
「補助金を取りたい。ただ、どれに出せばいいのかが分からない」先にお伝えしておきます。
近年、人手不足と賃上げの要請が同時に強まり、中小企業向けの補助金は制度の数も要件も毎年のように書き換えられてきました。名前の似た制度が横に並びます。上限の桁も、公募している役所も違います。
冒頭の一言は、その状況から出てきます。候補が多すぎるのではありません。候補が、そもそも比べられる形になっていないのです。
そして、比べ方を間違えたまま出した申請には、二通りの終わり方があります。ひとつは不採択になる。もうひとつは、採択されたあとで事業の継続が難しくなる。
後者(採択されたあとで事業の継続が難しくなる結末)のほうが、はるかに痛い。
本記事では、中小企業と小規模事業者が現実に手を伸ばせる6つの制度を、同じ列に並べます。そのうえで、制度を決めたあとに計画を誰と作るか、という話を扱います。
要件・金額・日付は、2026年8月25日に各制度の公募要領(申請条件や手続きを示す文書)と実施要綱(制度の目的や基本的なルールを定める文書)の原文で確認しました。
なお、本記事の発信元(ARCHECO)はアルチェコです。後半では運営会社が属する類型も同じ表に並べます。
① 新規事業進出補助金とは何か

補助金を探し始めた人が最初に並べるのは、上限額です。上限2,500万円と上限50万円が並んでいれば、上限額の大きい制度に目が行きます。
ただ、上限額は選ぶ軸としてはほとんど機能しません。制度ごとに、補助の対象になる行為そのものが違うからです。
本当に止まるのは、その一段下にあります。その制度が、通ったあとに何年ぶんの約束を求めてくるか、という一点です。
代表例を原文で見ておきます。2026年6月29日に第1回公募要領が公開された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、「以下の要件を満たす3~5年の事業計画に取り組むこと」を求めています。要件は3つあります。
1つ目は、付加価値額です。公募要領は「付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます」と定義しています。求められるのは「付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること」。年平均成長率とは、毎年ならして何%ずつ増えるか、という数え方です。
2つ目は、賃上げです。「一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること」。従業員1人あたりの給与を、毎年3.5%ずつ上げ続けるという意味になります。3年続ければ、1割強の増額です。
3つ目は、賃金の下限です。「事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること」。事業場内最低賃金とは、その事業場で最も時給の低い人の賃金のこと。地域別最低賃金は、都道府県ごとに決められた時給の下限です。いちばん安い人の時給でも、都道府県の下限より30円は高くしておく、という条件になります。
賃上げと賃金の下限には、見出しに「目標値未達の場合、補助金返還義務あり」と書かれています。
返し方まで決まっています。賃上げが届かなかった場合の返還額は、「補助金交付額×(1-(事業計画期間最終年度における一人当たり給与支給総額の年平均成長率/一人当たり給与支給総額目標値))」と定められています。
式が長いので、中身だけ言い直します。掲げた目標に対して実績が何割まで届いたかを出し、届かなかったぶんの割合を、そのまま交付額に掛けるという計算です。目標3.5%に対して実績が1.75%だったなら、届いたのは半分。交付額の半分を返すことになります。
賃金の下限を割った年があれば、「補助金交付額を事業計画期間の年数で除した額の返還」を求められます。3年計画なら、1年落とすたびに3分の1です。
しかも、目標値は自分で決めます。公募要領は「申請者自身で付加価値額基準値以上の目標値を設定し」と書いています。高い目標を掲げれば審査では評価されます。ただし、その同じ数字が、3年後には返還の計算式に入ります。
つまり、採択(審査に通ること)は終わりではありません。3〜5年にわたって要件を満たし続ける期間の始まりです。
通る計画と、通っても死ぬ計画を分けているのは、審査の巧拙ではなく、この約束に耐えられるかどうかです。
名前と実施機関
検索で使われる「新規事業進出補助金」は、制度名としては「新事業進出補助金」を指します。ただし、旧制度の中小企業新事業進出補助金は公募を終了しています。2026年8月25日時点で新規申請を受け付ける後継の正式名称は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。実施主体は中小企業基盤整備機構で、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資などを支援します。
事業再構築補助金も新規公募を終えています。そこで扱っていた「既存事業とは異なる市場へ進む設備投資」の受け皿は、新制度の新事業進出枠へ引き継がれました。ただし、自動的に移行できるわけではありません。事業再構築補助金を含む過去の補助金で交付決定を受けた事業者には、申請制限や重複事業の確認があるため、応募回の公募要領にある「申請の対象外となる事業者」を照合します。
旧制度名で探している場合は、検索語を新制度名に置き換え、過去の交付決定歴を先に一覧化する。 これだけで、古い公募要領を土台に計画を作る事故を減らせます。
誰が申請できるか|個人事業主・創業1年目
対象は中小企業・小規模事業者で、法人だけでなく個人事業主も対象に含まれます。一方で、①で見た付加価値額の要件は決算の実績を前提に組み立てられているため、決算期をまだ迎えていない創業直後の事業者は、申請できない回があります。自分が対象者の定義に入っているかは、応募する回の公募要領の「補助対象者」の節を原文で確かめてください。ここだけは要約ではなく原文です。
3つの枠と、金額の読み方
同じ制度でも、枠によって下限・上限・補助率が違います。
| 枠 | 補助上限額 | 補助率 | 補助下限額 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 従業員規模別に750万〜2,500万円。賃上げ特例適用時は850万〜3,500万円 | 中小企業1/2(地域別最低賃金引上げ特例で2/3)、小規模・再生事業者2/3 | 100万円 |
