「生成AIを使う人は年収が高い」「生成AIを使えば年収が上がる」——こうした言説を見かける機会は増えましたが、大規模な一次データで裏づけられることは多くありません。株式会社ARCHECOが2026年に実施した「新規事業の生成AI利用 2万人実態調査」(n=20,000)を世帯年収(配偶者など本人以外の収入を含む、世帯単位の年収)別に集計すると、世帯年収が高い帯ほど、新規事業に関与している割合が高く、関与者が生成AIを週1回以上使う割合もおおむね高いという勾配が確認できました。この集計は第1回レポート公開後に行った、事前の分析計画にない探索的分析です。
とりわけ開きが大きいのは、新規事業の責任者として関与している割合です。世帯年収400万円台の4.2%に対し、2,000万以上では27.6%——約6.6倍(27.6%÷4.2%)でした。
ただし、この勾配は同一時点の相関(分布)であり、「生成AIを使えば年収が上がる」という因果関係は本調査からは言えません。本記事では実数の表をすべて公開したうえで、そう言えない理由まで解説します。
要点サマリー
- 直近3年に新規事業へ関与した回答者は全体の24.0%(20,000名中4,794名・およそ4人に1人)。関与率は世帯年収400万円台の14.7%に対し2,000万以上で41.4%
- 責任者としての関与率は4.2%(400万円台)→27.6%(2,000万以上)。11区分で一度も下がらずに上昇し、差は約6.6倍(27.6%÷4.2%)
- 関与者のうち生成AIを週1回以上使う割合は全体で66.4%。世帯年収別では400万円台の55.4%に対し、最高は1,200万~1,500万未満の75.3%。おおむね上昇傾向だが単調ではない
- 役職2区分(部長以上/課長以下)に分けても、それぞれの内側で世帯年収が高い区分ほど週1以上率が高い並びは残る
引用・転載について
本記事の数値・表は、出典を明記のうえ、報道・記事・SNS・社内資料などに自由にご利用いただけます(事前連絡不要)。出典表記は以下をコピーしてお使いください。
出典: 株式会社ARCHECO「新規事業の生成AI利用 2万人実態調査」(2026年・n=20,000) https://archeco.co.jp/ai-startup/report/ai-shintou-20000-2026/
調査概要
| 調査名 | 新規事業の生成AI利用 2万人実態調査 |
|---|---|
| 調査対象 | 全国の25〜69歳の会社員(正社員)・経営者/役員 |
| 有効回答 | 20,000名 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 調査期間 | 2026年8月17日〜19日 |
| 調査主体 | 株式会社ARCHECO |
本ページの数値は、いずれも回答者の回答(自己申告)に基づきます。回答者は自主参加型のオンラインパネルであり、役職構成は国内の就業者全体より管理職層が厚め(課長クラス以上が38.2%)です。本記事が行うのは、同一パネル・同一設問における世帯年収帯どうしの比較で、表の数値は独立した再計算による照合を行っています。
世帯年収データの範囲について: 本データの世帯年収は「400万~500万未満」から「2,000万以上」までの11区分のみで構成されています。400万円未満の帯や「答えたくない」等の選択肢はデータ中に存在せず、集計からの除外は0件です(世帯年収400万円以上を対象とした調査設計と解されます)。したがって本記事の分析範囲は、世帯年収400万円以上の回答者20,000名です。
本記事の用語: 「関与者」=直近3年に新規事業へ責任者またはメンバーとして関与した回答者/「責任者」=責任者として関与した回答者/「週1以上」=生成AIを「ほぼ毎日」または「週に数回」使う回答者/「ほぼ毎日」=「ほぼ毎日」を選択した回答者。
データ1: 回答者の世帯年収分布(11区分・n=20,000)
まず全体の分布です。最多は400万~500万未満の2,840名(14.2%)、2,000万以上は872名(4.4%)でした。1,500万円以上の3帯は回答者数が小さいため(717名・328名・872名)、以降の各表には率とあわせて分母nを併記しています。
| 世帯年収(昇順) | n | 構成比 |
|---|---|---|
| 400万~500万未満 | 2,840 | 14.2% |
| 500万~600万未満 | 2,712 | 13.6% |
| 600万~700万未満 | 2,375 | 11.9% |
| 700万~800万未満 | 2,284 | 11.4% |
| 800万~900万未満 | 1,767 | 8.8% |
| 900万~1,000万未満 | 2,077 | 10.4% |
