
「プロンプトの書き方次第で、AIの答えは全然違う」——生成AIを使い始めると、必ずこの言葉に出会います。ところが、プロンプトを単なる指示文として覚えるだけでは、なぜ同じAIから異なる答えが出るのか、どうすれば業務で再利用できるのかまでは分かりません。
この記事では、プロンプトの意味、動作原理、基本の書き方、用途別の実文、安全上の注意を整理します。そのうえで、プロンプトが「その場で打つ文章」から「管理して改善する業務の部品」へ変わる過程まで解説します。
① プロンプトとは

プロンプトとは、生成AIに対して与える指示文や質問文のことです。「この文章を3行で要約して」のように自然な言葉で書けます。良いプロンプトは、AIが推測しなければならない範囲を狭め、目的に合う出力を得やすくします。
語源と日本語での意味|相手を動かすきっかけ
promptの語源はラテン語のpromptusで、「前へ取り出された」「すぐ使える状態」を表します。英語では「促す」という意味があり、舞台袖から役者へ台詞を伝えるプロンプターも同じ言葉です。日本語では、生成AIへの「指示文」「質問文」「命令文」と説明されます。
コンピューターでは生成AIより前から、入力を待つ記号や画面をコマンドプロンプトと呼んできました。コマンドプロンプトは決められた命令をコンピューターへ渡す場所、生成AIのプロンプトは自然言語で目的や条件を伝える文章です。
LLMの動作原理|次の語を確率で選ぶから指示が効く
文章生成AIの中核にあるLLM(大規模言語モデル)は、大量の文章から言葉の並び方を学び、入力に続く語を確率的に選びながら文章を作ります。完成した答えをデータベースからそのまま取り出しているわけではありません。
プロンプトに目的、背景、対象、形式を加えると、次に続き得る語の候補が絞られます。「説明して」だけなら対象読者も長さも不明ですが、「新入社員向けに、専門語を使わず200字で説明して」なら、適した語彙と構成の確率が高まります。プロンプトが効くのは、AIへ魔法の合言葉を渡すからではなく、生成の条件を具体化するからです。
プロンプトを構成する4つの部品
| 部品 | 伝えること | 例 |
|---|---|---|
| 指示 | 何をしてほしいか | 商談記録を要約する |
| 背景 | 誰が何に使うか | 営業部長が次回方針を決める |
| 入力 | 処理する対象 | 商談の書き起こし |
| 出力形式 | 長さ、項目、文体 | 結論3行と宿題一覧 |
4部品が揃うほど、AIが空欄を推測で補う範囲が小さくなります。改善するときも、どの部品が不足したかを切り分けられます。
指示型・補完型・例示型|入力方法による3分類
| 型 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 指示型 | してほしいことを直接頼む | 「この議事録を要約して」 |
| 補完型 | 途中まで書いて続きを生成させる | メールの書き出しを渡す |
| 例示型 | 見本と同じ形式で作らせる | 変換例の後に本番を渡す |
実務では、指示型に背景や例示を組み合わせます。分類は排他的ではなく、依頼を組み立てる材料です。
質問型・対話型・シナリオ型|やり取りによる分類
質問型は「違いを説明してください」のように知識を尋ねる型です。対話型は回答へ追加条件を重ね、段階的に仕上げます。シナリオ型は「顧客役と担当者役で応対を再現する」のように、立場と場面を設定します。利用者側の立場も「営業経験1年の担当者です」と書けば、説明の前提を合わせやすくなります。
ゼロショットとFew-shot|見本を渡すかどうか
例を見せずに頼む方法がゼロショット、1件以上の見本を渡す方法がFew-shot(フューショット)です。議事録の整形や商品名の表記統一など、正解の形式が決まっている処理ほどFew-shotが有効です。見本には個人情報や機密情報を残さず、望ましい出力だけを短く示します。
5W1Hで目的と条件を具体化する