| 新事業進出枠 | 1〜20人2,500万円、21〜50人4,000万円、51〜100人5,500万円、101人以上7,000万円。賃上げ特例適用時は順に3,000万、5,000万、7,000万、9,000万円 | 中小企業1/2(地域別最低賃金引上げ特例で2/3) | 750万円 |
| グローバル枠 | 新事業進出枠と同じ規模別上限。通常最大7,000万円、賃上げ特例適用時最大9,000万円 | 2/3 | 750万円 |
賃上げ特例は、通常上限に自動で上乗せされる仕組みではありません。3〜5年の計画期間で、一人当たり給与支給総額を基本要件よりさらに年平均2.5%、合計で年平均6.0%以上増やし、事業場内最低賃金を基本要件よりさらに20円、合計で地域別最低賃金より50円以上高くする必要があります。両方を満たして特例の適用を受けた場合だけ使えるため、通常上限と特例込みの最大額を分けて資金計画を作ります。
*表の金額・補助率・下限は、2026-08-25時点の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金公式サイト・第1回公募要領で確認。公募回により変わるため、申請時は公式の公募要領を確認してください。*
最初に枠を決め、希望額が下限を超えるか、通常上限内で成立するかを確認する。 特例は計画の前提ではなく、追加条件に耐えられる場合の上振れとして扱います。
② 隣接する制度との違いを、訪問介護で切り分ける
補助金と助成金は、同じ「返済不要」でも入口が違う
補助金は、政策目的に沿った事業計画を公募し、予算の範囲で審査・採択する仕組みです。要件を満たしても採択されるとは限りません。助成金は厚生労働省の雇用関係制度に多く、雇用保険などの財源を背景に、定められた支給要件を満たすかが中心になります。ただし、助成金も審査がなく自動的に支給されるわけではありません。
どちらも原則として実施後の精算払いで、対象経費、実施期間、証拠書類の確認があります。違いは「補助金なら競争的な事業審査」「雇用系助成金なら労働者・雇用管理・賃金などの支給要件」が選択の起点になることです。
設備を買う話と、人を雇う・育てる話を別紙に分ける。 前者は経産省系補助金、後者は厚労省系助成金から探すと、制度の取りこぼしが減ります。
具体例で見たほうが早いので、訪問介護事業所の例をひとつ挙げます。
利用者を40人ほど抱え、ヘルパーが20人前後、通院の送り迎え(通院等乗降介助)のために軽自動車を3台動かしている訪問介護事業所。訪問記録は紙とスマートフォンの併用です。月末の請求業務は、事務が2人がかりで片づけています。
管理者がやりたいのは、送迎の配車表と訪問記録の一本化です。ここまでは、どの制度でも説明できます。
ところが、この事業所が制度を探すと、まず法人格で止まることがあります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領には、対象者の説明の直後に「医療法人及び法人格のない任意団体は補助対象外です」と書かれています。
対象として並んでいるのは、会社または個人、企業組合などの組合、特定非営利活動法人、農事組合法人です。介護の事業所は法人格が多様なので、ここは最初に見る場所になります。
規模の線も先に確認します。サービス業なら、資本金5,000万円以下または常勤従業員100人以下。この制度が中小企業者と呼ぶ範囲です。
次に止まるのが、賃上げの約束です。訪問介護の登録ヘルパー(事業所に登録し、訪問ごとに働くヘルパー)の時給は、地域別最低賃金のすぐ上に置かれていることが少なくありません。
「地域別最低賃金より30円以上高い水準」を3〜5年にわたって毎年満たす。この条件は、訪問介護では紙の上の数字ではなく、人件費の設計変更そのものになります。
さらに、新事業進出枠には、そもそも申請できない事業者の並びがあります。「新規設立・創業後1年に満たない事業者」がそれです。
加えて、「新事業進出」とは認められない例も列挙されています。「既存の製品等と対象とする市場が同一である場合」、「単なるメニューの追加と考えられる場合」、「既存の製品等の製造量又は提供量を増大させる場合」。いまと同じ客層に、いまの延長線上のものを、いまより多く出す。それは新しい市場への進出ではない、という線引きです。
ここが分かれ目になります。いまの訪問介護の効率を上げる話は、新市場への進出ではありません。 同じ機器を入れるにしても、出す制度が変わります。
もうひとつ、締切より前に必要な準備期間があります。電子申請の準備期間です。
国の主要な制度は電子申請だけで受け付けます。そのために要るのが、GビズIDプライムアカウントです。GビズIDは「すべての事業者を対象とした共通認証システム」で、1つのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできます。3種類あるアカウントのうち、「審査を行って作成」するのはプライムだけです。公式サイトも「時間がかかる場合があります」と注記しています。
都道府県の制度でも、入口で用意するものがあります。大阪府は、本申請の前に「事前エントリー」という予約にあたる手続きを置いていました。その案内には、「事前エントリーの際には申請機器の見積書が必要となります」と書かれています。つまり、計画を書き始める前に、機器を選んで販売店から見積書をもらっておく必要があります。受付期間は年度により変わるため、府の募集要領で確認します。
書類を書き始める前に必要な準備期間を、締切から引いておく。 この期間を見込んでいないと、書ける計画でも間に合いません。
採択後の流れ|交付申請から実績報告、精算まで
採択の通知は、お金が振り込まれる合図ではありません。流れはどの制度もおおむね共通です。
- 採択 → 交付申請 → 交付決定 — 経費の内訳をここで確定させる。交付決定より前に発注・契約した経費は原則対象外
- 補助事業の実施 — 計画どおりに投資と事業を進める
- 実績報告 → 確定検査 → 精算払い — 補助金は後払い。実施中の支出は自己資金か融資でつなぐ必要がある
- 事業化状況報告 — 交付後も数年にわたり、毎年の報告義務が続く。①で見た「3〜5年の約束」はここで測られる
公募は年に複数回に分けて行われ、回ごとに締切と要領が更新されます。スケジュールと様式は必ず、その回の公式ページで確認してください。