| 1,000万~1,200万未満 | 2,280 | 11.4% |
| 1,200万~1,500万未満 | 1,748 | 8.7% |
| 1,500万~1,800万未満 | 717 | 3.6% |
| 1,800万~2,000万未満 | 328 | 1.6% |
| 2,000万以上 | 872 | 4.4% |
| 合計 | 20,000 | 100.0% |
データ2: 世帯年収が高い帯ほど、新規事業への関与率・責任者関与率が高い
直近3年に新規事業へ関与した回答者(関与者)は、全体で4,794名・24.0%——およそ4人に1人(分母は回答者20,000名)です。これを世帯年収帯別にみると、関与率は400万円台の14.7%に対し2,000万以上で41.4%。600万円台の22.2%と700万円台の22.0%がわずかに入れ替わる箇所を除けば、帯が上がるごとに高くなります。
より急な勾配を示すのが、責任者としての関与率です。400万円台の4.2%から2,000万以上の27.6%まで、11区分で一度も下がらずに上昇します。差は約6.6倍(27.6%÷4.2%)にあたります。責任者は全体で2,016名・10.1%で、分母はいずれも各帯の全回答者です。
| 世帯年収帯 | 分母n(全回答者) | 関与者n | 関与率 | 責任者n | 責任者関与率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万~500万未満 | 2,840 | 417 | 14.7% | 118 | 4.2% |
| 500万~600万未満 | 2,712 | 459 | 16.9% | 166 | 6.1% |
| 600万~700万未満 | 2,375 | 527 | 22.2% | 183 | 7.7% |
| 700万~800万未満 | 2,284 | 503 | 22.0% | 180 | 7.9% |
| 800万~900万未満 | 1,767 | 441 | 25.0% | 163 | 9.2% |
| 900万~1,000万未満 | 2,077 | 546 | 26.3% | 238 | 11.5% |
| 1,000万~1,200万未満 | 2,280 | 640 | 28.1% | 274 | 12.0% |
| 1,200万~1,500万未満 | 1,748 | 523 | 29.9% | 252 | 14.4% |
| 1,500万~1,800万未満 | 717 | 258 | 36.0% | 128 | 17.9% |
| 1,800万~2,000万未満 | 328 | 119 | 36.3% | 73 | 22.3% |
| 2,000万以上 | 872 | 361 | 41.4% | 241 | 27.6% |
| 全体 | 20,000 | 4,794 | 24.0% | 2,016 | 10.1% |
データ3: 関与者が生成AIを週1回以上使う割合は、55.4%から70%台へ——ただし単調ではない
次に、生成AIの利用頻度です。次の表の分母は各帯の関与者(新規事業に関与した回答者)で、非関与者の利用頻度は本記事では集計していません。関与者全体では、週1回以上使う人が3,184名・66.4%、「ほぼ毎日」が1,609名・33.6%です。
世帯年収帯別では、週1以上率は400万円台の55.4%から上昇し、最高は1,200万~1,500万未満の75.3%でした。ただし単調ではありません。900万円台(67.0%)、1,500万~1,800万未満(72.1%)、2,000万以上(72.3%)では直前の帯を下回っており、1,200万円以上の各帯はおおむね70%台で推移します。「ほぼ毎日」率も同様に上下動を伴いますが、最も低い500万円台の24.0%から、最も高い1,800万~2,000万未満の52.1%(n=119)まで、高年収帯ほど高い水準にあります。
| 世帯年収帯 | 分母n(関与者) | 週1以上n | 週1以上率 | ほぼ毎日n | ほぼ毎日率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万~500万未満 | 417 | 231 | 55.4% | 105 | 25.2% |
| 500万~600万未満 | 459 | 267 | 58.2% | 110 | 24.0% |
| 600万~700万未満 | 527 | 329 | 62.4% | 144 | 27.3% |
| 700万~800万未満 | 503 | 328 | 65.2% | 157 | 31.2% |
| 800万~900万未満 | 441 | 297 | 67.3% | 152 | 34.5% |
