「AIに画面(UI)はいらない」という誤解 ― 会話できることと、使えることは違う

AIのUI/UXデザイン|設計6原則とチャットUIの4つの限界、画面はいらないという誤解

「AIと話せるなら、画面はもういらない」――そう信じてボタンを全部消したサービスで、新しく来た人は真っ白な入力欄の前で固まりました。会話型UIの4つの限界と、AIのUI/UXデザイン6つの原則を、田舎町で高齢者のスマホ設定を見た話から解説します。

長野に移り住んでから、地域の高齢者の方々と関わる機会が、ぐっと増えました。そこで教わったことのひとつが、今日の話の出発点です。(なぜ長野の高齢者と筆者が接点を持っているのか気になった方。経緯は、自己紹介でご紹介しております。)

電話は達人、アプリは使われない ― 田舎町で見た光景

つい先日、3G回線の終了に伴い、多くの高齢者の方が愛用していたガラケーからスマホへの乗り換えを迫られていました。地域の自治体では「高齢者がスマホの操作で躓かないように」という取り組みがありました。市役所の支所に勤める地域課の担当者さんが、搭載されているアプリを見せながら、使い方の説明も行う。小さな市役所の支所としては、なかなかの手厚さなのではないでしょうか。ところが、高齢者たちの多くは他のアプリに見向きもせず、終始、電話帳と通話アプリの使い方の説明を求めたそうです。

都心のあたりでは、スマホをそれこそ筆者なんかより快適に使いこなしている「高齢者」の方々は昨今たくさんいらっしゃるイメージですが、筆者が住む田舎町においては、そのような方は極めて珍しいのです。
その話を聞いて、最初は筆者も「やっぱり、この辺の年配の方にはデジタルは難しいのかな」と思いかけました。でも、それは多分間違いでした。

同じ方々が、これまでガラケーは当たり前に使いこなしていた。それも、用件だけ手短に、なんてことはなくて、世間話から畑の心配ごとまで、電話一本で何十分も話していたりする。公民館にランダムに集まって開かれる会合は、驚くほど活発で、誰がどこまで話を進めたか、ちゃんと共有されている。回覧板は、判を押して、きちんと次の家へ回っていく。

つまり、「情報をやりとりする」ことそのものは、まったく問題なくできているんです。むしろ達人と言っていい。そうだとすると、「デジタルは難しい」と一括りに断定することは間違っていると思えてきます。できないんじゃない。アプリという“接点の形”が、その人たちの生活と、手と、目に、合っていなかった。ただ、それだけのことなのでは?と。道具が悪いとか、人が遅れているとか、そういう話じゃ、全然ないように思えてきました。

同じ人が電話・公民館の相談・回覧板という手に合った接点では情報交換の達人なのに、スマホアプリという合っていない接点ではほとんど使わなくなることを対比し、差は能力でなく接点の形だと示した図
差を分けたのは能力ではなく、接点の形

この経験は、いまAIの世界で語られる、ある“もっともらしい誤解”を見抜くのに、とても役に立っています。今日はその話をします。

「手に合う道具」の設計図 ― AIのUI/UXデザインとは・6つの原則

本題に入る前に、ひとつ補助線を引いておきます。AIの画面設計には、すでに言葉と型があります。全体像をそろえておくと、このあとの話が、ぐっと自分ごとになるはずです。

AIのUI/UXデザインとは|従来のUI/UXデザインとの違い

AIのUI/UXデザインとは、生成AIやAIエージェントを使う人が、何を頼めるかを理解でき、返ってきた結果を確かめ、直し、安心して任せられるようにするための設計です。従来のUI/UXデザインといちばん違うのは、出力が毎回同じとは限らない点にあります。ボタンを押せば決まった結果が返る画面と違い、AIは同じ依頼でも違う答えを返し、ときには堂々と間違えます。だからAIの画面は、「正しく動く前提」ではなく、「ぶれる前提・間違える前提」で設計する必要があります。

なぜ「AIに画面はいらない」と言われるのか

自然な言葉で頼めるなら、メニューやボタンを覚える必要はなくなる――この主張そのものには、筋が通っています。実際、いくつもの画面を行き来していた操作が、1文の依頼に置き換わる場面は確実に増えました。ただし、それが成り立つのは「何を頼めるか」をすでに知っている人に限られます。使い始めの人にとって、白紙の入力欄は、選択肢ではなく無言の質問です。

AIプロダクトのUIは3類型

類型主な形向いている場面弱点
会話型UI(CUI)チャット・音声依頼が多様で、定型化しにくい仕事何ができるかが伝わらない
GUI型画面・ボタン・フォーム操作が定型で、繰り返し使う仕事曖昧・複雑な依頼を表現しにくい
ハイブリッド型会話+画面依頼は自由に、確認と修正は画面で設計する範囲が広くなる