後払いを支える候補は、手元資金だけではありません。日本政策金融公庫の創業・設備資金、民間金融機関の融資、金融機関や資金調達事業者が提供する短期資金があります。補助金の採択実績や、金融機関が確認した事業計画は、融資審査で事業の説明材料になり得ます。ただし、採択は融資を保証しません。
補助対象経費の支払月ごとに資金繰り表を作り、入金までの最大残高を融資相談へ持ち込む。 採択後に資金を探すより、申請段階でつなぎ資金の上限を決めるほうが安全です。
③ 補助金を6つの型に分類する
制度は名前で覚えるより、何を買うために作られた制度かで分けたほうが早く決まります。以下の6類型で整理します。
新市場進出型。 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。名前のとおり、新事業進出とものづくり商業サービスをひとつにまとめた制度で、事務局は中小機構から委託を受けた複数の団体の共同体(コンソーシアム)が担っています。窓口も様式も、従来の2制度とは別のものになりました。
枠は3つあります。「革新的新製品・サービス枠」、「新事業進出枠」、「グローバル枠」。既存事業と異なる市場へ出るときの設備を、まとまった額で支える設計です。
省力化型。 中小企業省力化投資補助金です。公式サイトは目的を「人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援します」と説明しています。
中身は2つに分かれます。一般型は「企業ごとに最適な省力化設備の導入を支援」する形で、「詳細な事業計画の作成が必要」です。カタログ注文型は「カタログに掲載された設備を選んで導入」する形で、「販売事業者が、省力化製品の導入と補助金申請・手続きをサポート」します。
一般型は、労働生産性の年平均成長率4.0%以上などを含む3〜5年の事業計画が必要です。通常上限は従業員5人以下750万円、6〜20人1,500万円、21〜50人3,000万円、51〜100人5,000万円、101人以上8,000万円。大幅賃上げ特例の要件を満たす場合だけ、順に1,000万、2,000万、4,000万、6,500万、1億円へ上がります。補助率は中小企業1/2、小規模・再生事業者2/3で、1,500万円を超える部分などには別の率が適用されます。カタログ注文型は販売事業者と共同申請する仕組みで、受付方法と上限は公式サイトの最新条件を確認します。
デジタル型。 デジタル化・AI導入補助金です。旧IT導入補助金にあたり、「IT導入支援事業者」を通じた申請が前提になります。
中小企業庁の資料は、「補助金申請者は、事務局に登録された『IT導入支援事業者』(ITツールを提供するベンダー)からのサポートを受けて申請する」と説明しています。ここでいうベンダーとは、ITツールの販売会社などのことです。補助金の申請者は、審査を通って登録された事業者の中から1社を選びます。
ソフトウェアの購入に加えて、クラウド(インターネット経由で使う仕組み)の利用料が最大2年分まで対象に入ります。介護ソフトや記録アプリのように、月々払いで使う道具と相性がよい制度です。
枠は通常枠だけではありません。インボイス枠には会計・受発注・決済ソフトとPC・レジ等を扱う類型、発注者が受注者へアカウントを無償提供する電子取引類型があります。ほかにセキュリティ対策推進枠、商店街や複数事業者が連携する複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。複数者連携枠は基盤導入費と消費動向等分析費の合計上限3,000万円に、事務費・専門家費等が最大200万円加わる構造です。インボイス対応類型は対象経費により補助率が最大4/5になります。
IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者は、申請枠や経過期間による制限、賃上げ計画の策定・従業員への表明が必要になる場合があります。過去の交付決定番号をIT導入支援事業者へ渡してから、使える枠を絞ります。
販路開拓型。 小規模事業者持続化補助金です。「商工会や商工会議所の伴走支援を受けながら、経営者自らが策定した経営計画に基づき」販路開拓や業務効率化に取り組む制度です。伴走支援とは、計画づくりから実行まで継続して助言を受けることです。
申請要件そのものに「商工会または商工会議所の伴走支援を受けていること」が入っています。
一般型の通常枠は上限50万円、補助率2/3が基本です。インボイス特例は50万円を上乗せし、賃金引上げ特例など対象回の特例を組み合わせると上限が上がります。創業型は、認定市区町村などの特定創業支援等事業による支援と開業が、公募要領で定める期間内にある小規模事業者向けです。上限200万円にインボイス特例50万円を加えられる場合があります。締切は回により変わります。
このほか、災害支援枠、地域の支援機関が面的な販路開拓を支える共同・協業型、商工会・商工会議所の内部組織向けのビジネスコミュニティ型があります。名称が似ていても申請主体が違うため、1社の販路開拓なら、まず一般型か創業型から確認します。
賃上げ連動型。 厚生労働省の業務改善助成金です。「事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度」と定義されています。
令和8年度は、時給をいくら引き上げるかに応じて、50円・70円・90円の3コースに再編されました。対象の条件には「事業場内最低賃金が、令和8年度地域別最低賃金未満であること」が入ります。申請は事業場ごとです。
助成率は事業場内最低賃金1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4。上限は引上げ額と対象労働者数で30万〜600万円です。申請期限は、地域別最低賃金の発効日の前日または年度の案内で定める最終日のいずれか早い日という設計で、具体日は公式要領で確認します。令和8年度の中央最低賃金審議会の目安は全国加重平均で55円引上げ、目安どおりなら1,176円です。これは確定額ではなく、都道府県労働局長の決定前の目安です。
分野特化型。 都道府県が募集している介護テクノロジー導入支援事業です。国の実施要綱は令和8年4月7日付の通知で示され、「本事業の実施主体は、都道府県とする」と定められています。
対象は広い。「介護保険法に基づくサービスを提供する全てのサービス事業所(訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を含む。)」と明記されています。
