
商品企画書は8項目で構成します。この記事のテンプレートは、そのまま書き写して使える形で置いてあります。
良い商品だから企画が通るわけではありません。市場・競合・ターゲット・価格・収支という客観情報が揃って、初めて決裁が下ります。
ただし、空欄を埋めるだけでは決まりません。「誰の、何を通すのか」を一つの軸にして、数字と実行条件をつなぐ必要があります。
商品企画書の目的と重要性

商品企画書は、商品の魅力を説明する資料です。同時に、会社が人・予算・時間を投じるか決める資料でもあります。
したがって、読み手が知りたいのは「面白いか」だけではありません。「誰に売れるか」「利益が残るか」「実行できるか」までを確認します。
企画担当者にとっての目的は、アイデアの保存ではなく意思決定です。会議後に調査だけが増えるなら、判断材料が足りていません。
実務では、提出前に決裁者と承認段階を書き出します。部門責任者が商品化を決める資料と、経営会議が投資を決める資料では、必要な数字の深さが異なるからです。
企画の中心は「この商品を作りたい」ではなく、「この条件なら会社として進められる」です。この一文を冒頭に置くと、各欄の役割が揃います。
商品企画書と提案書の違いを比較表で確認する
商品企画書と提案書は、相手を動かす点では共通します。一方、決める対象と必要な根拠が異なります。
| 比較項目 | 商品企画書 | 商品提案書 |
|---|---|---|
| 主な読み手 | 社内の決裁者と実行部門 | 顧客や取引先 |
| 通したい判断 | 開発・製造・販売への投資 | 購入・採用・契約 |
| 中心となる情報 | 市場、競合、原価、収支、実行条件 | 相手の課題、便益、導入条件 |
| 数字の置き方 | 自社が負う費用と回収条件を示す | 相手が得る効果と支払条件を示す |
| 読後の行動 | 承認、保留、中止を決める | 発注、商談、比較検討へ進む |
例えば、EC商品の企画書なら初回ロットと在庫リスクを書きます。同じ商品の提案書なら、購入者が得る便益や利用場面を前に出します。
社内の承認文書の呼び方に迷う場合は、稟議書の名称とレビューの考え方も確認できます。名称より、誰が何を承認する文書かを揃えることが先です。
商品企画書に盛り込む8項目のテンプレート

標準的な商品企画書では、目的、市場、商品、販売、実行、収支、判断条件を整理します。次の表は、そのままWordやExcelへ写せるテンプレートです。
各欄は「実装できるか」だけを問いません。「会社として進めるか決められるか」を問います。欄ごとの説明ではなく、判断の連鎖を作ってください。
上の8項目を、記入欄と決裁者の確認事項ごとファイルにしています。XLSX版でダウンロード/PDF版でダウンロード
書く前に集めるもの
書き始める前に、顧客の利用場面と代替行動、競合商品の仕様と売り方、自社の原価・調達・販売上の制約を集めます。資料名だけでなく、取得日と確認者を記録してください。未確認の項目は推測で埋めず、「誰が、いつ、どう確かめるか」を付けてテンプレートへ移します。
要約欄を1行で置く
8項目の前に、「[対象者]の[課題]を、[商品と利用場面]で変え、[判断日]に継続可否を決める」という要約欄を1行置きます。書き終えた後にこの一文を更新し、各欄が同じ対象と判断へつながっているかを確認します。
| 項目 | そのまま使える記入欄 | 決裁者が確認すること |
|---|---|---|
| 1. 企画目的・背景 | [誰の][どんな未充足]を、[商品]で解消し、[事業上の目的]を実現する | なぜ今、自社が取り組むのか |
| 2. ターゲット・課題 | 主対象は[属性・利用状況]。現在は[代替行動]を取り、[不便・損失]が残る | 対象と困りごとが具体的か |