実務で選ばれるのは、多くの場合ハイブリッド型です。「会話か、画面か」という二択の問いの立て方そのものが、たいてい間違っています。

AIプロダクトの接点を会話型UI(自由に頼めるが何ができるか不明)、GUI(できることが見えるが複雑な依頼は苦手)、ハイブリッド(話す+見て触る・多くのAIはここ)の3類型で並べた比較図
選ぶのは形ではなく、その人に合う接点

会話型UI(チャットUI)が得意なこと・苦手なこと

内容
得意曖昧な依頼を受け止める/複数の手順をまとめて頼む/専門用語を知らなくても頼める
苦手できることを示す/結果を一覧で見せる/一部分だけ直す/進捗と根拠を見せる

苦手の4つは、いずれも従来のGUIが黙って引き受けてきた仕事です。チャット欄を足したこと自体は前進でも、画面を引いた分だけ、この4つが宙に浮きます。会話を入口に持つプロダクト全般の作り方は、チャットボットの作り方でも扱っています。

チャットだけにすると起きる4つの問題

問題現場で起きること
1. 見つけられない(発見可能性)何を頼めるか分からず、最初の一歩が踏み出せない
2. 確認と修正が重い正しいか確かめるのに長文を読み、直すのにも言語化が要る
3. 信頼が育たない何を根拠にそう答えたのかが見えず、任せきれない
4. 慣れても速くならない毎回文章を打つため、定型作業ほど手間が減らない

問題1|何ができるかが伝わらない(発見可能性の欠如)

メニューやボタンには、操作の入口であると同時に「このサービスでは、これとこれができます」を伝える役割があります。画面を取り払うと、その手がかりも一緒に消えます。ユーザーが固まるのは、能力の問題ではなく、選択肢が見えていないからです。

問題2|結果の確認と修正がしづらい

会話で返ってきた結果は、正しさを確かめるために全文を読む必要があります。直したい箇所が見つかっても、「ここのあれを、こう」と言語化しなければ伝わりません。チェックボックスを入り切りするような、ひと目で見てすぐ直せる操作の軽さは、会話では再現しにくいのです。

問題3|信頼が育たない(透明性の欠如)

人がシステムを信頼するのは、意外なほど「見た目」からです。いま何をしていて、どこまで進み、何を根拠にそう答えたのか。それが見えないままだと、正しい答えでも任せる気になれません。AIは自信のある口調で誤ることがあるため、この問題はいっそう効いてきます(ハルシネーションの対策)。

問題4|慣れても速くならない

会話は初回の敷居を下げますが、毎日同じ作業をする人にとっては、毎回文章を打つほうが遅くなります。習熟した人ほどショートカットを求めるのに、会話型UIには「押せば終わる」場所がありません。定型作業の入口はボタンに、例外だけ会話に――が実務的な分け方です。

AIのUI/UXデザイン 6つの原則

原則やること
1. できることを、それとなく見せるサジェスト・入力例・よく使う操作のチップを添える
2. 会話と操作を組み合わせる大まかな依頼は会話で、確認と微修正は画面で
3. 途中の動きと根拠を見せる何を参照し、いまどこまで進んだかを表示する
4. 訂正のコストを下げる一部分だけをワンタップで直せる導線を用意する
5. 間違いを前提に設計する取り消せる・確認してから実行する・影響範囲を示す
6. その人の生活と手に合わせる実際の使われ方を観察し、接点の形をそこへ寄せる
AIのUI/UXデザイン6つの原則を、できることをそれとなく見せる・会話と操作を組み合わせる・途中の動きと根拠を見せる・訂正のコストを下げる・間違いを前提に設計する・その人の生活と手に合わせる、のチェックリストで示した図
迷ったら、「相手の手に合っているか」で決める

原則1|できることを、それとなく見せる

真っ白な入力欄に放り出さず、「こんなことが頼めます」を数個だけ見せます。全機能を並べる必要はありません。最初の一歩さえ示せれば、人はそこから自分で広げていきます。

原則2|会話と操作を組み合わせる

自由な依頼は会話で受け、結果は一覧や表で返し、修正は画面から行えるようにします。「話す」と「見て触る」のいいとこ取りが、いまのところ最も外れの少ない設計です。

原則3|途中の動きと根拠を見せる

「いま、社内のこの3つの資料を見ています」と途中経過が少し見えるだけで、安心感はまるで違います。ブラックボックスから答えだけが出てくるより、手を動かしているところが見えるほうが、人は任せられます。

