
# 新規事業の成功率は何%か|公開統計と実測データで検証
新規事業の成功率は、公表統計を確かめると「7%」から「約45%」まで、調査によって6倍以上ひらいています。よく引用される「成功率10%」「千三つ」に、確かめられる出典はありません。数字が違うのは、事業の実力が違うからではなく、誰を数え(母集団)、何を成功と呼び(定義)、いつ測ったか(期間)が違うからです。
この記事では、一次資料まで遡って確認できた公表統計だけを、母集団・定義・期間つきの早見表で並べます。そのうえで、同じ1つの事業が定義次第で「成功」にも「失敗」にも数えられることを事例で示し、成功率という指標の欠陥と使い方まで整理します。統計は年1回、最新の公表値に更新します(最終確認: 2026年9月)。
① 新規事業の成功率は何%か — 公表統計の早見表


統計の数字を確認済みの方は、② 同じ事業が「成功」にも「失敗」にも数えられるから読み進められます。
まず、2026年9月時点で一次資料にあたって確認できた公表統計を1枚にまとめます。数字だけを切り取らず、必ず母集団・定義・期間とセットで読んでください。この3点が、次の節以降の主役です。
新規事業の成功率の公表統計 早見表
| 出典 | 数字 | 母集団(誰を数えたか) | 成功/失敗の定義 | 観測期間・時点 |
|---|---|---|---|---|
| アビームコンサルティング調査(2018年発表) | 検討案件のうち事業創出に至ったのは45% | 売上200億円以上の企業で新規事業に携わった経営者・担当者780件 | 「事業創出(ローンチ)に至った」=成功 | 直近5年の取り組み・2018年時点 |
| 同・アビームコンサルティング調査(2024年発表) | ローンチした事業の半数以上が黒字化未達 | 直近5年で新規事業開発に関与した経験者620名(2023年9月Web調査) | 「単年度黒字の達成」=成功 | 直近5年・2023年時点 |
| PwCコンサルティング 実態調査2025 | 投資回収フェーズ以降に到達した企業は約2割、主力事業化は1割未満 | 新規事業に取り組む日本企業1,032社(売上10億〜1兆円超) | 「案件が投資回収フェーズ以降に到達」=成功 | 2025年発表 |
| 中小企業白書2017(起業後の企業生存率) | 起業1年後95.3%、5年後81.7%が存続 | 帝国データバンクの企業データベース収録企業 | 「存続している」=成功側。倒産・廃業=失敗側 | 起業後1〜5年 |
| 日本政策金融公庫総合研究所 新規開業パネル調査(第4回の追跡調査) | 開業5年目末の廃業割合は8.9%(過去の同調査は15.4%・15.2%・10.2%) | 公庫融資を受けて2016年に開業した3,517社(不動産賃貸業を除く) | 「廃業」を3基準で認定(本人申告・支店確認・現地確認) | 2016年開業→2020年末まで毎年追跡 |
| CB Insights(Top Reasons Startups Fail・2024-25年版) | 倒産理由は資金枯渇70%、PMF(市場適合)不全43%、タイミング29% | 2023年以降に事業を畳んだVC出資スタートアップ431社(理由特定は385社・複数回答) | 「事業停止」の理由の内訳(成功率ではない) | 2023年以降 |
この6つの数字は、互いに矛盾していません。測っている対象が違うだけです。以降のH3で、行ごとの読み方を補足します。
なぜ「7%」から「45%」までばらつくのか — 数字は測り方で決まる
同じアビームコンサルティングの2018年調査からは、「検討案件の45%が事業創出に至った」という数字が公表されています。一方、経済メディアの記事では「新規事業の成功確率は7%」という見出しが使われ、その出所として同じ2018年調査の「累損解消(累積損失の解消)に至った割合が7%」が紹介されています。
つまり同じ調査・同じ母集団でも、線をどこに引くかで45%にも7%にもなります。ローンチを成功と呼べば約半分が成功し、累積の投資を取り返すことを成功と呼べば1割を切る。成功率の議論が噛み合わないときは、ほぼ確実にこの線の引き方がずれています。
「93%が失敗」「成功率10%」の出所を遡る