| 3. 市場環境・競合 | 市場の変化は[事実]。競合・代替品は[選択肢]。未充足は[比較で残る点] | 需要と参入余地があるか |
| 4. 商品概要・価値 | [利用場面]で[機能・仕様]を使い、[顧客の変化]を生む | 選ばれる理由が仕様に落ちているか |
| 5. 販売計画 | [販路]で[顧客接点]を作り、[購入までの行動]を検証する | 売り方を実行できるか |
| 6. 実行計画・体制 | [担当]が[期限]までに[試作・調達・販売準備]を進め、[確認指標]で判定する | 担当と順序が明確か |
| 7. 価格・収支・判断条件 | 価格は[考え方]、原価は[変動要因]。[最低販売数]で継続し、[条件]で中止する | 回収の見込みと損失上限が見えるか |
| 8. 既存商品とのカニバリ | 重なるのは[顧客・利用場面・価格帯・販路]。移動を許容するのは[どの顧客]まで | 既存の売上を移すだけで終わらないか |
書く順番は、1から7でなくても構いません。まず「ターゲット・課題」と「商品概要・価値」を往復し、次に競合と販売計画で成立性を確かめます。
最後に収支と判断条件を置くと、希望を数字へ変えられます。数字が合わなければ、価格だけでなく仕様、販路、ロットも戻して直します。
ターゲット
ターゲットは年齢や性別だけでなく、商品を必要とする場面、現在の代替行動、購入を決める人まで書きます。使う人と買う人が違う場合は二行に分けます。「この人は、いつ何と比較して買うか」を答えられなければ、対象をさらに絞ります。
プロモーション計画
販路とは別に、対象者が商品を知り、比較し、購入へ進む接点を置きます。告知手段ごとに担当、開始時期、次の行動を決め、表示回数だけでなく商品ページ閲覧、問い合わせ、試用など購入に近い行動を確認します。
スケジュール
調査、試作、原価確認、販売準備、初回評価の順に並べ、各工程へ担当と完了条件を付けます。発売日だけを置くと判断が最後へ寄るため、試作を見直す日と発注を止められる日をマイルストーンにします。
1枚企画書にまとめる方法
1枚企画書は、全体像の共有に有効です。ただ、情報を削るだけでは判断できません。判断に必要なつながりだけを残します。
上段に「目的・ターゲット・課題」、中央に「商品・競合差・販売」、下段に「体制・収支・判断条件」を配置します。決裁者の視線が、理由から実行条件へ流れます。
例えば、商品画像を中央へ大きく置く場合も、画像だけで価値を語らせません。横に「誰が、どの場面で、何から乗り換えるか」を一文で添えます。
1枚で説明しきれない調査表や見積もりは別紙にします。本文には結論と出典の位置を残し、会議中に根拠へ戻れるようにします。
Word・Excelへ写せる実ファイル相当の表
実務で使える配布物には、項目名だけでなく入力単位が必要です。上の表は、記事内で完結する実ファイル相当のテンプレートとして設計しています。
Wordでは、「項目」「記入内容」「根拠資料」「承認コメント」の4列にします。表の各行へ8項目を貼れば、レビュー履歴を同じページに残せます。
Excelでは、同じ8項目を縦に貼り、「仮説」「根拠」「担当」「期限」「更新日」を列にします。収支だけは別シートに分け、前提を変えた結果を比較します。
コピー後に最初にする作業は、空欄を埋めることではありません。提出日、決裁者、求める判断を文書の先頭へ追記します。資料の用途が途中で変わるのを防げます。
テンプレート配布物を選ぶときに見る点
配布テンプレートは、抜け漏れの防止に有効です。一方で、項目数の多さは決裁に直結しません。判断への近さで選びます。
見る点は、「読み手と承認内容を書けるか」「根拠の出典を残せるか」「前提の更新日を管理できるか」「試作結果を追記できるか」です。