原則4|訂正のコストを下げる

人がAIに任せられるのは、「最後のひと筆を自分で入れられる」と分かっているときです。全体をやり直させるのではなく、一部分だけを直せる導線があるかどうかで、使われ方は大きく変わります。

原則5|間違いを前提に設計する

取り消せること、実行前に確認できること、影響範囲が分かること。AIが誤る前提に立つと、必要な画面はむしろ増えます。壊れたときに戻れる設計は、それ自体が信頼のつくり方です。

原則6|その人の生活と手に合わせる

最後は、原則というより姿勢の話です。実際にどう使われているかを観察し、接点の形をそこへ寄せる。ユーザーインタビュー共感マップといった手法は、そのための道具です。技術を足すより、相手のほうへ半歩寄るほうが、届くことがあります。

AIのUX設計でよくあるつまずき

いちばん多いのは、「できること」を増やせば使われるようになる、という思い込みです。実際には、選択肢が増えるほど最初の一歩は重くなります(AI機能を“足す”ほどプロダクトは使われなくなる)。次に多いのが、配って終わりにしてしまうこと。接点の形が合っていないまま研修だけを重ねても、定着はしません(生成AIで業務効率化する方法)。

「チャットできるなら、画面はいらない」という誘惑

最近、こういう主張をよく耳にします。「これからは、何でもAIと自然な言葉で話せるようになる。だから、ボタンや画面をちまちまデザインする時代は終わる。UI(ユーザーインターフェース)なんて、もういらない」。

一見、すごく説得力があります。たしかに、AIと会話できるのは魔法のようだし、複雑なメニューを覚えるより、話しかけるほうが簡単に思える。でも、この主張は、現場であっさり崩れます。なぜなら、「会話できること」と「使えること」は、まったく別物だからです。あの、電話は使えるのにアプリは使われなかった、高齢者の方々の話と、根っこは同じなんです。

たとえば、こんな話があったとします。

あるサービスが、この「UIはいらない」論を真に受けて、画面のボタンやメニューをほとんど無くし、「AIチャットの入力欄ひとつ」だけのデザインにしました。何でも話しかけてくれれば、AIがやります、と。

ふたを開けてみると、新しく来たユーザーは、その真っ白なチャット欄を前に、固まってしまう。「で、これに……何を話せばいいの?」。

結果は、なかなか厳しいものになるでしょう。新しくサービスサイトを訪問した顧客の多くが、最初の画面で、何もせずに去っていく。問い合わせ窓口には「使い方がわからない」という声が積み上がる。そして、挙句の果てには「前のメニューを戻してほしい」なんて要望が出てくる。あれだけ「もう画面はいらない」と意気込んで取り払ったボタンを、ユーザーのほうが、返してくれと言ってくる。会話できることは、便利さの入口であることは間違いでは無いのですが、それ自体がゴールではなかったんです。

自由すぎる入力欄が、人を立ち止まらせる

そこでは何が起きていたのか。チャット欄が、自由すぎたんです。

まず、何ができるのかが、わからない。ボタンやメニューには、実は「このサービスでは、これとこれができますよ」を伝える、大事な役割があります。メニューが消えると、その手がかりも一緒に消える。ユーザーは、何を頼んでいいのか見当がつかないまま、点滅するカーソルと、にらめっこすることになる。

これ、誰にでも覚えがあるはずです。例えば常連が客の大半を占める、メニューが2種類くらい(釜揚げとぶっかけ)しか書いて無いうどん屋さんに入店したとしましょう。客はレジ前に立つおばちゃんに注文を伝えようと列をなしています。常連たちは各々いずれかのうどんを注文すると同時に、「ネギ多め」やら、「生姜抜き」とか言いながらスムーズに頼み、どんどん列は進みます。ここで一見の客である我々は、ふと思うわけです。「この店のうどん、通常の状態知らないなぁ。」「どこまでカスタムできるんだろうか、、、?」そして、我々はレジのおばちゃんの前で固まりながら、頭で2択を迫られる。この忙しそうなおばちゃんにこと細かく質問しまくって好みのカスタムをするのか、メニューに書いてある品の名前だけを伝えてそそくさと流れに乗るか、、、。
食道楽たる筆者の脱線が過ぎましたが、AIを搭載したチャット欄の話に戻りましょう。
何の手がかりもない入力欄は、常連客であれば、「今日はあれをお願いしようかな」と、気軽にお願いできます。開発者の視点でも、きっとこのノリでしょう。しかし、一見の客が「さあ、どうぞ」とだけ言われると、手が止まる。選択肢が見えないと、人は自由になるどころか、かえって不自由になるんです。自由すぎる入力欄は、初心者には、とても不親切なんです。