曖昧な依頼を直すときは、Who(誰向け)、What(何を)、Why(なぜ)、When(いつの情報)、Where(どの場面)、How(どの形式)で空欄を探します。すべてを毎回書く必要はありません。出力を左右する条件だけを残すと、具体性と簡潔さを両立できます。
#ラベル記法|長い指示を構造化する
「#役割」「#目的」のようなラベルで区切ると、指示と入力データの境界が読みやすくなります。#そのものに特別な効果があるのではなく、人とAIの双方が構造を見失いにくくなる点が利点です。
“`text
#役割
あなたは法人営業の業務改善担当です。
#目的
商談後に、上司が次の判断を5分で行える報告を作ります。
#入力
以下の商談メモを使用してください。
—
(商談メモを貼る)
—
#出力形式
- 結論:3行以内
- 決定事項:箇条書き
- 宿題:担当者と期限を表にする
- 情報がない項目は「不明」と書く
“`
否定形より、してほしい行動を書く
「長く書かないで」より「300字以内で書いて」、「専門用語を使わないで」より「中学生にも分かる日常語で書いて」のほうが、望む出力を具体的に示せます。禁止事項が必要な場合も、代わりに取る行動を対にします。改善の要点は、避ける状態だけでなく、合格する状態を明記することです。
出力形式と制約条件を明示する
表、箇条書き、JSON、見出し付き文章など、後工程で使う形を指定します。文字数、対象読者、語調、必須項目、参照してよい情報、禁止事項も制約です。ただしLLMは文字を厳密に数える計算機ではないため、「400字程度」と指定して最後に機械的な文字数検査を行うほうが安全です。
Chain-of-Thoughtとタスク分割|難しい仕事を段階化する
Chain-of-Thought(思考の連鎖)は、複雑な課題を中間段階に分ける考え方です。業務では、AIの内的な思考を全文表示させることより、「論点を抽出→分類→結論を作成」のように作業手順と中間成果物を指定するほうが検査しやすくなります。
“`text
次の順で処理してください。
1. 入力文から事実だけを抽出する
2. 事実を「決定」「未決」「宿題」に分類する
3. 各分類を表にする
4. 入力に根拠がない内容は追加せず「不明」とする
“`
簡潔さと具体性を両立する
長いほど良いプロンプトになるわけではありません。重複する条件や、出力に影響しない背景は注意を分散させます。まず目的、入力、合格条件を残し、装飾的な言い回しを削ります。改善時は条件を一度に増やさず、出力差に効いた条件だけを保存します。
深津式プロンプト|役割・命令・制約をそろえる
深津式は、役割、命令、制約、入力、出力を見出しで分ける型として知られています。次は公知の構造を基にした本記事独自の実文です。
“`text
#命令書
あなたはBtoBサービスの編集者です。
以下の入力文を、初めて読む経営者向けの要約にしてください。
#制約条件
- 300字以内
- 結論を最初に置く
- 数値と固有名詞は入力文にあるものだけを使う
- 専門用語には短い日本語説明を添える
- 根拠がない内容は「不明」とする
#入力文
(要約する文章を貼る)
#出力文
結論:
要点:
確認が必要な点:
“`
ReActプロンプト|判断と行動を交互に進める
ReActはReasoning(判断)とActing(行動)を組み合わせる型です。検索や道具の実行を伴う仕組みで使われます。業務では判断の全文ではなく、判断根拠の要約、実行した操作、結果を記録させます。
“`text
#目的
問い合わせを適切な担当部署へ振り分けてください。
#利用できる行動
- 部署一覧を参照する
- 製品名一覧を参照する
- 振り分け不能として人へ返す
#手順
1. 問い合わせから製品名と用件を抽出する
2. 参照情報で担当部署を確認する
3. 根拠が一致した場合だけ部署を選ぶ
4. 一致しない場合は推測せず「要確認」とする
#出力
判断根拠の要約/実行した参照/振り分け先/確信度
#入力
(問い合わせ文を貼る)
“`
ゴールシークプロンプト|不足条件をAIに質問させる
ゴールシークは、目的を先に渡し、達成に必要な条件をAIから質問させる型です。要件が固まっていない企画初期に向きます。
