事業開発に向いている人|8つの特徴・必要スキルと、経験を積める場所 の全体像をまとめた図解

事業開発に向いている人|8つの特徴・必要スキルと、経験を積める場所

前後編の前編です。後編では、この話をAIの側から裏返します。


事業開発に向いている人とは — 特徴・スキル・見極め方

本題に入る前に、事業開発(新規事業開発)に向いている人とは何か、一般に語られている整理を先に置いておきます。

事業開発とは、どんな仕事か

事業開発とは、まだ売り先も売り方も決まっていないものを、事業として成立するところまで持っていく仕事です。顧客を探し、価値を確かめ、収益の形を決め、社内の合意を取り、実際に売れる状態にします。

既存事業の運営と、必要な力が違います。既存事業は決まった仕組みを回す仕事ですが、事業開発は仕組みそのものを作る仕事です。成果の出方も、評価のされ方も変わります。

既存事業との違い(求められることの差)

前提主な仕事評価のされ方
既存事業顧客も売り方も分かっている改善と効率化計画との差で測られる
事業開発顧客がいるかどうかが分かっていない仮説を立てて確かめる何が分かったかで測られる(べき)

この差が、適性の話に直結します。決まっていない状態が続くこと自体を負担に感じるかどうかが、向き不向きのいちばん大きな分かれ目になります。

向いている人の特徴1|決まっていない状態に耐えられる

事業開発では、正解が示されないまま判断を続けます。指示が降りてこないことを、不安ではなく余白として扱えるかが問われます。

「耐えられる」だけでは足りません。曖昧なままでは進まないので、自分で仮の答えを置いて、動かしてみるところまでが必要です。

特徴2|自分で問いを立てられる

与えられた課題を解くのではなく、何が本当の課題なのかを自分で決める仕事です。「何をやればいいですか」と聞く回数が多い人は、この工程で止まります。

問いを立てる力は、知識より観察から出ます。現場を見た回数と、当事者に会った回数が、そのまま問いの精度になります。

特徴3|仮説を立てて、確かめるのを繰り返せる

思いついたことを検証できる形に落とし、外れたら仮説のほうを捨てられることが要ります。

自分の案に愛着が湧きすぎる人は、ここでつまずきます。外れた結果が出たときに、測り方のほうを疑い始めていないかを自分で見てください。

特徴4|顧客の視点と事業の視点を行き来できる

顧客の困りごとだけを見ていると、事業として成立しません。数字だけを見ていると、誰も欲しがらないものができます。

片方だけが得意な人は多く、両方を行き来できる人は少ない。ここが、事業開発の人材が不足しやすい理由の1つです。

特徴5|社内を巻き込み、調整できる

社内の新規事業では、既存部門の協力なしに進む案件はほとんどありません。顧客、販路、信用、設備。使えるものは、たいてい他部署が持っています。

調整力は「根回しの上手さ」ではありません。相手の評価にとって、この協力が何になるのかを説明できるかです。

特徴6|手を動かすのが速い

考えている時間より、確かめている時間のほうが長い仕事です。資料を作り込む前に、聞きに行ける人が向いています。

速さは、完成度を下げることではありません。いま何を確かめたいのかが決まっていると、作るものが自然と小さくなり、結果として速くなります。

特徴7|数字で見る癖と、コストの意識がある

売上、原価、単価、継続率。「良さそう」を数えられる形に置き換えられるかが問われます。

会計の知識が必要という意味ではありません。使っている時間と費用が、いま何に変わっているのかを意識できていれば足ります。

特徴8|やり抜く力と、当事者意識がある

事業開発は、成果が出るまでの期間が長くなります。途中で担当が変わると、蓄積がほとんど引き継がれません。

当事者意識は、責任感の強さとは別物です。誰も担当が決まっていない作業を、自分で拾えるかのほうが実務に効きます。

向いていないとされる人の特徴

  • 完璧主義で、出せる状態になるまで見せない — 確かめる回数が減り、外れが遅く分かる
  • できない理由を先に並べる — 制約は前提であって、結論ではない
  • 他責になりやすい — 止まった原因を自分の側で探せない
  • 前例と既存のルールに強く依存する — 前例が無い領域で動けない
  • 短期の成果だけを求める — 学びの蓄積を成果として扱えない
  • 1人で完結させたがる — 巻き込みが要る場面で止まる
  • 考えるが、手が動かない — 検証まで到達しない