検索上位の記事に並ぶ「93%が失敗する」は、上記の「累損解消7%」の裏返し(100−7)として使われているものです。元の数字には「年商200億円規模以上の企業」「累損解消という厳しめの定義」という条件が付いていますが、見出しになる過程でこの条件が脱落し、あらゆる新規事業に当てはまる数字のように独り歩きしています。
「成功率は10%」「1,000のうち3つしか成功しない(千三つ)」については、特定の調査に遡ることができませんでした。この記事では、出所を確かめられない数字は事実としては使いません。通説として存在すること自体は事実なので、「出所不明の通説」と明記して区別します。
大企業の新規事業の成功率
大企業に限った公表調査では、PwCコンサルティングの2025年調査(1,032社)が参考になります。案件が投資回収フェーズ以降に到達している企業は約2割、主力事業と呼べる規模まで育った企業は1割未満です。またアビームコンサルティングの2023年調査(620名)では、ローンチまで到達した事業でも半数以上が単年度黒字を達成できていません。
「大企業は資源があるから成功率が高い」とも「大企業病で低い」とも言われますが、公表値で見る限り、投資回収まで届く割合は2割前後というのが現時点の相場観です。大企業で成功率が下がる構造的な理由は、別記事「大企業の新規事業」で詳しく扱っています。
起業後の生存率(1年後・5年後)
会社としての新規事業、つまり起業の生存率も並べておきます。中小企業白書2017によると、日本の起業後の企業生存率は1年後95.3%、5年後81.7%です。同じ図では米国48.9%、英国42.3%、ドイツ40.2%、フランス44.5%(いずれも5年後)と比較され、日本の数字は突出して高く見えます。
ただし白書自身が注記しているとおり、この日本の数字は企業データベースに収録された企業だけの集計で、収録前に消える創業直後の企業を捕捉しにくく、実際より高めに出ている可能性があります。一方、日本政策金融公庫の追跡調査(2016年開業の3,517社を毎年追跡)では、開業5年目末の廃業割合は8.9%、過去の同調査では10〜15%でした。こちらは公庫の融資審査を通った開業者という母集団です。「生存率9割」も「5年で半分が消える」も、どの母集団の話かを言わなければ意味を持ちません。
もう1つの定義: 自己申告の「成功」——中小企業白書の新事業展開調査
定義の違いの極端な例として、アンケートで「あなたの新事業展開は成功しましたか」と本人に聞く方式の統計もあります。中小企業白書2017の新事業展開の分析では、「成功した」と回答した企業の51.4%で経常利益率が増加傾向にあり、成功していない企業では30.2%にとどまる、という形でデータが示されています。
自己申告方式は回答者の基準がそろわないため、成功率の絶対値としては使えません。一方で、成功企業と非成功企業の行動の違い(動機・重視点・資金調達)を比べる分析には向いています。統計はそれぞれ設計に合った用途があり、用途の外へ持ち出したときに嘘になります。
一勝九敗 — 経営者の実感値
統計ではなく経営者の言葉としては、ファーストリテイリングの柳井正氏の著書『一勝九敗』の書名がよく引かれます。10回に1回勝てばよい、という多産多死の実感です。これは測定値ではなく経営哲学なので、統計の行には入れませんが、「成功率が低いこと自体は織り込んで戦う」という後半の設計思想の源流として重要です。
失敗理由の統計 — No Market Needは今も1位か
失敗側の統計として世界的に引用されるのが、CB Insightsのスタートアップ倒産理由の分析です。2014年の旧版(101社の失敗談を分析)では「市場ニーズがなかった(No Market Need)」が42%で1位とされ、この42%が長く独り歩きしてきました。
2024-25年の更新版(2023年以降に事業停止したVC出資企業431社・理由特定385社)では、表向きの1位は資金枯渇の70%ですが、レポート自身が「資金枯渇はほぼ常に最後の死因であって根本原因ではない」と述べ、根本側としてプロダクトマーケットフィット不全43%、タイミング29%、ユニットエコノミクス(顧客1件あたりの採算)不成立19%を挙げています。10年を挟んだ2つの版で、「市場に求められていないものを作った」が根本原因の筆頭であることは変わっていません。
失敗の原因と回避策(要約)