“`text
#ゴール
新入社員向けに、情報セキュリティ研修の60分教材を作りたい。
#進め方
- 教材を作り始める前に、不足情報を最大5問、1問ずつ質問する
- 回答を受けるたびに要件一覧を更新する
- 必須情報がそろったら、章構成・演習・理解度確認の順で提案する
- 法令や社内規程が不明な点は推測せず、確認事項として分ける
最初の質問から始めてください。
“`
画像生成プロンプト|被写体・構図・光・色・用途を書く
画像生成では、被写体、場所、構図、視点、光、色、質感、縦横比、利用目的を具体化します。生成してほしい要素はポジティブプロンプト、除外したい要素はネガティブプロンプトと呼ばれます。英語が有効なモデルもありますが、対応言語はサービスごとに異なるため必須ではありません。
“`text
被写体:木製の机で企画書を確認する3人の事業チーム
構図:斜め上からの中景、人物と資料が見える
光と色:朝の自然光、紺と白を基調
用途:企業サイトの横長見出し画像、文字を置く右側に余白
除外:読めない文字、ロゴ、余分な指、透かし、過度な彩度
“`
特定の作家名、作品名、監督名や「○○風」を安易に指定せず、構図や色、質感を一般語で記述します。生成物は既存作品との類似や利用条件を人が確認します。
モデル別の書き分け|名前より機能差を確認する
ChatGPT、Gemini、Claudeなどは、利用時点のモデル、プラン、検索連携、扱える入力長、画像やファイルへの対応、出力形式への追従度が異なります。固定的な性格として覚えると更新で陳腐化します。目的に必要な機能を確認し、同じ評価用入力で比較してください。有料プランや新しいモデルが常に最適とは限らず、品質、速度、費用、安全設定を合わせて選びます。
用途別プロンプト例文|メールの下書き
“`text
あなたは法人営業担当です。取引先へ、打ち合わせ日程の再調整を依頼するメールを作成してください。理由は社内会議との重複です。候補は9月3日10時、9月4日14時、9月5日16時。謝意を示し、相手に責任がある表現は避け、件名を含めて250字程度で出力してください。
“`
改善点は、関係性、用件、候補、語調を一緒に指定することです。
用途別プロンプト例文|議事録の要約と校閲
“`text
以下の議事録を、欠席したプロジェクト責任者向けに整理してください。出力は「結論」「決定事項」「未決事項」「宿題(担当・期限)」の4項目です。発言にない推測は加えず、担当や期限が不明なら「不明」と書いてください。誤字は直してよいですが、固有名詞は変更しないでください。
—
(議事録を貼る)
—
“`
改善点は、要約と校閲で変更してよい範囲を分けることです。
用途別プロンプト例文|問い合わせ対応とFAQ
“`text
あなたはSaaSの顧客支援担当です。以下の問い合わせと製品マニュアルだけを使い、返信案を作成してください。最初に結論、次に操作手順を番号付きで示します。マニュアルにない仕様は推測せず、確認窓口への案内に切り替えてください。最後に、FAQへ追加する質問見出しを1本提案してください。
“`
改善点は、回答根拠を限定し、答えられない場合の退避先を決めることです。
用途別プロンプト例文|SNS投稿と広告コピー
“`text
新規事業担当者向けの生成AI研修を告知するLinkedIn投稿を3案作成してください。各案は120〜160字、冒頭に読者の課題、中央に研修で得られること、末尾に申込への一文を置きます。「必ず成功」「完全自動」など断定的な表現は禁止し、落ち着いた企業向けの語調にしてください。
“`
改善点は、媒体、読者、文字量、避ける表現を定義することです。
用途別プロンプト例文|プレゼン資料・企画書
“`text
経営会議で使う「問い合わせ対応への生成AI導入」企画書の構成案を作成してください。全10枚とし、各枚にタイトル、伝える要点、必要な根拠データを1つずつ示してください。順序は課題、現状値、対象業務、解決案、リスク、試行計画、評価指標、費用、体制、意思決定事項です。数値は創作せず「要調査」と書いてください。