ただし、これらは性格ではなく状況で決まる面があります。失敗が減点になる評価制度の下では、誰でも完璧主義になり、できない理由を探すようになります。人を選ぶ前に、制度を見てください。

経験が浅い人には向かないのか

立ち上げの経験者にしか任せられない、という話は実務ではよく出ます。ただし経験者は市場に少なく、待っていても採用できません。

経験より、確かめ方の癖のほうが移植しやすいのが実際のところです。若手でも、顧客に会う回数を積める場所に置けば伸びます。問題は本人の年次ではなく、その場所があるかどうかです。

事業開発に必要な5つのスキル

スキル中身無いと何が起きるか
リサーチ・ヒアリング力顧客の課題を特定する。話を聞いて事実を抜く想像で課題を決めてしまう
ビジネスモデリング力収益の構造を設計する良いものだが儲からない形になる
検証の設計力(MVP企画)最小の範囲で確かめる作り込んでから外れが分かる
データを読む力数字で判断し、次を決める「手応え」で判断することになる
推進・管理の力関係者を動かし、止めない検討だけが続き、案件が宙に浮く

5つを1人で満たす必要はありません。むしろ1人で全部を担う体制(1人エース)は、その人が抜けた瞬間に止まります。

自分が向いているかを確かめる方法

  • 小さく試す — 社内の小さな案件で、決める側に回ってみる
  • 顧客に会う回数を増やす — 話を聞いて、事実を書き出せるか
  • 外れたときの自分を見る仮説を捨てられるか、測り方を疑い始めるか
  • チェックリストや資質の診断を使う — 傾向をつかむ補助として

診断より、実際に1件やってみるほうが早く分かります。向き不向きは、決まっていない状態に置かれたときの自分の反応で見えます。

企業側の見極め方

採用や社内選抜で見るときの観点です。

  • 既存事業の評価はあてにならない — 決まった仕組みを回す評価と、作る力は別
  • 参考になる実績 — 前例の無いことを自分で決めて動かした経験
  • 参考になりにくい実績 — 大きな組織で、決まった役割を全うした成果
  • 質問で見る — 「うまくいかなかったとき、次に何をしましたか」
  • 小さな案件で試す — 選ぶ前に、決める場面を1度渡してみる

4つ目の質問がいちばん効きます。成功体験は誰でも語れますが、外れた後の動き方には、その人の確かめ方の癖が出ます。

チームの組み方 — 1人に背負わせない

立ち上げの初期に要る役割は、おおむね3つです。

役割担うこと
事業責任者決める。社内の合意を取り、資源を引き出す
プロダクト側何を作るかを決め、検証を回す
顧客開拓側売り先を見つけ、実際に売ってみる

人数を揃えられないなら、兼務の組み合わせを決めてください。決める人と、売ってみる人が分かれていない体制は、判断が自分の努力に引きずられやすくなります。

向いている人が社内にいない場合

  • 育てる — 決める場面を段階的に渡す。相談できる相手を付ける
  • 外から補う — 副業・フリーランスの活用。役割を限定して頼む
  • 伴走してもらう — 進め方ごと外部と組み、社内に残す前提で回す

どの手段でも、社内に受け取る人を必ず置いてください。外部だけで進めた案件は、成果は出ても、次の案件に効く知見が社内に残りません。

事業開発の経験は、どこで積めるのか

ここまでの特徴とスキルは、研修や書籍では身につきません。決める場面に、どれだけの回数、どれだけの責任範囲で立ったか。それが全部です。

となると、次の問いは「その回数を積める場所は、どこにあるのか」になります。会社の規模でも、知名度でも、事業の将来性でもない条件で選ぶことになります。

ここから先は、その場所の選び方の話です。就職や転職で会社を見るとき、求人票には書かれていない条件を1つ挙げ、それが本当に効くのかを、実際の現場の記録で確かめます。

「いい会社」の探し方を、いったん裏返す

就職先の選び方は、たいてい「その会社が何を持っているか」で語られる。ブランド、待遇、成長率、事業の将来性。どれも間違いではない。ただしこれは会社側の属性の話であって、そこで自分が何を反復できるかの話ではない。