さらに、記入欄の広さも確認します。説明欄ばかり広く、数字や検証結果の欄が狭い様式は、主張だけが長くなりがちです。
選定時には、過去の企画を一件だけ移してみます。転記の途中で同じ内容を何度も書くなら、欄を統合します。判断材料が置けないなら、欄を追加します。
用途別テンプレートの変え方
共通の8項目は、新商品、イベント、セミナーにも使えます。ただし、判断対象に合わせて名詞と数字を変えます。
新商品では、「商品概要」に仕様と利用場面を置きます。「販売計画」には販路、在庫、再発注の条件を書きます。
イベントでは、「商品概要」を体験設計へ置き換えます。「収支」には定員、必要申込数、開催可否を決める期限を置きます。
セミナーでは、「ターゲット・課題」に受講前の状態を置きます。「価値」には受講後にできる行動を記し、申込数だけでなく参加後の変化も確認します。
名称を変えても軸は同じです。「誰の、何を変える企画か」と「どの条件で進めるか」が、全欄を通っているかを確認します。
3C・SWOT・6W2H・4Cの使い分け
フレームワークは、企画書の見栄えを整えるために使うものではありません。空欄の根拠を集め、矛盾を見つけるために使います。
3Cは、顧客、競合、自社の関係を整理します。ターゲットと競合差がつながらないときに向いています。
SWOTは、内部要因と外部要因を分けます。強みを並べた後は、「どの機会に使うか」まで一文にします。
6W2Hは、誰が、何を、なぜ、いつ、どこで、誰に、どうやって、いくらで進めるかを確かめます。実行計画の担当や期限が曖昧なときに有効です。
4Cは、顧客価値、顧客負担、利便性、対話から販売設計を見ます。作り手の仕様説明が中心になったとき、購入者側へ視点を戻せます。
実務では、四つすべてを掲載する必要はありません。使って判明した事実を、8項目の該当欄へ戻します。企画書には分析過程より判断材料を残します。
Word・Excel・PowerPointの使い分け
ツールは、作成者の好みではなく、判断と更新の仕方で選びます。どの形式でも8項目の軸は変わりません。
Wordは、背景や条件を文章で合意する場合に向きます。変更履歴やコメントを使い、表現の差分を確認できます。
Excelは、原価、販売数、粗利などの前提を動かす場合に向きます。セルの入力値と計算結果を分けると、数字の根拠が追えます。
PowerPointは、会議で順序立てて説明する場合に向きます。1ページに一つの判断を置き、詳細データは別紙へつなぎます。
例えば、本文はWord、収支はExcel、会議説明はPowerPointという分担も可能です。その場合、商品名、版番号、更新日を三つのファイルで揃えます。
通る数字の作り方|収支・価格設定・原価

収支欄には、価格と原価を書くのが一般的です。しかし、実額を一つ置くだけでは、前提が変わった時の影響を判断できません。
まず、原価を材料、加工、梱包、配送、決済、返品対応に分けます。固定費と販売数に応じて動く費用を分けると、どの条件が利益を動かすか見えます。
次に、価格を原価への上乗せだけで決めません。顧客が比較する代替品、得られる価値、販路で必要な費用を並べ、成立する幅を置きます。
続いて、粗利は「販売価格から、販売に連動する原価を引いた額」として同じ定義を使います。部門ごとに含める費用が違う場合は、収支表の上に定義を書きます。
初回ロットは、製造側の最小数量だけで決めません。検証したい需要、保管できる在庫、売り切る期間、再発注までの時間から置きます。
最低販売数は、回収したい費用を一件あたりの粗利で割る考え方から始めます。ただし、一つの答えに固定せず、価格、原価、返品、販売速度の前提を変えて確認します。
例えば、収納箱の梱包寸法が変われば、材料費だけでなく配送条件も動きます。返品が増えれば、返送と再梱包の負担も増えます。