補助率は4/5です。補助率とは、かかった費用のうち補助で賄われる割合のこと。ただし機器の区分ごとに基準額が置かれていて、実際にかかった額の4/5と、その基準額とを比べ、少ないほうが補助されます。高い機器を選んでも、基準額を超えた分は自己負担になるということです。
補助の対象になる機器は、福祉用具情報システム(TAIS)で「介護テクノロジー」として選定されたものが基本です。TAISは、テクノエイド協会が国内の福祉用具メーカーや輸入事業者から情報を集めて公開しているデータベースです。
この6つの外側にも、2つあります。中小企業成長加速化補助金は、売上高10億円以上100億円未満で「100億宣言」を公表した中小企業などを対象に、大規模投資を最大5億円・補助率1/2で支える制度です。事業承継・M&A補助金は、事業承継促進、専門家活用、廃業・再チャレンジ、PMI推進の4枠があり、専門家活用枠には小規模売り手支援類型もあります。公式要領で確認できる例では、小規模売り手支援類型は上限450万円・補助率2/3、PMI専門家活用類型は上限150万円・補助率1/2、PMI事業統合投資類型は通常上限800万円、廃業・再チャレンジ枠の単独申請は上限300万円・補助率2/3です。金額と募集枠は公募回により変わります。どちらも、訪問介護の1事業所が最初に触る制度ではありません。
創業期の受け皿|自治体の創業助成と移住・起業の支援金
創業直後なら、自治体が受け皿になることがあります。東京都の創業助成事業は、都内で創業予定または創業5年未満の事業者を対象に、上限400万円・下限100万円、助成率2/3で、賃借料、広告費、人件費、市場調査費などを支援します。指定された創業支援事業の利用などが要件で、Jグランツから申請します。地方では、地域課題に沿う起業支援金や、東京圏からの移住と就業・起業を組み合わせた移住支援金があり、代表的な上限は起業支援金200万円、移住支援金は世帯100万円に子ども加算という設計です。実施の有無と額は自治体ごとに違います。
人を雇うなら|厚生労働省の雇用系助成金
人を雇う事業なら、厚生労働省の雇用系助成金も横に置きます。有期雇用労働者等の正社員化・処遇改善にはキャリアアップ助成金、新事業に必要な訓練やリスキリングには人材開発支援助成金、就職困難者の試行雇用にはトライアル雇用助成金、雇用管理や職場環境の改善には人材確保等支援助成金があります。設備費ではなく、人と雇用管理の要件から選ぶ制度です。
賃上げには税制という選択肢もある
賃上げには補助金以外の選択肢もあります。中小企業向け賃上げ促進税制は、給与等支給額の増加分の一部を法人税または所得税から控除する制度で、対象事業年度と上乗せ要件によって控除率が変わります。2026-08-25時点の公式ガイドでは最大45%となる対象期間がありますが、税額控除には法人税額・所得税額に対する上限があります。
研究開発なら|NEDOと民間財団の助成
さらに、研究開発型スタートアップにはNEDOの支援、技術開発には民間財団の助成があります。三菱UFJ技術育成財団の研究開発助成は、1プロジェクト300万円以内かつ対象費用の1/2以下で、助成決定後の前払いです。助成財団センターの助成・奨学金情報検索とあわせて、公的補助金とは異なる資金源を探す入口になります。
設立年、所在地、雇用、研究開発の4列を加えた制度一覧を作る。 国の設備補助金で対象外でも、自治体・雇用系・税制・民間助成へ横にずらせます。
採択率と、社会情勢による加点の読み方
採択率は制度の難易度を固定的に示す数字ではなく、公募回ごとの申請数と採択数の結果です。公式発表で確認できる実数として、中小企業省力化投資補助金事務局の採択結果では、一般型の第1〜5回合計9,879件の申請に対して6,508件採択で、約65.9%です。事業承継・M&A補助金事務局の公表では、13次公募が481件中293件、約60.9%でした。枠の構成と母集団が違うため、制度間をそのまま比べる数字ではありません。成長加速化補助金は、確認できた公式発表から同じ定義の申請数・採択数を確定できなかったため、採択率を記載していません。
審査軸は社会情勢でも動きます。中東情勢や原材料高の影響を受ける事業者への優先採択・加点方針が公募要領に加わることがあり、別系統では日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、信用保証協会のセーフティネット保証5号、都道府県の緊急対策助成が用意されます。対象業種、売上減少、影響を示す資料の条件は制度ごとに確認します。
採択率ではなく、応募する回の加点項目と緊急支援策を1ページに並べる。 過去の平均より、現在の影響を証明できるかのほうが申請判断に効きます。
6制度を同じ列で比較する

優劣ではなく、目的で選ぶための表です。 各類型に「◎」を1つずつ置いてあります。
| 類型 | 制度の名前 | 公募元 | 上限と率 | 強い軸(◎) |
|---|---|---|---|---|
| 新市場進出型 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 中小企業庁・中小機構 | 新事業進出枠は通常2,500万〜7,000万円、特例適用時3,000万〜9,000万円。下限750万円、補助率1/2(特例2/3) | ◎ 既存と違う市場へ出るとき |
| 省力化型 | 中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型) | 中小企業庁・中小機構 | 一般型の通常上限750万〜8,000万円。大幅賃上げ特例適用時1,000万〜1億円。補助率は原則1/2または2/3 | ◎ 人手不足を機械で埋めるとき |
| デジタル型 | デジタル化・AI導入補助金 | 中小企業庁 | 通常枠は5万〜450万円、原則1/2。インボイス枠等は別上限・率 | ◎ 記録と請求をソフトで回すとき |
| 販路開拓型 | 小規模事業者持続化補助金 | 商工会・商工会議所 | 一般型通常枠50万円、創業型200万円。インボイス特例は50万円上乗せ、補助率原則2/3 | ◎ 小さく1本目を出すとき |
| 賃上げ連動型 | 業務改善助成金 | 厚生労働省 | 上限600万円、助成率3/4または4/5 | ◎ 時給の底上げと同時に機器を入れるとき |