国内の解説記事が挙げる失敗原因——顧客理解の不足、意思決定の遅さ、人材不足、既存事業との軋轢、撤退判断の遅れ——は、上のPMF不全・資金枯渇を組織の言葉に翻訳したものと読めます。フェーズ別の失敗パターンと個別の実例は新規事業の失敗事例の記事に、撤退判断の設計は評価軸の記事に譲り、本記事は統計の読み方に集中します。
② 同じ事業が「成功」にも「失敗」にも数えられる

早見表の「定義」の列がどれほど効くかを、事例で確かめます。例として、産業用工具メーカーが立ち上げた工具の月額レンタル事業を考えます(実在の特定企業ではなく、説明のための例です)。
この事業の3年目の状態を、こう置きます。単年度では黒字化した。しかし初期投資の回収はまだで、累積では赤字。売上は本業の数%で、主力事業とは呼べない。事業自体は継続している。
この同じ1つの事業は、先ほどの早見表の定義に当てはめると、次のように数えられます。
| 調査の定義 | この事業の判定 |
|---|---|
| ローンチに至ったか(アビーム2018の45%の定義) | 成功 |
| 単年度黒字を達成したか(アビーム2023の定義) | 成功 |
| 累損を解消したか(「7%」の定義) | 失敗 |
| 投資回収フェーズ以降か(PwC2025の定義) | 未達(失敗側) |
| 主力事業に育ったか | 失敗側 |
| 存続しているか(生存率の定義) | 成功側 |
6つの物差しのうち3つで成功、3つで失敗です。この事業の実力は1つなのに、成功率の統計上は、調査によって成功側にも失敗側にも計上されます。「新規事業の成功率は◯%」という一文が、単独ではほとんど情報を持たない理由がこれです。
実務への含意は明確です。自社で成功率を語るときは、統計を引用する前に、自社にとっての成功の定義(どの線を越えたら成功と呼ぶか)と期限を先に固定すること。この順番が逆になると、結果が出たあとで都合のよい定義を選べてしまいます。
③ 成功率という指標の欠陥と、AI時代の多産多死

ここまでは統計の読み方でした。この節は、成功率という指標そのものの欠陥と、それでも使うための設計の話です。
欠陥: 分母は操作できる
成功率=成功件数÷挑戦件数です。この指標の欠陥は、分母が操作できることにあります。確実に通りそうな案件しか起案しない組織は、見かけの成功率が上がります。逆に、小さな検証を大量に打つ組織は、成功率が下がります。
つまり成功率の高さは、目利きの良さの証拠かもしれませんが、挑戦していないことの証拠かもしれません。単年のKPIとして成功率を課すと、現場は分母を絞る方向、つまり挑戦を減らす方向に最適化します。指標として使うなら、分母(検証件数)と分子(成功件数)を別々に追うほうが健全です。
施策は「分母を変える施策」と「分子を増やす施策」に分かれる
解説記事に並ぶ「成功率を上げる方法」——経営トップのコミットメント、独立した予算、顧客理解、MVP検証、出島組織(本体の決裁から切り離した別組織)、撤退基準、学習の仕組み——は、この分数のどちらに効くかで2系統に仕分けられます。
| 系統 | 施策 | 効き方 |
|---|---|---|
| 分母を設計する施策 | 小さく多く検証する、撤退基準を先に決める、1件あたりの検証費を下げる | 同じ予算で挑戦回数を増やし、外れを早く安く終わらせる |
| 分子を増やす施策 | 顧客理解・MVP検証、経営トップのコミット、独立予算・出島、学習の仕組み | 1件ごとの当たり確率と、当たりを育て切る力を上げる |
CB Insightsの失敗理由(PMF不全が根本の筆頭)に効くのは分子側の顧客検証で、アビームやPwCの「ローンチ後に黒字化しない・回収に届かない」に効くのは分母側の撤退設計です。どの統計の、どの数字を動かしたいのかから施策を逆引きすると、打ち手の議論が具体的になります。撤退基準を先に決める設計は撤退基準の記事に詳しく書いています。
フェーズ別チェックリストと失敗の予兆
実務の点検には、事業フェーズを0→1(種の検証)、1→10(事業化)、10→100(拡大)に分けたチェックリストがよく使われます。0→1では課題と顧客の実在、1→10では単価と継続率、10→100では組織と再現性、と見る数字が変わります。上の2系統に重ねると、0→1は分母設計の局面、1→10以降は分子を育てる局面です。