最後に、継続、修正、中止の条件を先に決めます。「販売速度が基準に届かなければ訴求を直す」「粗利が成立しなければ仕様とロットを戻す」と行動まで書きます。
数字の目的は、企画を正しく見せることではありません。何が変われば結論も変わるかを、決裁者と共有することです。
市場環境・競合欄の書き方
市場環境と競合は、客観情報を揃える中心の欄です。市場の大きさだけでなく、顧客の行動がどう変わっているかを記します。
市場欄には、対象の定義、確認した時点、情報源を添えます。広い市場全体の数字と、実際に販売できる対象を混ぜません。
競合欄では、直接競合、別カテゴリの代替品、何もしない選択を比べます。比較軸は、価格、使う場面、購入経路、切り替え負担から選びます。
例えば、折りたたみ収納箱の競合は同型商品だけではありません。布製バッグ、段ボール、収納物を減らす行動も比較対象になります。
最後に、「競合より優れている」で終えません。どのターゲットが、どの場面で、何を理由に乗り換えるかを一文にします。その一文が商品仕様と販売訴求へつながります。
決裁者が最初に見る3つの欄

商品企画書の項目を揃えることは重要です。さらに、決裁者は「会社が負う不確実性」を短時間で判断します。
最初に見られるのは、投資回収の見込み、やめる条件、既存商品とのカニバリです。この三つがなければ、承認は期待への賛否になってしまいます。
投資回収の見込み
投資回収の見込みには、強気な売上予測だけを置きません。初回ロット、販売速度、一件あたりの粗利、再発注の条件がどうつながるかを示します。
決裁者が知りたいのは「当たる数字」より「前提が崩れた時に気づける数字」です。原価や返品が動いた場合に、どの判断を変えるかも添えます。
例えば、EC商品の広告反応が想定と異なる場合、価格をすぐ下げるとは限りません。商品ページ、対象顧客、仕様の順に確認する条件を決めておきます。
やめる条件
中止条件は、企画への自信がない印ではありません。損失の上限を決め、試せる範囲を広げるための欄です。
期限、確認指標、次の行動を一組で書きます。「反応が悪ければ中止」ではなく、「試作販売後に販売速度を確認し、基準未達なら訴求を修正し、再確認後も届かなければ中止」とします。
条件は会議前に置きます。結果が出た後に基準を変えると、企画への期待だけで継続しやすくなるからです。
既存商品とのカニバリ
新商品が既存商品の売上を移す可能性も、事前に扱います。顧客、利用場面、価格帯、販路を既存商品と並べて、重なる部分を確認します。
カニバリがあるだけで企画を止める必要はありません。既存商品の代替によって粗利、継続購入、顧客層がどう変わるかを見ます。
例えば、収納用品の既存商品から需要が移る場合でも、狭い住まいの新しい顧客へ届くなら意味があります。どの顧客の移動を許容するかまで決めます。
企画書の前に小さな試作を置く進め方は、MVP・PoCを用いた新規事業支援で詳しく案内しています。三つの欄を推測だけで埋めず、行動の事実で更新できます。
商品企画書を決裁につなげる確認手順

確認は、次の順で行います。
1. 「誰の、何を通すのか」を一文で読む
2. 課題→商品仕様→原価→価格→販売計画が、一本でつながるか追う
3. 根拠のない形容詞(「便利」「高品質」「需要がある」)を探して置き換える
4. 担当・期限・継続条件・中止条件を確認する
5. 説明せずに資料だけ渡し、読み取れるかを試す
完成後は、8項目が埋まったかだけでなく、欄同士がつながっているかを確認します。良い商品、市場、競合、ターゲット、価格、収支を別々に説明しても、決裁材料にはなりません。
最初に、「誰の、何を通すのか」を一文で読みます。次に、ターゲットの課題が商品仕様へ、商品仕様が原価へ、原価が価格と販売計画へつながるかを追います。