次に、結果を確認したり、直したりしづらい。会話で「いい感じにやっといて」とAIに頼んで、何か結果が返ってくる。会話形式で、AIがやったことを懇切丁寧に解説している。でも、その内容が合っているのか確認するには、その懇切丁寧な解説を全て読み漁る必要がある。
そして直したい箇所を発見した時、どこをどう直せばいいのか、会話スタイルで「ここのアレをもっとああして、それはあっちに、、、」とどうにかこうにか言語化して、修正箇所を伝える。
チェックボックスをポチッと入り切りするような、ひと目で見て・サッと直せる操作の手触りが愛おしくなる気もしますよね。

そして、信頼が、生まれにくい。人がシステムを信頼するのは、けっこう「見た目」からです。どこに何があって、いま何が起きていて、自分の操作がどう反映されたか。それが目に見えると、安心して任せられる。真っ白なチャット欄は、その安心の手がかりを、何も与えてくれない。会話は、入口のひとつではあっても、体験の全部ではないんです。

真っ白なチャット入力欄だけの画面では、メニューとボタンが黙って果たしていた道しるべ・確認や修正の手触り・見える安心という3つの仕事が消え、ユーザーが固まり信頼が育たなくなることを示した図
ボタンを取り払うことは、道しるべ・手触り・安心を一緒に取り払うこと

想像してみてください。どこかに電話をかけたら、いきなりAI音声で「ご用件をどうぞ」とだけ言われて、あとは沈黙。何を、どう言えば、どこにつながるのか、さっぱりわからない。普段、「ご予約は1を、ご変更は2を」という自動音声を、私たちはちょっとうっとうしく感じています。でも、あれは実は、「ここで何ができるか」を教えてくれる、親切な道しるべだったんです。

田舎町の電話とアプリの話に戻ると、高齢者の方々が電話を使えるのは、電話をかけて、相手の声が聞こえて、話せば伝わる、という一連の流れが、体に馴染んでいるからです。留守電だってできる。「ガラケーで何ができるか知っている」から、彼らは馴染みの道具として信頼をおいて活用するわけです。

「色々できる」だけでは足りなくて、その人にとって自然な接点の形になって初めて、道具は「使える」ものになる。AIも、まったく同じです。

AIにこそ、UX/UIデザインが要る

だから筆者は、「AIに画面デザインはいらない」どころか、逆だと思っています。AIにこそ、丁寧なAI UX/UIデザインが要る。会話という新しい力を、ちゃんと“使える”ものにするための設計が、これまで以上に大事になる。では、具体的に、どんな設計でしょうか。

たとえば、何ができるかを、それとなく見せること。真っ白な入力欄に放り出すのではなく、「こんなことが頼めますよ」というサジェストや、よく使う操作のチップを添える。最初の一歩を、そっと指し示してあげる。たったこれだけで、あの「で、何を話せばいいの?」と固まる時間が、消えます。何を頼めるかわかった瞬間に、人は急に、その道具を使い始める。さっきの自動音声でいえば、「ご予約は1を」にあたる、やさしい道しるべです。

あるいは、結果を確認・修正できる形にすること。AIが出したものを、ただ会話で「こんな感じです」と受け取るだけでなく、一覧でぱっと見られたり、気になるところをワンタップで直せたりする画面を用意する。会話で大まかに頼んで、細部は目で見て手で直す。「話す」と「見て触る」を、いいとこ取りで組み合わせる。人は、自分で最後のひと筆を入れられるとわかって初めて、安心して任せられるものなんです。
しかし、これは一例です。逆に例えば、チャット欄に限定することの良さを考えてみましょう。もしもユーザーの用途が「会話」そのものだったら、この正解は変わるでしょう。大事なのは、ユーザーにどのような体験をしてもらうサービスなのか、考え抜くことです。

そして、忘れてはいけないのが、信頼が育つ見せ方をすること。いま何をしているのか、どこまで終わったのか、何を根拠にそう答えたのか。それが見えるだけで、人はAIを、ぐっと信用できるようになる。
たとえば、AIが何かを調べて答えるとき、「いま、社内のこの3つの資料を見ています」と、途中の動きがちらっと見えるだけで、安心感がまるで違う。ブラックボックスから答えだけがぽんと出てくるより、考えている過程が少し透けて見えるほうが、人は「お、ちゃんと仕事してるな」と感じる。カウンターの向こうで職人が手を動かしているのが見える寿司屋のほうが、なんとなく安心して任せられるのと、ちょっと似ているかもしれません。透明であることは、それ自体が、立派なデザインなんです。さらにこのチラ見せをどのような形で行うのが最適なのか、これをサービスごとに突き詰めていくことも、当然にデザインですよね。