| 分野特化型 | 介護テクノロジー導入支援事業 | 都道府県 | 補助率4/5、機器の区分ごとに基準額 | ◎ 介護の現場機器をまとめて入れるとき |
*表の上限・下限・補助率は2026-08-25時点。各制度の公式サイト・公募要領で確認した値だけを記載しています。締切と公募回は変わるため、公式の公募要領で確認してください。介護テクノロジー導入支援事業の基準額は都道府県の募集要領を優先します。*
通ったあとに約束させられるものは、制度ごとにまったく違います。新市場進出型は、付加価値額4.0%、給与総額3.5%、最低賃金プラス30円の3つを3〜5年にわたって毎年満たすこと。賃上げ連動型は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げることが約束の中身そのものです。分野特化型は、都道府県の実施要綱がそのまま約束になります。
公募日程は回により変わります。交付決定とは、補助対象と金額が正式に決まることです。受付中に公募要領が更新されることもあるため、日付を他所の記事からコピーせず、申請する回の公式ページで確認します。
併願・併用のルール
複数制度への併願はできますが、同じ設備・同じ請求書など、同一経費への国費の重複受給はできません。別の経費や別の事業で併用できる場合も、各制度の重複申請・他の助成との調整規定が優先します。制度ごとに経費、発注、支払、成果物を分けて管理できない組み合わせは避けます。
書類不備で落ちる実例と防ぎ方
内容以前の不備もあります。添付書類をPDFにしていない、現在事項・履歴事項など登記情報の種類が違う、指定された税目や期間の納税証明書ではない、ファイル名・添付欄が違う、パスワード付きで事務局が開けない、といった例です。
制度を探す入口|ミラサポplusとJ-Net21
制度を探す入口には、ミラサポplusとJ-Net21の支援情報ヘッドラインが使えます。候補が見つかったら、ポータルの要約ではなく実施機関の公式ページへ移り、公募要領、交付規程、FAQ、更新履歴を一組で保存します。
経費ごとに「制度名・見積書・発注日・支払日・証憑」の台帳を1行ずつ作り、提出前に別の担当者が添付ファイルを開く。 併用の重複と書類不備を同じチェックで潰せます。
④ この記事では、計画を作る相手を語ります
6制度の違いが分かったところで、論点を一段絞ります。ここから扱うのは、制度を決めたあとに事業計画を誰と作るかです。
書式を整える支援と、事業の中身を確かめる支援は同じではありません。後者を含む6つ目の類型まで、同じ表で比べます。
⑤ どの制度にも強みがある。それでも計画づくりは別に考える

表の「◎」は、その制度が他より偉いという印ではありません。他の制度では代わりが利かない一点を示しています。
小規模事業者持続化補助金の上限は50万円で、6つの中では最も小さい。それでも、商工会・商工会議所の伴走が申請要件に組み込まれている制度は他にありません。書き方を教わりながら1本目を書き切るという体験は、次の制度に出るときの資産になります。
業務改善助成金は、機器を入れることではなく賃金を上げることが主目的の制度です。
線引きははっきりしています。助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場なら4/5、1,050円以上なら3/4。いまの時給が低い事業場ほど、国が多く出す設計です。賃上げをやると決めているなら、この制度より効率のよい入口はありません。
介護テクノロジー導入支援事業は、国が一律に配る制度ではありません。地域に近い都道府県が運用するので、対象も、介護の現場で実際に使われている機器に絞られています。
国の制度は業種を選びません。そのぶん、審査で「なぜその機器なのか」を一から説明する必要があります。分野特化型では、その説明の大半を制度があらかじめ済ませています。
条件も、現場の運用に踏み込んでいます。機器を入れるだけでは足りず、「導入支援と一体的に行う業務改善支援」を受けることが要件です。
受け方は2つあります。「コンサルティング会社等による業務改善支援」を個別契約で受けるか、都道府県や国が用意する研修を受講するか。個別契約を選んだ場合は、そこにかかった費用も補助の対象に入ります。機器を入れる前の「事前評価(課題抽出)」から、入れたあとの「事後評価(導入後の定着支援を含む)」までが範囲です。
ただし、除かれるものが明記されています。「メーカーや販売店等による機器の操作説明は対象としないこととする」。売り手の説明会は、業務改善支援には数えません。
介護ソフトの条件も細かい。訪問介護のような居宅サービス事業所が介護ソフトを申請する場合、申請対象の製品に条件が付きます。「ケアプランデータ連携標準仕様」に準じたファイルの出力と取込の機能を持つことが求められます。
ケアプランデータ連携標準仕様とは、ケアプランや月々の実績を、事業所どうしがデータのまま受け渡しできるように国が定めた共通の書式です。いまFAXと紙で回している部分にあたります。ソフトそのものがこの条件に合っていなければ、計画の中身に関係なく外れます。
一方で、この分野特化型には、他の5つには無い制約があります。予算が先に決まっている、という制約です。
大阪府の令和8年度の募集要領には、はっきり書かれています。「事前エントリーの総額が府の予算額を上回る場合、抽選によって交付申請の対象とする介護サービス等事業所を絞り込みます」。
しかも事前エントリーについては、「この段階では申請内容の審査は行っておりません」とも書かれています。
計画の出来と関係なく、くじで外れることがある。 これを知らずに1つの制度の採択を前提に事業の予定を立てると、結果発表の月に計画ごと止まります。
兵庫県は、令和8年8月6日にさらに踏み込んだ案内を出しています。「申請見込総額が予算額を超過しております」としたうえで、扱いを過去の受給歴で分けました。
これまで介護テクノロジー導入支援事業の補助を受けたことがない事業所については、「厳正な抽選を行った上で、申請可能な事業所の選定を行います」。一方、すでに受けたことがある事業所については、「予算の都合により、補助対象外となります」と書かれています。去年通ったから今年も、という読みは効きません。
さらに兵庫県は「申請見込額調査書の提出がない事業所は、補助対象外となります」と明示していました。提出期限は年度により変わりますが、申請見込額調査書を事前に出していなければ、そもそも申請できません。