続いて、根拠のない形容詞を探します。「便利」「高品質」「需要がある」と書いた箇所は、試作で見た行動、比較条件、確認方法へ置き換えます。
さらに、担当、期限、継続条件、中止条件を確認します。承認後の最初の行動を読み手が言えないなら、実行計画を一段具体にします。
最後に、説明せず資料だけを渡します。決裁者に近い人が、目的、回収、リスク、次の行動を読み取れるか確かめます。伝わらない箇所だけを直すと、文章を増やしすぎません。
テンプレートは、企画の完成形ではなく判断の土台です。動く試作を添えれば、推計の議論を顧客の行動へ移せます。
タイトルとサブタイトルの付け方
タイトルでは、企画書の種類ではなく、商品または企画が誰の何を変えるものかを名乗ります。サブタイトルには対象、利用場面、判断してほしい内容のうち、タイトルで足りない情報を補います。ファイル名にも同じ企画名と版番号を使います。
定量と定性を分けて書く
販売数、利用率、所要時間などの定量情報と、顧客の発言、観察した行動、営業の所感などの定性情報は欄を分けます。類似事例からの推定は実績と混ぜず、「参照した事例」「自企画との違い」「推定に使った条件」を添え、検証前の仮説として扱います。
テンプレートの利用規約と二次配布
外部のテンプレートを使うときは、商用利用、改変、社内共有、二次配布、クレジット表記の条件を利用規約で確認します。テンプレートそのものを取引先へ渡す場合や、自社書式として再配布する場合は、単なる記入利用と条件が異ならないかを確認し、確認日と参照先を記録します。
AIで企画の案を出すときの使いどころ
AIは、顧客課題の候補、代替案、確認質問を広げる用途に使えます。ただし、出力を市場性、顧客需要、収支の判断根拠にはしません。採用候補には、確認する一次情報、担当者、期限を付け、事実が取れたものだけを企画書へ移します。
バリューチェーンで自社の位置を確かめる
調達、開発、製造、物流、販売、利用後の支援までの流れを並べ、自社が価値を加える工程と外部へ依存する工程を確認します。実務では各工程に担当、費用が動く条件、停止時の影響を一行で置き、企画書の体制と原価へ戻します。
A3横1枚に収める形
A3横1枚は、要約だけを載せる一般的な1枚企画書と異なり、左から課題、顧客、商品、販売、収支、判断条件までを一望させる形に向きます。会議で欄同士のつながりを確認しやすい一方、詳細な根拠は別紙にし、各欄から参照先を示します。
参考になる企画書をどこで見るか
公表されている事業計画や商品説明は、J-Net21の事業計画書の解説、自治体や公的機関が公開する様式・記入例などで確認できます。評価や順位は付けず、タイトル、項目、根拠の示し方など参考にする箇所を決めて見ます。
分類欄と備考欄を置く
分類欄には商品区分、企画段階、担当部門など検索や回覧に必要な属性を置きます。備考欄には条件付き採用の条件、未決事項、添付資料、例外対応を記します。本文の代わりにせず、判断後に誰が何を確認するかまで書きます。
顧客生涯価値(LTV)と獲得単価(CAC)
顧客生涯価値(LTV)は、一人または一社の顧客との取引期間を通じて得る価値です。顧客獲得単価(CAC)は、新規顧客を獲得するために要した費用を獲得数で割った指標です。
実額を置かなくても、LTVに含める期間と粗利の範囲、CACに含める施策費と人件費の範囲を定義できます。両者を同じ対象期間と顧客単位で比較します。
受注理由と失注理由を営業から取る
営業から、受注理由だけでなく失注理由、比較された代替品、決定に関わった人を取ります。「価格が理由」のような要約で終えず、いつ、誰が、何と比べて判断したかを確認し、商品仕様、訴求、販売条件のどこへ反映するかを決めます。
どこまで自社でやり、どこから外に出すか