| 900万~1,000万未満 | 546 | 366 | 67.0% | 184 | 33.7% |
| 1,000万~1,200万未満 | 640 | 436 | 68.1% | 208 | 32.5% |
| 1,200万~1,500万未満 | 523 | 394 | 75.3% | 217 | 41.5% |
| 1,500万~1,800万未満 | 258 | 186 | 72.1% | 99 | 38.4% |
| 1,800万~2,000万未満 | 119 | 89 | 74.8% | 62 | 52.1% |
| 2,000万以上 | 361 | 261 | 72.3% | 171 | 47.4% |
| 全体 | 4,794 | 3,184 | 66.4% | 1,609 | 33.6% |
1,500万円以上の3帯は関与者数が小さく(258名・119名・361名)、率の上下動には偶然の揺らぎが含まれ得ます。
この勾配は「役職」で説明されるのか
世帯年収と生成AI利用頻度の勾配をみたとき、まず思い浮かぶ説明候補は役職です。世帯年収の高い帯には役職の高い回答者が多く、役職の高い層は業務で生成AIに触れる機会が多い——この経路だけで勾配が生まれている可能性があります。そこで、関与者を役職2区分(部長以上=経営者・役員+部長/課長以下=課長+係長・主任+一般)×世帯年収4区分に分けて、週1以上率を集計しました(全8セルでn≥50)。
| 役職 | 世帯年収 | 分母n(関与者) | 週1以上n | 週1以上率 |
|---|---|---|---|---|
| 部長以上 | 400万~600万未満 | 217 | 130 | 59.9% |
| 部長以上 | 600万~1,000万未満 | 717 | 498 | 69.5% |
| 部長以上 | 1,000万~1,500万未満 | 572 | 410 | 71.7% |
| 部長以上 | 1,500万以上 | 487 | 349 | 71.7% |
| 課長以下 | 400万~600万未満 | 659 | 368 | 55.8% |
| 課長以下 | 600万~1,000万未満 | 1,300 | 822 | 63.2% |
| 課長以下 | 1,000万~1,500万未満 | 591 | 420 | 71.1% |
| 課長以下 | 1,500万以上 | 251 | 187 | 74.5% |
観察できたのは2点です。まず、役職2区分のどちらの内側でも、世帯年収が高い区分ほど週1以上率が高い並びは残りました(部長以上: 59.9%→69.5%→71.7%→71.7%/課長以下: 55.8%→63.2%→71.1%→74.5%)。この粗い分解の範囲では、勾配は役職だけでは消えていません。
もう1点、同一の世帯年収区分内での役職差は一様ではありません。1,000万円未満の2区分では部長以上が課長以下を上回りますが、1,000万~1,500万未満ではほぼ並び(71.7%と71.1%)、1,500万以上では課長以下(74.5%)が部長以上(71.7%)を上回る逆転がみられます。
ただし、役職2区分は粗い分解であり、企業規模・業種・職種・部門など、世帯年収と利用頻度の双方に関連しうる他の要因は一切調整していません。この分解から「何が勾配を生んでいるか」は特定できません。
参考: 役職5区分の詳細表(回答者数が小さいため参考値)
役職5区分に分けた詳細は次のとおりです。セルあたりの回答者数が小さい参考値で、※はn<50のセルです。
| 役職 | 世帯年収 | 分母n(関与者) | 週1以上n | 週1以上率 |
|---|---|---|---|---|
| 経営者・役員 | 400万~600万未満 | 88 | 44 | 50.0% |
| 経営者・役員 | 600万~1,000万未満 | 208 | 122 | 58.7% |
| 経営者・役員 | 1,000万~1,500万未満 | 181 | 109 | 60.2% |
| 経営者・役員 | 1,500万以上 | 236 | 143 | 60.6% |
| 部長 | 400万~600万未満 | 129 | 86 | 66.7% |
| 部長 | 600万~1,000万未満 | 509 | 376 | 73.9% |
| 部長 | 1,000万~1,500万未満 | 391 | 301 | 77.0% |
| 部長 | 1,500万以上 | 251 | 206 | 82.1% |
| 課長 | 400万~600万未満 | 192 | 113 | 58.9% |
| 課長 | 600万~1,000万未満 | 561 | 392 | 69.9% |
| 課長 | 1,000万~1,500万未満 | 338 | 256 | 75.7% |