訪問介護のような居宅サービスには、もうひとつ条件が足されています。大阪府は令和8年7月3日に補助要件を変更し、「令和8年度中にケアプランデータ連携システムにおいてデータ連携の実績があること」を求めました。
念を押す一文まで添えられています。「導入だけでなく、実際に連携することを補助要件とします」。実績が確認できなければ、「既に今回導入する機器の代金をお支払いいただいた後であっても補助対象外となります」。
機器を買ったあとに要件を満たせないと、補助を受けられず、機器の代金が全額自己負担になります。 都道府県の制度は、こういう条件が年度の途中で追加されることがあります。
⑥ 計画を作る相手は、5つの類型で選べる
ここからが、実務でいちばん外しやすいところです。
多くの事業所は、制度を決めた次に「書いてくれる人」を探します。ところが公募要領は、外部支援者の使い方について、かなり強い言葉で線を引いています。
「申請者は事業計画の作成、実行及び成果目標の達成に責任を持って取り組んでいただく必要があります」。外部の人間に助言を求めること自体は、禁じられていません。禁止されているのは、外部の人間に事業計画の作成自体を任せることです。
続けて、こう書かれています。「必ず申請者自身で作成してください。作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります」。
電子申請にも同じ線引きがあります。「正当な事由なく、申請者自身による申請と認められない場合には、当該申請は不採択となります」。
外部の支援を受けた場合は、「事業計画作成支援者名」と「報酬(予定)額」を電子申請システムに記載することが求められます。名前を書かせる制度設計です。
避けるべき支援者の例まで列挙されています。「提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等を申請者に請求する」。「金額や条件が不透明な契約を締結する」。「作成支援者名を記載しないように求める」。
つまり制度は、代筆を買う相手ではなく、一緒に考える相手を選べと言っています。
審査で見られる中身も、書式の巧拙ではありません。書面審査の項目には、「これまでの事業活動や過去の取組との一貫性を有し、経営戦略上に明確に位置付けられたものであるか」とあります。
「補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか」、「第三者に過度に依存している事業ではないか」という項目も並びます。
さらに、「国からの補助がなくとも、申請者単独で容易に事業を実施できるものではないか」という一文まであります。簡単にできる事業は、そもそも評価されません。
そう読んだうえで、計画を一緒に作る相手を5つ並べます。
商工会・商工会議所。 全国に窓口があり、経営計画づくりの伴走を受けられます。持続化補助金では、この伴走そのものが申請要件です。
認定経営革新等支援機関。 中小企業の経営支援について、国が一定の水準を認めた機関のことです。会計事務所、税理士法人、金融機関などが認定を受けています。決算書の数字と事業計画の数字をつなぐ力には、確かな定評があります。
審査項目には「金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか」という一文があります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でも、金融機関から資金を得る場合は確認書の提出が求められます。ここは認定経営革新等支援機関の土俵です。
中小企業診断士と、申請支援の専門会社。 公募要領を読み込み、様式の抜けを潰し、締切までの段取りを引く仕事です。
加点項目——満たしていると審査で点が上乗せされる項目——だけでも数が多い。パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、健康経営優良法人、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定などが並びます。いずれも申請や公表を経て初めて手に入るもので、思い立った日には揃いません。しかも「加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります」という制約が付きます。
申請要件にも、時間のかかるものがあります。たとえばワークライフバランス要件は、「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること」。従業員の子育てや働き方について申請者が目標を立て、外部に公表する書類のことです。公募要領も「一般事業主行動計画の公表手続きには1~2週間程度の期間を要します」と注意しています。
加点項目を満たす手続きや一般事業主行動計画の公表を、締切から逆算して並べる仕事では、診断士と申請支援の専門会社がいちばん強い。
設備の販売事業者とIT導入支援事業者。 制度が、申請の当事者としてあらかじめ組み込んでいる存在です。
省力化投資補助金のカタログ注文型では、「販売事業者と共同で交付申請」する流れになっています。デジタル化・AI導入補助金も、IT導入支援事業者を通じた申請が前提です。買うものが決まっているときの速さは、他の追随を許しません。
戦略ファーム。 企業の経営戦略を専門に支援する会社です。マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループに代表される戦略ファームの市場分析力は、広く知られているとおりです。
新事業進出枠の審査には、「一般的な普及度や認知度が低いものであるか」を客観的なデータで示す論点があります。「高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであるか」を相場と比べて示す論点も入っています。市場の大きさと申請者の位置を第三者に説明する場面では、こうした分析の細かさが効きます。
もっとも、利用者40人の訪問介護事業所が直接依頼する相手ではありません。それでもここに並べているのは、「その市場は本当にあるのか」を外部の目で説明する仕事が、補助金の審査にも確かに存在するからです。
⑦ 手前味噌を承知で、6つ目の類型を同じ表に置く
6つ目の類型には運営会社のアルチェコが入るため、そこは手前味噌を承知のうえで書きます。
事業の中身から一緒に決めて、動くもの(実際に操作できる試作品)を先に作って確かめる類型です。 商工会・商工会議所から戦略ファームまでの5つは、いずれも「何をやるかは決まっている」ことを前提にしています。