AIチャット画面にサジェストチップで頼めることを示し、結果は一覧とワンタップ修正で確認でき、途中の動きと根拠が透けて見える、という「話す」と「見て触る」を組み合わせた3つの設計を注釈付きモックで示した図
会話は入口のひとつ。「会話も含めた体験全体」を設計する

会話できることは、たしかにすごい進歩です。でも、それは、デザインを不要にするのではなく、「会話も含めた、新しい体験全体をデザインする」という、もっと面白くて難しい仕事の、始まりの合図なんだと思います。

結局、相手の手に合っているか

結局スマホ説明会に参加した高齢者の方々に、担当者の方は何を説明し、どのような設定をしてくれたのか。便利なアプリの紹介ではなく、元々大きく設定されている文字をさらに大きくして、ロック画面を解除すると、すぐに電話帳と電話のアプリ2つが画面上に表示されるように設定。他のアプリは2ページ目以降。これでようやく、スマホアレルギーは軽減されて、たどたどしくも使ってもらえるようになりました。

現場で起きた変化は、本当に地味なものでした。「スマホアプリの使い方を覚えてもらう」のをやめて、「その人がもう使えるものに、歩み寄る」に切り替えただけ。技術を足したのではなく、相手に合わせて引いたり、ならしたりした。それで、すっと届くようになった。デザインって、きっと、こういう「相手のほうへ半歩寄る」ことの積み重ねなんだと思います。筆者自身はデザイナーではなくエンジニアですが、間近でデザインの過程を見るたびに、クライアントやエンドユーザーの想いを汲み取ろうとする様子に触れて、日々これを実感します。

技術が新しかろうと古かろうと、問われていることは、たぶん、いつも同じです。それは、使う人の手と、目と、暮らしに、合っているか。AIが何でも会話でこなせるようになっても、この問いは、消えるどころか、ますます重くなる。「画面はいらない」のではなく、「その人に合った接点を、会話も含めて、ていねいに設計する」。それが、これからのAI UX/UIデザインなんだろうな、と。長野の果樹園で教わった「役場担当者の奮闘記」を、筆者はそんなふうに、仕事に持ち帰っています。

AIのUI/UXデザインのよくある質問

AIのUI/UXデザインとは何ですか?

生成AIやAIエージェントを使う人が、何を頼めるかを理解でき、結果を確かめ、直し、安心して任せられるようにするための設計です。出力が毎回同じとは限らないため、「ぶれる前提・間違える前提」で画面を組む点が、従来のUI/UXデザインと大きく違います。

AIが会話できるなら、画面(UI)はいらないのではないですか?

会話できることと、使えることは別物です。会話は「何を頼めるか」を既に知っている人には強力ですが、使い始めの人には白紙の入力欄が壁になります。実務では、依頼は会話で受け、確認と修正は画面で行うハイブリッド型が選ばれることがほとんどです。

チャットUIだけにすると、何が起きますか?

主に4つです。何を頼めるか分からず最初の一歩が出ない、結果の確認と修正が重い、根拠が見えず信頼が育たない、慣れても定型作業が速くならない。いずれも、それまでボタンやメニューが黙って引き受けていた仕事です。

AIのUIは、どのように設計すればよいですか?

6つの原則が目安になります。できることをそれとなく見せる、会話と操作を組み合わせる、途中の動きと根拠を見せる、訂正のコストを下げる、間違いを前提に設計する、その人の生活と手に合わせる。まずは1つ目の「入力例を添える」だけでも、離脱はかなり減ります。

AIの出力が間違っていたとき、UIでできることはありますか?

あります。参照した情報を示す、実行前に確認を挟む、影響範囲を明示する、取り消せるようにする――いずれも誤りを前提にした設計です。精度を上げる取り組みと合わせて、間違いが起きたときに戻れる導線を用意しておくことが実務的です。

ITに不慣れな人にも使えるAIにするには、どうすればよいですか?

新しい操作を覚えてもらう方向ではなく、その人がすでに使えているものへ寄せる方向で考えます。表示を大きくする、最初の画面に必要な2つだけを置く、残りは奥にしまう。地味ですが、本文の実話のとおり、これで届くようになることがあります。


この記事は、ARCHECOが運営するメディア「AI・新規事業戦略大学」でお届けしました。ARCHECOは、UI/UXデザインとプロダクト開発を強みに、お客さまと並走しながら「使われるもの」をつくっているチームです。ご相談・お問い合わせはこちらからどうぞ。

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