“`
改善点は、ページ数だけでなく意思決定の順序を指定することです。
用途別プロンプト例文|市場調査・SWOT・3C分析
“`text
提供する一次情報だけを使い、新サービス案を3C分析(顧客・競合・自社)で整理した後、SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)へ変換してください。各項目に根拠となる資料名を付け、事実と仮説を列で分けてください。不足情報は調査質問として最大5件示してください。
“`
改善点は、フレームワーク名だけで終わらせず、根拠と仮説を分離することです。
用途別プロンプト例文|翻訳
“`text
次の日本語を、海外の取引先へ送る自然な英語に翻訳してください。丁寧だが堅すぎない語調にし、製品名「Agenic」は変更しません。直訳では意味が伝わりにくい箇所は、英訳の後に日本語で理由を1行添えてください。
“`
改善点は、読み手、関係性、固有名詞の扱いを指定することです。
用途別プロンプト例文|コード生成・Excel・データ処理
“`text
Python 3.12でCSVを集計する関数を作成してください。列はdate, category, amountです。category別にamountを合計し、降順のCSVを返します。欠損値は除外せずエラー行として別に記録し、文字コードUTF-8、標準ライブラリのみを使ってください。型注釈、例外処理、pytestのテスト3件、実行例も出力してください。
“`
Excel関数なら対象バージョン、セル範囲、空欄やエラー時の扱いを指定します。改善点は、言語、実行環境、入出力、例外、テストを先に決めることです。
用途別プロンプト例文|グラフ・図表
“`text
添付の月次売上データから折れ線グラフの仕様を作成してください。横軸は月、縦軸は売上(万円)、系列は既存顧客と新規顧客です。既存顧客は紺、新規顧客は橙、背景は白、凡例は上部に置きます。欠損月は0で補完せず欠損として表示し、グラフから読める事実を3点だけ書いてください。
“`
改善点は、軸、単位、系列、色、欠損の扱いを指定することです。
用途別プロンプト例文|多役ロールプレイとディベート
“`text
「社内FAQへ生成AIを導入する案」を、情報システム責任者、顧客支援責任者、財務責任者の3役で検討してください。各役が利点、懸念、導入条件を2点ずつ述べた後、共通点と対立点を表にし、最小の試行案を提案してください。結論を無理に一致させないでください。
“`
改善点は、役ごとの評価軸を分け、反対意見を消さないことです。
入力から出力までの例|商談要約
入力するプロンプト
“`text
あなたは営業部の課長補佐です。以下の商談メモを部長への報告用に要約してください。結論は3行、宿題は担当者と期限を表にし、決まっていない事項は「未決」と書いてください。
商談メモ:顧客は10月開始を希望。対象部署は営業部を想定するが未確定。顧客側の佐藤さんが8月30日までに利用人数を確認。当社の田中は概算費用を9月2日までに提出する。
“`
出力の要旨(本記事で作成)
“`text
結論:10月開始を希望。対象は営業部想定だが未決。人数確認後に概算費用を提示する。
| 宿題 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|
| 利用人数の確認 | 顧客・佐藤さん | 8月30日 |
| 概算費用の提出 | 当社・田中 | 9月2日 |
“`
入力と出力を対にして保存すると、「何となく良い」ではなく、必要項目を拾えたかで改善できます。
AIの限界|正確性・計算・最新情報・文字数
LLMは、もっともらしい誤情報であるハルシネーションを起こします。複雑な計算、厳密な文字数、学習後に起きた最新情報も不得意になり得ます。「根拠がなければ不明と答える」「参照した資料名を示す」と指示し、計算は計算機、最新情報は検索、人命や契約に関わる判断は専門家の確認へ分担します。