働いて手に入るものは、給料と肩書だけではない。どういう判断を、どれくらいの頻度で、どれくらいの責任範囲で経験するか。この反復回数が、5年後に残る差になる。

だから問いを裏返す。いま市場に対して、供給がいちばん少ない経験は何か。

ひとつの仮説として整理してみたい。創業者の息子や娘が、コンサルティングファームやMBAを経て戻ってきて、いま新規事業をやっている会社。いわゆるアトツギ企業の、事業開発ポジションである。

条件を分解するとこうなる。

  • 後継者がいる。つまり資本と決裁が同じ場所にある
  • その人が外で訓練を受けている。つまり言語が通じる。フレームワークで会話が成立する
  • いま新規事業をやっている。つまり守りではなく、作る局面にいる
  • そして本業がすでにある。つまり制約が具体的にある

最後の一点が、この仮説の中心である。


問いの形が、そもそも違う

ここでの問いは「何が良いアイデアか」ではない。

「この工場、この顧客名簿、この職人、この与信で何ができるか」である。

制約が先にあって、そこから設計する。使える設備が決まっている。抱えている職人の技能が決まっている。30年つき合いのある取引先がいて、銀行との関係があって、社内には「昔あれで失敗した」という記憶がある。その全部を与件として受け取ったうえで、では何が作れるかを考える。

これはゼロイチとは別の筋肉である。ゼロイチは白紙に線を引く。アトツギの新規事業は、すでに引かれている線を読んでから引く。前者は発想の広さが効き、後者は与件の読解と、その中での組み替えが効く。

そしてこの後者の筋肉は、市場に供給が少ない。スタートアップの経験談は大量に流通しているが、「既存資産を与件として事業を設計した」話は、そもそも表に出にくいし、体系化もされていない。

ゼロイチ型の問いと制約起点型の問いを左右で比較した図。左は白紙から発想する型、右は既存資産を与件として組み替える型。

実際、その一時間はどう進むのか

抽象論だけだと、この「制約から設計する」がどういう作業か伝わりにくい。手元にある実例を出す。

私がいま関わっている小さなチームがある。訪日客向けに、旅行前に日本の商品を注文しておいて、滞在先で受け取れるようにするサービス。学生インターンが実装とマーケティングを持ち、私が企画側で入っている。アトツギ企業ではないが、「与えられた制約の中で、期限までに作る」という構造は同じである。リリースまで実質2週間、人員は数名、使えるものは既にあるものだけ。

先日の定例、60分で何が通過したかを並べてみる。

Tさん(実装担当)の報告から始まった。 システムはテスト環境で動いている。本番へ出すには、利用規約の準備と、決済のサンドボックス環境から本番環境への移行が要る。

Yさん(企画・マーケティング担当)が、商品画像をクリックしても表示されない不具合を挙げた。 Tさんが修正を引き取る。E2Eテストが未実施であることも確認され、これも実施することになった。

ここで、後から効いてくる情報が共有される。デプロイした後でも、画面の見た目は変えられる。しかし決済やユーザーデータに関わるデータベースの構造は、変えるのが難しい。 つまり、この会議で決めることの一部は、あとで戻せない。

利用規約は、AIを使って作り、軽微なチェックで進めることになった。 規約はあくまでトラブルが起きたときの「盾」であり、現時点で損害賠償リスクが高いわけではない、という判断である。

配送トラブルの手順も、その場で決まった。 ホテルで受け取りを拒否されたら、あるいは受取人が不在だったら、どうするか。まずメールで連絡する。次に受け取り場所を変更する(コンビニなど)。それでも駄目なら、最終手段として返金する。決済システム上、返金は可能である。この一連の流れをマニュアルにする、というところまで決まった。

マーケティングは、SNS広告を中心に2週間走らせる。 ここでは「仮説を立ててから回す」ことが強調された。ランディングページは当初MVPに含まれていたが、時間の制約で後回しになっていた。マーケティング担当であるYさんが作る、と役割が確定した。

