がAnthropicの社内に常駐して確かめます。ここでの「外」は働く場所ではなく、作った会社とは別の立場という意味。作った本人ではなく別の人が味見をすれば、見落としに気づきやすいのと同じです。この第1段階は、評価結果を公表し、自社に都合が悪いという理由だけで指摘を削らないことも含め、Anthropicが自社で実行すると約束した部分です。第2、第3段階は民主主義の国のAI企業、世界のAI企業への協力要請です。
新しい機能の延期が決まった話ではありません。ただ、ブログ記事は、安全確認に時間を取れば機能が予定より遅れることもありえると見ています。だから、まだ出ていない機能を仕事の計画の前提にせず、今ある機能で成り立つ設計にして、新しい機能は出てから足します。
見るときは、AIの速さだけでなく、人が答えを確かめる時間まで含めて。新規事業に関わる420名への調査では、企画や試作がAIで速くなったという回答は90.7%、AIで作った物を確かめて使ってよいか判断する作業が追いつかないという回答は33.8%でした(2つの回答が重なる人数は分かりません)。自社でも実際の仕事をひとつ試し、AIの処理と人の確認にかかる時間を合わせて測ります。
最初の問いに戻ります。仕事で使うAIの会社を、名前と性能のほかに何を確かめて選ぶのか。答えは、資料の経路、契約、今ある機能で仕事が成り立つかの3つでした。そして確かめる人は、導入を進める人とは別に決め、都合の悪い指摘も削らず記録に残して対応する。この決まりを導入の前に決めておきます。明日からできるのは、大事な資料を入れている外部のAIをひとつ選び、どの会社を通るかを紙に矢印で書くこと。まず契約した会社に、ほかにどの会社へ渡るか、どの国に保存するかを聞いてみてください。記事には10項目の確認表もあります。リンクは概要欄から。
ARC channel
10年間、大企業と新規事業を作ってきた ARCHECO(アルチェコ)が、自分たちのブログ記事を動画で解説しています。
紹介する事例は、記事と同じく公表された事実のみで、内部の事情や個人の責任は推測していません。
解説してほしい記事があれば、コメント欄で教えてください。