企画、設計、製造、販売、問い合わせ対応などの工程ごとに、自社で担う範囲と外部へ出す範囲を決めます。判断軸は、競争力の源泉、必要な専門性、品質管理、繁閑への対応です。外部へ出す工程にも、成果物、確認者、受入条件を置きます。
著作権で確認すること
キャラクター、写真、イラスト、書体、文章を商品や販促物に使う場合は、権利者、利用範囲、期間、媒体、改変、再許諾の可否を確認します。条文名を断定せず、契約や利用規約と実際の使い方が一致するかを担当部門や専門家へ確認します。
熱意をどこに置くか
熱意は「必ず成功させる」といった形容詞の強さでは測れません。どの事実が得られなければやめるか、どの条件なら修正するかを企画者自身が書いたかで示します。中止条件を先に置けば、期待だけで続けず、必要な検証へ資源を集中できます。
商品企画書の記入例|ECで販売する折りたたみ収納箱

記入例は、欄ごとに別の題材を置くとつながりが見えません。ここでは「狭い住まい向けの折りたたみ収納箱」を、8項目すべてで通します。
数字の実額は置きません。代わりに、どの事実と条件が数字を動かすかを示します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 1. 企画目的・背景 | 収納場所が限られるEC利用者に、使わない時は薄く畳める収納箱を届ける。大型収納用品の保管負担を減らし、新しい物販カテゴリーを検証する |
| 2. ターゲット・課題 | 賃貸の限られた収納を使う人。季節用品を入れる箱自体が場所を取り、必要な時だけ出せる選択肢を求めている |
| 3. 市場環境・競合 | 固定型の収納箱、布製バッグ、段ボールを代替品とする。耐久性、畳んだ時の薄さ、室内に置ける外観で比較する |
| 4. 商品概要・価値 | 工具なしで組み立てられ、未使用時は薄く畳める。取っ手と積み重ね構造を備え、出し入れと保管を一つの商品で扱う |
| 5. 販売計画 | 自社ECの商品ページで、使用時と収納時の寸法差を画像で示す。購入前の懸念を確認し、訴求と仕様へ戻す |
| 6. 実行計画・体制 | 商品担当が試作、調達、撮影、販売準備の責任者を定める。試作品で組立時間、耐荷重、収納時の扱いやすさを確認する |
| 7. 価格・収支・判断条件 | 材料、加工、梱包、配送、返品の前提から原価を置く。初回ロットの販売速度と粗利を見て再発注を決め、基準未達なら仕様か販路を見直す |
| 8. 既存商品とのカニバリ | 既存の固定型収納箱と顧客・価格帯が重なる。畳めない不満で離れていた層への移動は許容し、既存の主力サイズからの移動は月次で監視する |
この例では、「狭い住まい」という課題が、折りたたみ仕様、EC上の見せ方、梱包と配送の原価までつながっています。
また、競合は会社名の一覧ではありません。顧客が今使っている段ボールも代替品です。比較対象を顧客の行動から置くと、選ばれる条件が具体になります。
記入後は、各行の主語を確認します。ターゲットが途中で変わる、価値と販売訴求が異なる、仕様が原価へ反映されない場合は、企画の軸が切れています。

テンプレート活用の弊害と独自性を消さない答え

テンプレートは、必要な情報の漏れを防ぎ、関係者の会話を揃えます。一方、同じ欄を同じ順番で埋めるほど、企画固有の発見が説明文に埋もれます。
「テンプレどおりに書くと独自性が消える」という疑問への答えは、欄を増やすことではありません。推計の精度を上げることでもありません。
動く試作を添え、試作が示した事実で欄を短くします。触った人の行動、購入前の質問、使われなかった機能は、形容詞より強い判断材料になります。
例えば、折りたたみ収納箱なら、魅力を長く説明する代わりに試作品を見せます。畳む操作で止まる箇所、収納後の置き場、配送箱の大きさを確認できます。
ARCHECOは10年間、大企業と組んで新規事業を作ってきました。精緻な市場規模の推計が並んだ企画書が、会議で決まらない光景を繰り返し見てきました。