失敗の予兆としてよく挙がるのは、会議の議題から顧客の名前が消える、検証の期限が延び続ける、撤退基準が誰にも言えない、資料の枚数だけが増える、といった兆候です。共通点は、どれも「分母と分子のどちらも動いていない」状態だということです。予兆を見つけたら、施策より先に、成功の定義と期限の再固定に戻るのが定石です。
AIで検証コストが下がった時代の再設計
多産多死は昔からの定石ですが、実行コストが高すぎて、実際には少産少死しか選べない会社がほとんどでした。1件のプロトタイプに数か月・数百万円かかるなら、分母は増やせません。
生成AIで検証の実装コストが桁で下がったいま、この前提が崩れています。プロトタイプが数週間・数十万円規模で作れるなら、同じ予算で分母を数倍にできる。成功率という「率」を上げる競争から、同じ予算での成功「件数」を最大化する競争への切り替えが、AI時代の新規事業設計の中心になるはずです。率は下がっても構いません。下がった率は、挑戦した証拠だからです。
④ 分母側を設計した実例

ARCHECOが伴走する新規事業開発では、この「分母の設計」を検証プロセスとして実装しています。具体的には、着手前に成功の定義と撤退基準を文書で固定し、1件の検証を4週間・小予算の単位に刻んで、外れを早く安く確定させる進め方です。ある支援先では、従来は検証予算を1案件に集中させる進め方で、その案が外れかどうかの確定に四半期では収まらない時間がかかり、次の案への判断が先送りになりがちでした。そこで同じ予算を複数案の並行検証に切り替えたところ、有望案1件へ資源を寄せる判断を四半期内に終えられるようになりました(数字は丸めています)。
外部パートナーを選ぶ場合も、見るべき点は同じです。成功の定義と撤退基準を着手前に文書化するか、検証を小さな単位に刻めるか、外れたときに早く止める設計を持っているか。実績の華やかさより、この検証プロセスの有無が、統計の数字を自社で動かせるかを分けます。
検証プロセスの設計と実例は、成功率を上げる検証プロセスとして公開しています。自社の成功の定義から一緒に固めたい方はお問い合わせからどうぞ。
⑤ 一緒に読みたい記事

- 新規事業の失敗事例 — 統計の裏側にある個別の失敗の実話
- 新規事業の評価軸 — 成功の定義を先に固定する評価設計
- 撤退基準を先に決める — 分母設計の中核になる撤退の型
この記事の統計は、各調査の次回公表に合わせて年1回更新します。引用の際は、「出典名・母集団・成功の定義・観測期間」の4点を数字に併記する形——たとえば「投資回収以降到達は約2割(PwC・新規事業に取り組む1,032社・2025年発表)」——で使っていただくと、数字の独り歩きが減ります。
よくある質問
新規事業の成功率は結局何%ですか?
単一の答えはありません。公表統計では、ローンチ到達を成功とすれば約45%、単年度黒字なら半数未満、投資回収以降への到達なら約2割、累損解消なら7%という数字が確認できます。数字は成功の定義と母集団で決まるため、引用時は必ず条件とセットで使ってください。
「新規事業の9割は失敗する」は本当ですか?
出所を特定できる統計としては確認できませんでした。近い数字として、累損解消に至った割合が7%(大企業対象・2018年調査)という公表値があり、その裏返しの93%が「9割失敗」の根拠として使われることがあります。ただしこれは厳しめの定義での数字で、ローンチ到達で測れば約45%です。
大企業の新規事業の成功率はどのくらいですか?
2025年公表の1,032社調査では、案件が投資回収フェーズ以降に到達している企業は約2割、主力事業まで育った企業は1割未満です。ローンチした事業でも半数以上が単年度黒字に届いていないという2023年調査もあります。
起業して1年後・5年後の生存率は?
中小企業白書2017では1年後95.3%、5年後81.7%です。ただしこれはデータベース収録企業の集計で、実際より高めに出る可能性が白書に注記されています。公庫融資先を追跡した調査では、開業5年目末の廃業割合は8.9%(過去調査では10〜15%)でした。
成功率を上げるにはどうすればよいですか?
施策を「分子を増やす」(顧客検証・MVP・経営コミット)と「分母を設計する」(小さく多く検証・撤退基準の事前決定)に分けて打つことです。AIで検証コストが下がったいまは、率そのものより、同じ予算で成功件数を最大化する設計が有効です。