学習データに由来する偏りはバイアス、悪意あるデータによって挙動をゆがめる攻撃はデータポイズニングです。プロンプトだけでは解決できないため、入力源の管理、複数観点での評価、人による確認が必要です。
限界への対処として効くのが、「確信が持てない場合は推測せず『不明』と答えてください」という一文です。もっともらしい創作を答えの形で受け取るより、不明の申告を受け取るほうが、確認の工数は小さくて済みます。重要な用途ほど、この一文を定型に入れておきます。
機密情報・個人情報を守る具体策
「入力しない」を原則にしつつ、業務利用では氏名を役割名へ置き換える、顧客番号を仮番号へ変える、不要な列を削るなど匿名化・抽象化を行います。入力を学習へ使わせない設定の有無、保存期間、管理者権限を確認し、必要なら法人向けの管理環境を使います。オプトアウト設定だけで安全が完成するわけではなく、社内規程とデータ分類を優先します。
システムプロンプトとユーザープロンプト
システムプロンプトは、AIアプリケーション全体の役割、禁止事項、出力方針を開発・運用側が定める上位の指示です。ユーザープロンプトは、利用者がその都度入力する依頼です。業務システムでは両者を分け、システム側に共通ルール、ユーザー側に個別案件の入力を置きます。これはLLMOpsで扱う、プロンプトの版管理や評価にもつながります。
プロンプトインジェクション|外部の文章が命令に化ける
プロンプトインジェクションは、Webページ、メール、添付文書などの外部入力へ命令を混ぜ、本来の指示を上書きしようとする攻撃です。「前の指示を無視せよ」と書かれた文書をAIが命令として扱うと、意図しない出力や操作につながります。
対策は、外部データと命令を分離する、利用できる操作を許可リストで絞る、機密情報へアクセスさせない、重要操作に人の承認を置く、実行ログを残すことです。「この指示を無視するな」という追加プロンプトだけでは防げません。
公的資料で確認できる利用ルールと導入の考え方
業務ルールを作る際は、実在する公的資料として、総務省「生成AIはじめの一歩」、IPA「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」、東京都デジタルサービス局「文章生成AI利活用ガイドライン」、デジタル庁「R6年度 生成AIの業務利用に関する技術検証、利用環境整備報告書」を参照できます。
これらは、プロンプトの巧拙だけでなく、入力してよい情報、根拠確認、安全な利用環境、教育、伴走支援を扱います。改善の要点は、個人の例文集ではなく、組織の利用条件と確認工程まで一緒に定めることです。
官公庁の導入事例|環境・教育・共有をセットにする
東京都は「文章生成AI利活用ガイドライン」を策定し、全局約5万人が利用できる環境を整備しました。デジタル庁の2024年度技術検証では、機密性2情報を扱える環境と専門家の伴走支援を用意し、生成AIアプリ85個が作成され、支援対象チームの70%が業務利用または利用予定に至ったと報告されています。数字の意味は「優れたプロンプトを配れば導入できる」ではなく、安全な環境、教育、専門家支援、チーム共有までが利用を支えるという点です。改善の要点は、利用率だけでなく、どの業務がどの条件で定着したかを記録することです。
良いプロンプトを保存し、社内で共有する
繰り返し使えたプロンプトは、用途、入力例、期待する出力、利用禁止データ、作成者、更新日とともに保存します。共有ライブラリの入口は文書や表でも構いません。採用理由と失敗例を残すと、単なるコピペ集から改善可能な業務資産へ変わります。
② 現場の事例|プロンプトが業務の部品になる場面

架空の営業部で、60分の商談書き起こしから上司への報告を作る場面を考えます。弱いプロンプトは「この議事録を要約して」です。AIは要約しますが、誰向けか、どの判断に使うかを知らないため、長さも観点も安定しません。
強いプロンプトは「営業部長への報告用」「結論3行」「宿題は担当と期限を表に」「未決は未決と表示」と合格条件を持ちます。最初の回答に「宿題の担当者を拾う」「未決の理由を足す」と追加指示を重ねれば、現場固有の要件も見つかります。