実装は3日で動くのに、導入の決裁まで18か月かかった経験もあります(決裁が動かなかった理由の記録)。情報量と意思決定の速さは、必ずしも比例しません。
自社の事業では、受注が0件から動かない時期がありました。原因は機能ではなく、「刷った印刷物が現場に置かれていない」「そもそも置く場所が自社の権限では決まらない」ことでした。A4チラシとA3プラカードを作って現場へ持ち込んだ後、ある1日は声かけ経由21件に対して掲示物経由46件です。動く試作と、それを置く場所が、企画書の代わりに意思決定を動かしました。
したがって、独自性は特別な言葉で作りません。「この試作で何が起きたか」を8項目へ反映すると、その企画だけの根拠が残ります。
社内運用|社外秘表示・管理番号・捺印欄
商品企画書は、提出後も更新されます。社外秘表示、管理番号、版番号、更新日、作成者、承認者を決めると、古い前提で判断する事故を防げます。
管理番号の形式だけでは運用できません。企画管理の担当者が受付時に番号を振り、作成部門、関連部門、決裁者の順で確認・捺印する、と一行で定めます。
例えば、価格前提を更新した場合は、収支表だけ差し替えません。本文の版番号と更新日も変え、変更理由を履歴へ残します。
社外秘表示は、表紙だけでなく持ち出し範囲と共有先を伴って機能します。試作先や製造先へ渡す版は、必要な情報だけを抽出します。
商品企画書の共有・管理ツール
共有ツールは、最新版を一つに保つのに有効です。ここで、置き場所だけ決めても履歴は残りません。誰が何を変えたかも記録します。
必要な機能は、閲覧権限、変更履歴、コメント、承認状態、検索です。収支表と本文を分ける場合は、相互のリンクと同じ版番号も必要です。
実務では、「下書き」「レビュー中」「承認済み」「中止」を状態として持たせます。承認済みの資料を上書きせず、次の変更は新しい版で始めます。
会議後には、結論、未決事項、担当、期限を企画書の冒頭へ戻します。チャットだけに判断を残さないことで、後から参加する人も経緯を追えます。
ARCの事例:商品企画を検証可能な計画へ変える
ARCHECOの商品・新規事業支援では、企画書の空欄を推測で埋めず、「誰が、何を、いつまでに確かめるか」へ変えます。特に価格、初回提供範囲、中止条件は、企画の魅力を説明する欄ではなく、検証結果から次の判断を行う欄として設計します。
資料作成と試作を分断せず、最大の不確実性を確かめる小さな実験へつなぐ方法は、新規事業・MVP・PoC支援で紹介しています。
この先:生成AIが商品企画書を判断のインターフェースにする
生成AIは、調査メモ、試作への反応、収支表から、商品企画書の各欄へ情報を再配置できるようにします。その結果、企画書は文章を作るためのテンプレートから、根拠と判断条件を関係者が確認するインターフェースへ移ります。説明文の生成が速くなるほど、未検証の推測まで完成した事実のように見える危険もあります。各欄を出典、検証状態、次の判断と結び、AIが整えた文章より根拠の更新を優先する設計が必要です。
一緒に覚えたい概念
- 商品提案書:相手に商品の採用や購入を促すための提案文書。
- LTV:顧客との取引期間を通じて得る価値。
- CAC:新規顧客を一人または一社獲得するために要した費用。
- カニバリゼーション:新商品が既存商品の需要を奪う現象。
よくある質問
商品企画書とは何ですか?
商品の魅力を説明する資料であると同時に、会社が人・予算・時間を投じるか決める資料です。読み手が知りたいのは面白いかだけでなく、誰に売れるか、利益が残るか、実行できるかまでです。中心は「この商品を作りたい」ではなく「この条件なら会社として進められる」という一文です。
商品企画書にはどんな項目を書きますか?