| 課長 | 1,500万以上 | 150 | 124 | 82.7% |
| 係長・主任 | 400万~600万未満 | 197 | 114 | 57.9% |
| 係長・主任 | 600万~1,000万未満 | 428 | 262 | 61.2% |
| 係長・主任 | 1,000万~1,500万未満 | 137 | 90 | 65.7% |
| 係長・主任 | 1,500万以上 | 60 | 37 | 61.7% |
| 一般 | 400万~600万未満 | 270 | 141 | 52.2% |
| 一般 | 600万~1,000万未満 | 311 | 168 | 54.0% |
| 一般 | 1,000万~1,500万未満 | 116 | 74 | 63.8% |
| 一般 | 1,500万以上 | 41 | 26 | 63.4% ※ |
参考表では、経営者・役員の週1以上率がどの世帯年収区分でも50.0〜60.6%と、部長(66.7〜82.1%)・課長(58.9〜82.7%)より低い水準にとどまる点も観察されます。
なお、年齢と世帯年収・生成AI利用の関係は、続報の記事で扱います(本記事では集計していません)。
「生成AIを使えば年収が上がる」とは言えない理由
ここまでの勾配を根拠に「だから生成AIを使えば年収が上がる」と結論づけることは、次の理由からできません。
- 同一時点のデータであること。本調査は一時点のインターネット調査で、利用と収入のどちらが先かという前後関係を観察していません。
- 逆方向の経路がありうること。世帯年収の高い層には管理職・経営層が多く、新規事業に関与する機会や業務で生成AIを使う機会が多い——利用が収入を押し上げるのではなく、収入・役職と結びついた業務環境が利用を増やす経路でも、同じ分布は生まれ得ます。本調査ではこの2つを区別できません。
- 第三の要因を調整していないこと。企業規模・業種・職種・部門・年齢など、世帯年収と利用頻度の双方に関連しうる要因を本記事は調整していません(役職2区分の分解のみ行いました)。
- 世帯年収であること。本人の稼得の指標としては粗く、「生成AIスキルの対価」を測る変数ではありません。
- 自己申告であること。数値はすべて回答者の回答に基づきます。
本調査のデータで言えるのは、「世帯年収の高い帯ほど、新規事業への関与率・責任者関与率が高く、関与者の生成AI高頻度利用率もおおむね高い」という分布の事実までです。生成AIを使うことが収入を押し上げるのか、その逆か、双方に共通する要因があるのか——因果関係は特定できません。「使えば上がる」と断定する言説にも、「無関係だ」と断定する言説にも、このデータは根拠を与えません。
よくある質問
生成AIを使えば年収は上がりますか?
本調査からは言えません。本記事の数値は同一時点の相関(分布)であり、生成AI利用が年収を押し上げるのか、年収や役職が高い層ほど業務で生成AIを使う機会が多いのか、双方に共通する要因があるのかを区別できません。因果関係は特定できません。
本記事の「約6.6倍」とは、何と何を比べた数字ですか?
新規事業の責任者として関与している割合(責任者関与率)の世帯年収帯による差です。世帯年収400万~500万未満では4.2%(2,840名中118名)、2,000万以上では27.6%(872名中241名)で、27.6%÷4.2%=約6.6倍です。生成AIの利用率の差ではありません。分母は各帯の全回答者です。
この調査の「年収」は本人の年収ですか?
いいえ、世帯年収です。配偶者など本人以外の収入も含むため、本人の給与水準そのものではありません。また本データの世帯年収は400万円以上の11区分のみで構成され、400万円未満の層は含まれていません。
生成AIをよく使うのはどんな人ですか?
本調査で観察できた範囲では、直近3年に新規事業へ関与した回答者のうち生成AIを週1回以上使う割合は66.4%(4,794名中3,184名)で、世帯年収の高い帯ほど高い傾向がありました(400万円台55.4%、最高は1,200万~1,500万未満の75.3%)。これは新規事業関与者に限った同一時点の分布であり、就業者全体の傾向を示すものではありません。
この記事の調査データや表は引用・転載できますか?
はい。出典(株式会社ARCHECO「新規事業の生成AI利用 2万人実態調査」(2026年・n=20,000)とページURL)を明記いただければ、報道・記事・SNS・社内資料などに事前連絡不要でご利用いただけます。
関連リンク
本記事の元データ(設問別・全回答分布・回答者属性)は、第1回「新規事業の生成AI利用 2万人実態調査」本編で公開しています。当社の公開調査の一覧は調査レポートをご覧ください。