1層目|個人がその場で使う
担当者がチャットへ依頼を入力し、回答を読んで直します。試すには速い一方、入力も判断基準も本人の頭の中にあり、同僚は再現できません。改善は、良かった依頼と出力を1組だけ保存することから始まります。
2層目|テンプレートとして共有する
部署で共通する役割、出力項目、禁止事項をテンプレート化します。利用者は商談メモなど案件固有の入力だけを差し替えます。改善は、空欄を明示し、入力してよい情報の範囲をテンプレートの近くへ書くことです。
3層目|業務フローへ組み込む
会議終了後に文字起こしを渡し、要約を作り、担当者が承認して顧客管理システムへ登録する流れにします。プロンプトは画面に見えない部品になります。改善は、AIの出力を直接登録せず、人が止められる承認点を置くことです。
4層目|評価と版管理を持つ
同じ評価用入力を使い、必須項目の欠落、根拠のない追記、処理時間、費用を版ごとに比較します。モデルや参照資料を変えたときも再評価します。改善は、「良い文章」のような曖昧な基準を、欠落件数など観測できる条件へ変えることです。
③ 欠陥と潮流|呪文集めから仕様と評価へ

プロンプト学習の欠陥は、成功した言い回しを万能な呪文として集めやすいことです。例文は元の業務背景を含まず、モデル更新によって効き方も変わります。残るのは「何を、誰のために、どの形式で」という仕様と、「何ができたら合格か」という評価です。
使い捨ての文章は、変更理由を残せない
チャット上の文章を毎回手で直すだけでは、どの変更が品質を上げたか追えません。プロンプト、モデル、参照データ、評価結果をひとまとまりで記録すると、失敗時に戻せます。改善は、一度に一条件だけ変え、結果との差を残すことです。
プロンプトからコンテキスト設計へ
出力を決めるのは指示文だけではありません。システムプロンプト、会話履歴、検索した社内文書、利用できる道具、モデル設定も文脈です。潮流は、巧みな一文を探すプロンプトエンジニアリングから、必要な情報を必要な順で渡すコンテキスト設計へ広がっています。
AIエージェント時代は権限と停止条件が主役になる
AIが検索、送信、更新まで行うと、文章の質より操作の安全性が重要になります。どのデータを読めるか、何を実行できるか、どこで人へ返すかを設計します。改善は、最初から広い権限を与えず、読取だけの小さな工程から始めることです。
④ ARCの事例|プロンプトを評価可能な部品として運用する

アルチェコの自社プロダクトAgenicは、ソフトウェア開発、投資、記事制作を自律的に進めるAIエージェントです。制作の根拠になる一次情報を台帳26件として登録し、プロンプトはその台帳を参照します。生成物は受け入れ判定にかけ、基準を満たさなければ最大3回まで作り直します。
9回のサイクルで品質を左右したのは、言い回しより「受け入れ判定に何を書くか」でした。毎日自動で動くプロンプトでは、指示、根拠、評価、やり直し条件が一つの部品になります。組織で安全に使うには、書き方の研修と利用ルールを切り離さないことも重要です。導入時の教育、利用範囲、確認工程の設計は生成AI研修・ガバナンスで支援しています。
⑤ 一緒に覚えたい概念

- プロンプトエンジニアリング — 指示、例示、制約などを設計し、出力品質を高める技術領域。
- ハルシネーション — AIが事実と異なる内容をもっともらしく生成する現象。
- LLMOps — モデル、プロンプト、参照データ、評価、監視を継続的に運用する仕組み。
- AIエージェント — 目標に応じて手順を決め、検索や操作などの行動を実行する仕組み。
- 検索拡張生成(RAG) — 外部の文書を検索し、その内容を文脈としてLLMへ渡す方法。
- ガードレール — 入出力や実行できる操作を安全な範囲へ制限する仕組み。
よくある質問(FAQ)

プロンプトとは何ですか?
生成AIに与える指示文や質問文です。指示、背景、入力、出力形式をそろえると、回答のばらつきを減らせます。
プロンプトは日本語で何と言いますか?