管理画面の仕様も確認された。 注文の一覧、各注文の顧客情報・配送先・滞在期間、ステータスの手動更新、そしてホテルに配送できなかった理由を記入する欄。Yさんから「住所入力欄に日本国内のみと注意書きを入れたい」という要望が出て、Tさんが引き取った。

言語の話も出た。 中国語は簡体字ではなく繁体字で実装されている。想定している利用者が台湾の方だったので、現状はこれで問題ない、という整理になった。

そして最後に、このサービスが提供している価値は「安心感」だという認識が共有された。買えるものを買えた、という心理的な安全性。それが中身である。


この60分に、何が詰まっていたか

並べ直すと、たった1時間で次の関門を全部通過している。

  1. 動くか — テスト環境での動作、不具合、テスト未実施
  2. 守れるか — 利用規約、損害賠償リスクの見立て
  3. 売れるか — 広告、LP、担当の確定
  4. 畳めるか — 受け取り拒否・不在時の手順、最終手段としての返金

しかもそれぞれが、抽象的な議論ではなく、具体物に紐づいている。「ホテルで受け取りを拒否されたら」という文は、ホテルという物理的な場所と、そこにいる人間の判断と、荷物という物体がなければ出てこない。「決済のデータベースは後から変えにくい」も、実装が存在しなければ出てこない。

これが、制約から設計するという作業の実物である。理屈が先にあるのではなく、工場や倉庫やホテルのフロントが先にあって、そこから逆算して理屈を作る。

動くか・守れるか・売れるか・畳めるか、という四つの関門を左から右へ並べたフロー図。

積める経験のうち、特に代替が効かない3つ

こういう場所で積める経験のうち、他で代替しにくいものを3つ挙げる。

① 資本を持つ人間の意思決定を、至近距離で観察できる

サラリーマン経営者の判断とは、質が違う。自分の金で、20年の時間軸で、逃げ場なしに決める現場である。何を捨てるか、どこで待つか、誰に頭を下げるか。この判断がどう組み立てられるかは、資料を読んでも身につかない。徒弟制的にしか学べない領域がある。

② 撤退の作法

これは特に希少である。スタートアップは失敗すると解散するので、畳み方を学ぶ機会がない。人をどう再配置するか、取引先にどう説明するか、どこで損切りの線を引くか。誰も教えてくれないし、成功譚としても流通しない。

先の会議で「最終手段として返金する」と決めていたのは、規模は小さいが同じ性質の話である。うまくいかなかったときにどう終わらせるかを、始める前に決めている。 撤退を設計できる人材は市場で異常に少なく、次の職場で確実に重宝される。

③ フィジカルな制約下の事業設計

工場、物流、店舗が絡む。荷物は物理的に動くし、人は不在だし、ホテルには受け取りを拒否する権利がある。ソフトウェアだけをやってきた層が、決定的に持っていない解像度がここにある。画面の上では完結しない事業を、どう成立させるか。

代替が効かない三つの経験(資本を持つ人の意思決定・撤退の作法・物理制約下の設計)を横三列で並べた図

では、どう見分けるか

仮説としては良くても、実際に会社を選ぶ段になると難しい。看板からは分からないからである。面接や面談で確認できる範囲で、判断材料になるものを挙げる。

後継者が、いつ戻ってきたか。 戻って半年の人と、5年目の人では、社内での通り方がまったく違う。新規事業が本当に動くかは、本人の能力より、社内で話が通る状態になっているかに依存する。「戻ってきて何年目ですか」は、聞いても失礼にならない質問である。

新規事業に、本業の資産がどう繋がっているか。 ここが繋がっていない場合、それは実質ゼロイチである。既存の設備・顧客・与信を使わない新規事業なら、この仮説の利点はほとんど消える。「この事業で、本業の何を使うんですか」と聞いて、具体物が返ってこないなら要注意である。

失敗したときにどうなるか、決まっているか。 撤退の作法が学べるのは、撤退の設計が存在する場合だけである。「どこまでやって駄目なら止める、というのは決まっていますか」への答えの精度が、そのまま組織の成熟度を示す。答えが「まだ考えていない」なら、それはそれで正直だが、学べる中身は変わる。

先代がまだ現役かどうか。 現役なら、判断の現場を二世代ぶん観察できる。ただし決裁が二重になり、話が進まないリスクも同時に上がる。どちらに転ぶかは会社次第だが、聞いておかないと入ってから驚く項目である。