企画目的・背景、ターゲット・課題、市場環境・競合、商品概要・価値、販売計画、実行計画・体制、価格・収支・判断条件の8項目です。書く順番は1から7でなくても構いません。まずターゲットと商品価値を往復し、競合と販売計画で成立性を確かめ、最後に収支と判断条件で希望を数字へ変えます。
商品企画書と商品提案書の違いは何ですか?
商品企画書は社内の決裁者と実行部門に向け、開発・製造・販売への投資を通す文書です。商品提案書は顧客や取引先に向け、購入・採用・契約を得る文書です。企画書は自社が負う費用と回収条件を示し、提案書は相手が得る効果と支払条件を示します。
商品企画書を1枚にまとめるにはどうしますか?
上段に目的・ターゲット・課題、中央に商品・競合差・販売、下段に体制・収支・判断条件を配置します。決裁者の視線が、理由から実行条件へ流れます。1枚に収めるために根拠を削るのではなく、調査表や見積もりは別紙にし、本文には結論と出典の位置を残します。
商品企画書はWordとExcelのどちらで作るべきですか?
判断と更新の仕方で選びます。Wordは背景や条件を文章で合意する場合、Excelは原価や販売数など前提を動かす場合、PowerPointは会議で順序立てて説明する場合に向きます。本文はWord、収支はExcel、説明はPowerPointという分担も可能で、その場合は商品名、版番号、更新日を揃えます。
決裁者が最初に見る欄はどこですか?
投資回収の見込み、やめる条件、既存商品とのカニバリの3つです。決裁者は「会社が負う不確実性」を短時間で判断するためです。この3つがなければ、承認は期待への賛否になってしまいます。推測だけで埋めず、行動の事実で更新していきます。
原価と粗利はどう置けばいいですか?
原価は材料、加工、梱包、配送、決済、返品対応に分け、固定費と販売数に応じて動く費用を分けます。粗利は「販売価格から、販売に連動する原価を引いた額」として同じ定義を使い、部門で含める費用が違う場合は収支表の上に定義を書きます。実額を一つ置くだけでは、前提が変わった時の影響を判断できません。
初回ロットはどう決めますか?
製造側の最小数量だけで決めません。検証したい需要、保管できる在庫、売り切る期間、再発注までの時間から置きます。最低販売数は、回収したい費用を一件あたりの粗利で割る考え方から始めますが、一つの答えに固定せず、価格、原価、返品、販売速度の前提を変えて確認します。
中止条件は企画書に書くべきですか?
書きます。中止条件は自信がない印ではなく、損失の上限を決めて試せる範囲を広げるための欄です。期限、確認指標、次の行動を一組で書きます。「反応が悪ければ中止」ではなく、販売速度を確認し、基準未達なら訴求を修正し、再確認後も届かなければ中止、という形にします。条件は会議前に置きます。
テンプレート通りに書くと企画の独自性が消えませんか?
答えは欄を増やすことでも、推計の精度を上げることでもありません。動く試作を添え、試作が示した事実で欄を短くします。触った人の行動、購入前の質問、使われなかった機能は、形容詞より強い判断材料になります。ARCHECOでは、受注0件の原因が機能ではなく「刷った印刷物が現場に置かれていない」ことだった経験があります。
商品企画書の記入例はありますか?
本記事では「狭い住まい向けの折りたたみ収納箱」を8項目すべてで通した記入例を載せています。実額は置かず、どの事実と条件が数字を動かすかを示す形です。記入後は各行の主語を確認し、ターゲットが途中で変わる、価値と販売訴求が異なる、仕様が原価へ反映されない場合は軸が切れていると判断します。
ARCHECOは、試作を添えるところから支援します。ARCHECOへのご相談から、商品企画の現在地をお聞かせください。