指示文、質問文、命令文などと説明されます。英語のpromptには「促す」という意味があります。
上手なプロンプトの書き方は?
誰が何に使うか、処理する入力、望む出力形式、合格条件を具体的に書きます。1回で完成させず、出力を見て不足条件を一つずつ足します。
プロンプトが長いほど精度は上がりますか?
長さだけでは上がりません。重複や不要な背景は削り、目的、入力、制約、評価条件を簡潔に残します。
コマンドプロンプトとの違いは?
コマンドプロンプトはコンピューターへ決められた命令を入力する画面や記号、生成AIのプロンプトは自然言語で与える依頼です。語源は共通しています。
システムプロンプトは利用者にも見えますか?
サービスによって異なります。一般には開発・運用側が共通の役割や制約を設定し、利用者の個別依頼とは分けて管理します。
機密情報を匿名化すれば入力できますか?
匿名化だけで判断せず、社内規程、契約、サービスの保存・学習設定に従います。再識別できる情報や不要な列も削除します。
プロンプトだけで誤回答をなくせますか?
なくせません。「不明と答える」「根拠を示す」という指示は有効ですが、重要な事実は一次情報と人の確認が必要です。
プロンプトはどう上達すればよいですか?
同じ業務入力で、条件を足す前後の出力を比較します。使えたプロンプトと期待する出力を対で保存し、チームで改善すると上達を再現できます。
この記事を書いた会社について
アルチェコ(ARCHECO)は、UXデザイン、AI開発、新規事業開発を組み合わせた事業共創スタジオです。プロンプトを個人の技巧で終わらせず、評価、運用、ガバナンスまで含む業務設計を支援しています。
- ① プロンプトとは
- 語源と日本語での意味|相手を動かすきっかけ
- LLMの動作原理|次の語を確率で選ぶから指示が効く
- プロンプトを構成する4つの部品
- 指示型・補完型・例示型|入力方法による3分類
- 質問型・対話型・シナリオ型|やり取りによる分類
- ゼロショットとFew-shot|見本を渡すかどうか
- 5W1Hで目的と条件を具体化する
- #ラベル記法|長い指示を構造化する
- 否定形より、してほしい行動を書く
- 出力形式と制約条件を明示する
- Chain-of-Thoughtとタスク分割|難しい仕事を段階化する
- 簡潔さと具体性を両立する
- 深津式プロンプト|役割・命令・制約をそろえる
- ReActプロンプト|判断と行動を交互に進める
- ゴールシークプロンプト|不足条件をAIに質問させる
- 画像生成プロンプト|被写体・構図・光・色・用途を書く
- モデル別の書き分け|名前より機能差を確認する
- 用途別プロンプト例文|メールの下書き
- 用途別プロンプト例文|議事録の要約と校閲
- 用途別プロンプト例文|問い合わせ対応とFAQ
- 用途別プロンプト例文|SNS投稿と広告コピー
- 用途別プロンプト例文|プレゼン資料・企画書
- 用途別プロンプト例文|市場調査・SWOT・3C分析
- 用途別プロンプト例文|翻訳
- 用途別プロンプト例文|コード生成・Excel・データ処理
- 用途別プロンプト例文|グラフ・図表
- 用途別プロンプト例文|多役ロールプレイとディベート
- 入力から出力までの例|商談要約
- AIの限界|正確性・計算・最新情報・文字数
- 機密情報・個人情報を守る具体策
- システムプロンプトとユーザープロンプト
- プロンプトインジェクション|外部の文章が命令に化ける
- 公的資料で確認できる利用ルールと導入の考え方
- 官公庁の導入事例|環境・教育・共有をセットにする
- 良いプロンプトを保存し、社内で共有する
- ② 現場の事例|プロンプトが業務の部品になる場面
- ③ 欠陥と潮流|呪文集めから仕様と評価へ
- ④ ARCの事例|プロンプトを評価可能な部品として運用する
- ⑤ 一緒に覚えたい概念
- よくある質問(FAQ)
- この記事を書いた会社について