いずれも、求人票には書かれていない。だから聞くしかない。そして、こういう質問にきちんと答えられる会社かどうか自体が、判断材料になる。


ただし、この仮説には裏側がある

ここまで読むと、良い賭けに見えるかもしれない。実際、供給が少ない経験を積めるという意味では、筋は悪くない。

しかしこの仮説には、書いておかなければ不誠実な論点が2つある。

ひとつは、この仮説の主役である後継者本人の名目スキルセットが、いまいちばんAIに侵食されているという事実。

もうひとつは、ここで積む経験が、そのままでは外に持ち出せないという構造的な問題である。固有性が高いことは強みであると同時に、市場価値の説明を難しくする。

後編では、この2つを扱う。AIが何の値段をゼロにしていて、逆に何を値上がりさせているのか。そのうえで、この賭けの勝ち筋がどこにあるのかを整理する。

(後編へ続く)

事業開発に向いている人 よくある質問

事業開発に向いている人には、どんな特徴がありますか?

決まっていない状態に耐えられること、自分で問いを立てられること、仮説を立てて確かめるのを繰り返せること、顧客の視点と事業の視点を行き来できること、社内を巻き込み調整できること、手を動かすのが速いこと、数字とコストの意識があること、やり抜く力と当事者意識があること。この8つがよく挙げられます。中でも、決まっていない状態が続くこと自体を負担に感じるかどうかが、いちばん大きな分かれ目です。

事業開発に向いていないのは、どんな人ですか?

完璧主義で出せる状態になるまで見せない、できない理由を先に並べる、他責になりやすい、前例と既存ルールに強く依存する、短期の成果だけを求める、1人で完結させたがる、考えるが手が動かない。ただしこれらは性格ではなく状況で決まる面があります。失敗が減点になる評価制度の下では、誰でも完璧主義になり、できない理由を探すようになります。人を選ぶ前に制度を見てください。

事業開発には、どんなスキルが必要ですか?

顧客の課題を特定するリサーチ・ヒアリング力、収益構造を設計するビジネスモデリング力、最小の範囲で確かめる検証の設計力(MVP企画)、数字で判断するデータを読む力、関係者を動かして止めない推進・管理の力の5つです。1人で全部を満たす必要はありません。むしろ1人で全部を担う体制は、その人が抜けた瞬間に止まります。

経験が浅くても、事業開発はできますか?

できます。立ち上げの経験者は市場に少なく、待っていても採用できないのが実情です。経験より、確かめ方の癖のほうが移植しやすいので、顧客に会う回数を積める場所に置けば伸びます。問題は本人の年次ではなく、決める場面に立てる場所が社内にあるかどうかです。

自分が事業開発に向いているか、どう確かめればよいですか?

小さな案件で決める側に回ってみること、顧客に会って聞いた話から事実を書き出せるか試すこと、そして外れたときの自分を見ることです。仮説を捨てられるか、それとも測り方のほうを疑い始めるか。診断ツールは傾向をつかむ補助になりますが、実際に1件やってみるほうが早く分かります。

“アトツギ企業って同族経営ですよね。就職先として大丈夫ですか?”

“私は「資本と決裁が同じ場所にある」という一点で評価します。実際、60分の定例で法務も価格も撤退フローも全部通る。ただし良い会社かどうかは看板からは分かりません。後継者が戻って何年目か、新規事業に本業のどの資産が繋がっているかを、面接で必ず聞いてください。”

“スタートアップで新規事業をやるのと、何が違うんですか?”

“使う筋肉が違います。ゼロイチは白紙に線を引く仕事で、発想の広さが効く。アトツギの新規事業はすでに引かれた線を読んでから引く仕事で、与件の読解と組み替えが効く。加えてスタートアップは失敗すると解散するので、撤退の作法——人の再配置や損切りの線引き——を学ぶ機会が構造的にありません。”

“その経験、転職のときに評価されますか?”

“そのままでは評価されにくい、というのが正直なところです。ここで積む経験は固有性が高く、それは強みであると同時に市場価値の説明を難しくする。同じコインの裏表です。前編では問題提起までにとどめ、どう緩和するかは後編で扱います。”

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