買う機器が決まっている。進む市場が決まっている。決まっているなら、5つのどれかが最短です。
決まっていないときに残るのが6つ目です。審査項目には「ニーズの裏付け、選ばれる理由が整理されているか」という一文があります。ここでいうニーズとは、利用者が本当に必要としているものです。ニーズの裏付けと選ばれる理由を示す材料は、書類の中を探しても出てきません。実際に使う人に当たって集めるしかない。
| 類型 | 代表 | 何を一緒にやるか | 強い軸(◎) |
|---|---|---|---|
| 商工会・商工会議所 | 各地の商工会議所 | 経営計画づくりの伴走 | ◎ 無料で1本目を書き切る |
| 認定経営革新等支援機関 | 会計事務所・税理士法人・金融機関 | 決算と計画の接続 | ◎ 数字の裏付け |
| 診断士・申請支援の専門会社 | 独立の診断士事務所など | 公募要領の読み込みと段取り | ◎ 締切からの逆算 |
| 販売事業者・IT導入支援事業者 | カタログ注文型の販売事業者など | 制度に組み込まれた共同申請 | ◎ 手続きの簡素さ |
| 戦略ファーム | マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ | 市場規模と競争環境の分析 | ◎ 市場全体の分析力 |
| 事業の中身から作る側 | アルチェコ など | 使われるかを先に作って確かめる | ◎ 需要の一次データ |
アルチェコの行を消しても、この表は成立します。 この6つ目が要るのは、新市場進出型に出そうとしていて、その市場が本当にあるかを誰も確かめていない場合だけです。
強みは3つに絞ります。第一に、機器の話に入る前に需要を測ること。第二に、動くものを短期間で立ち上げて、実際に使われるかを見ること。第三に、その結果を計画の数字に戻すこと。
逆に、公募要領の様式を最も速く埋める仕事では、診断士や申請支援の専門会社にかないません。無料で伴走してくれる相手も、ここにはいません。
⑧ 現場では、立場・順番・申請条件が壁になる
同じ事業所の中でも、どの制度から見るべきかは立場で変わります。
| 立場 | 抱えている問題 | 先に見る類型 |
|---|---|---|
| 事業所の管理者 | 現場の機器とヘルパーの時給を同時に何とかしたい | 分野特化型と賃上げ連動型 |
| 法人の経営企画 | 訪問介護の外へ、事業をもう1本伸ばしたい | 新市場進出型と省力化型 |
| 事務・請求の担当 | 月末の請求を、人を増やさずに回したい | デジタル型 |
もっとも、これらはどれか一つしか選べない関係ではありません。順番の話であることが多い。
小規模事業者持続化補助金で1本目を書き切り、書き方を体で覚える。次に認定経営革新等支援機関と組んで、決算とつながる数字にする。
分野特化型で現場の機器を入れ、業務改善助成金で時給の底上げに手をつける。そのうえで、新しい市場へ出る計画を、実際に使われるかを確かめてから書く。
制度を確認する順番を意識すると、国の補助金への上乗せも拾えます。国の補助金の採択と交付の確定を受けた事業者に対して、自己負担の一部を上乗せで補助する制度を持つ都道府県があるからです。ある県と無い県があるので、まず自分の都道府県の産業支援サイトを見るのが早い。
たとえば熊本県は、国の主要な補助金を対象に、1件につき最大200万円まで上乗せする制度を令和9年(2027年)1月29日まで募集しています。ただし、条件に「パートナーシップ構築宣言を行ったこと」などが付きます。国の制度に出す前に、県の制度の条件も読んでおく。 順番を逆にすると、上乗せだけが取れません。
判断が割れたときに使う軸は、ひとつで足ります。
3〜5年後の報告のとき、その約束を守れているか。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、補助を受けた事業がその後どうなったかを毎年報告する事業化状況報告が、5年間続きます。中小機構の案内も、「採択=満額交付ではない(減額・対象外あり)」と注意しています。
機器の使い方にも縛りがあります。「補助事業により取得した財産は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります」。補助金で買った機器を既存事業に流用すれば、残存簿価相当額——帳簿の上でまだ残っている価値の分——の納付を求められます。
この軸で見ると、上限額の大小はほとんど意味を失います。 上限600万円の助成金を取って約束を守り切るほうが、上限2,500万円を取って3年目に返すより、事業としてはずっと強い。
出す前に確かめる7つの点

制度を選び終えたら、書き始める前に7つだけ確かめます。ここで落ちるものは、計画の中身を磨いても戻ってきません。
| 確かめること | 落ちる例 |
|---|---|
| 法人格 | 医療法人と法人格のない任意団体は補助対象外と明記されている |
| 規模 | サービス業は資本金5,000万円以下または常勤従業員100人以下 |
| 設立からの年数 | 新事業進出枠は創業1年に満たない事業者が対象外 |
| 電子申請の準備 | GビズIDプライムの取得に時間がかかる |
| 3〜5年の賃上げ | 一人当たり給与支給総額を年平均3.5%、事業場内最低賃金は地域別最低賃金プラス30円 |
| 公表が要る書類 | 一般事業主行動計画の公表手続きに1〜2週間程度 |
| 加点項目 | 申請締切日時点で満たしている必要がある |
7つのうち、上の4つは事実の確認です。事務の担当者が半日で終わらせられます。
下の3つは、事業の決定です。賃上げの約束は、経営者が決めるまで誰も代われません。
とはいえ、順番は逆にしないほうが速い。上の4つで落ちる制度を先に外してから、下の3つを考えます。書けない制度に賃上げの議論をしても、時間だけが減ります。
⑨ まとめ|通る計画と、死ぬ計画を分けるもの
6つの制度は、どれもその分野の本物です。表の「◎」の列が、そのまま各制度の持ち場になります。
どれを選んでも、間違いではありません。 間違いになるのは、通ったあとの3〜5年を読まずに出したときだけです。
大阪府の募集要領には、事前エントリーを通過した事業所に向けて、こう書かれています。「補助金額を減額して交付決定する、又は交付決定を行わないことがあります」。
国の制度にも、都道府県の制度にも、同じ構えがあります。出したあとにも審査は続いている。
だから、最初に決めるべきことは制度の名前ではありません。3年後の賃金台帳と決算書を思い浮かべ、そこに何を書けるようにしておくかを決めます。
書けるものが先にあって、制度はそれを速くするために選ぶ。順番はそれだけです。
最後に制度を選ぶのは、3年後に補助事業の報告書へ判を押す立場の人です。どの制度が自分の事業所に合うかを、いちばん知っているのもその人です。
⑩ この先は、制度名より更新単位を追う
2026年8月25日時点では、旧「中小企業新事業進出補助金」の公募は終了し、新規の受付先は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に移っています。ものづくり系と新市場進出系を一つの制度で扱う再編です。
一方、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は2026年3月に条件が改定され、受付期間や従業員規模別の上限が変わりました。デジタル化・AI導入補助金、業務改善助成金、介護テクノロジー導入支援事業も、年度・公募回・都道府県によって日付や条件が更新されます。
ここから先に確実に言えるのは、制度が固定された商品ではないということです。名称を覚えるより、応募する回の公募要領、公式サイトの更新履歴、所在地の都道府県の募集要領を一組で確認するほうが、制度変更に耐えられます。将来の補助率や次回公募は、公式発表が出るまで断定できません。
この記事を書いた会社について
アルチェコ(ARCHECO)は、UXデザイン(利用者の体験全体を設計すること)・AI開発・新規事業開発を組み合わせた事業共創スタジオです。大企業や中小企業と組んで、構想から動くものまでを一緒に作っています。
計画づくりの相手を並べた表で言えば、いちばん下の「事業の中身から作る側」にあたります。アルチェコは、新規事業の内容検討から試作品の開発までを担います。買うものが決まっているなら、「事業の中身から作る側」を除く5類型のいずれかに相談するほうが速いとお伝えしています。持続化補助金なら商工会議所、決算と結ぶなら認定経営革新等支援機関、様式を埋めるなら診断士や専門会社が最短です。
一方で、「新しい市場へ出る計画を書きたいが、その市場が本当にあるのか確かめていない」という段階なら、いちど話してみてください。書き始める前の相談がいちばん多いからです。
なお、本記事の要件・金額・日付は2026年8月25日時点で公式情報を再確認したものです。制度は改定されますので、申請前に各制度の公募要領と実施要綱の最新版を必ず確認してください。
⑪ 新規事業進出補助金のよくある質問
新規事業進出補助金とは何ですか?
旧制度の中小企業新事業進出補助金は公募を終了しています。2026年8月25日時点で新規申請を受け付ける後継は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。中小企業基盤整備機構が実施し、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資などを支援します。
個人事業主や創業1年目でも申請できますか?
個人事業主も対象に含まれます。ただし付加価値額の要件が決算実績を前提としているため、決算期を迎えていない創業直後の事業者は申請できない回があります。応募する回の公募要領の補助対象者の節を原文で確認してください。
新規事業進出補助金は、何を基準に選べばよいですか?
補助上限額ではなく、何を買うための制度かと、採択後に何を約束する制度かで選びます。新しい市場へ出るなら新市場進出型、人手不足を設備で補うなら省力化型、記録や請求をソフトで回すならデジタル型が候補です。介護の現場機器には分野特化型、時給の引き上げと設備投資を同時に行う場合には賃上げ連動型があります。最後は、3〜5年後の報告時にも条件を守れるかで判断します。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の主な要件は何ですか?
3〜5年の事業計画で、付加価値額の年平均成長率を4.0%以上増加させる見込みが求められます。一人当たり給与支給総額は年平均3.5%以上増加させ、事業場内最低賃金は地域別最低賃金より30円以上高い水準にする必要があります。新事業進出枠では、創業後1年に満たない事業者は対象外です。既存と同じ市場での単なるメニュー追加や提供量の増加も、新事業進出とは認められません。
新規事業進出補助金は、目標を達成できないと返還が必要ですか?
一人当たり給与支給総額や事業場内最低賃金の目標が未達の場合には、返還義務があります。給与支給総額が目標に届かなければ、目標に対する未達割合を交付額に掛けて返還額を計算します。事業場内最低賃金が条件を下回った年は、交付額を事業計画期間の年数で割った額の返還が求められます。申請者が自ら高い目標を設定すると、その数字が後の返還計算にも使われます。
訪問介護事業所には、どの補助金が向いていますか?
現場の介護機器をまとめて導入するなら、都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業が候補です。事業場内最低賃金の引き上げと設備投資を同時に行うなら業務改善助成金、記録や請求をソフトで効率化するならデジタル化・AI導入補助金を先に検討します。訪問介護の外へ新しい事業を伸ばす場合は、新市場進出型や省力化型が候補になります。法人格、地域ごとの募集条件、対象機器、採択後に守る要件まで確認して選ぶ必要があります。
補助金の申請前に確認すべきことは何ですか?
まず法人格、企業規模、設立からの年数を確認し、対象外になる制度を除きます。国の主要制度では電子申請にGビズIDプライムが必要で、取得に時間がかかる場合があります。都道府県の制度では、本申請より前の事前エントリーや機器の見積書が必要になることもあります。賃上げ、公表が必要な書類、加点項目も締切から逆算して準備します。
補助金の事業計画は、外部の専門家に作成してもらえますか?
事業計画は申請者自身が作成し、実行と成果目標の達成にも責任を持つ必要があります。外部から助言を受けることはできますが、作成自体を申請者以外が行うと、不採択や採択取消、交付決定取消の対象になります。支援を受けた場合は、支援者名と報酬予定額を電子申請システムへ記載します。商工会・商工会議所、認定経営革新等支援機関、診断士、販売事業者などから、計画の段階と必要な支援に合う相手を選びます。
