構造化シナリオ法の実践|アクティビティ/インタラクションシナリオの書き方

構造化シナリオ法とは?記入例とKA法ワークショップの記録

構造化シナリオ法とは、抽象度の異なる3つのシナリオを順に書き、体験価値からUIまでを具体化するデザイン手法です。構造化シナリオとも呼びます。

3つとは、バリューシナリオ(どんな価値を提供するか)、アクティビティシナリオ(ユーザーは何をするか)、インタラクションシナリオ(どう操作するか)です。「なぜ使うのか(価値)」→「何をするのか(行動)」→「どう操作するのか(UI)」と徐々に具体性を上げるため、提供したい体験価値からブレないUIにたどり着けます。

進め方は、ペルソナを定義し、KA法などで本質的要求価値を抽出してから、3つのシナリオを順に書く5ステップです。この順番を崩して作りたい画面から書き始めると、シナリオがその画面の説明になり、機能ありきの設計になります。

項目要点
UXデザインの3つのシナリオとはバリューシナリオ、アクティビティシナリオ、インタラクションシナリオ。抽象度の高い順に書きます。
バリューシナリオに書くことペルソナとビジネス要求をもとに、どんな体験価値を提供するかを短い物語として書きます。画面や機能の話はまだ書きません。
アクティビティシナリオに書くこと価値を、ユーザーの行動と心理の流れに具体化します。主語はユーザーで、いつ・どこで・何をして・何を感じるかを時系列で書きます。
インタラクションシナリオに書くこと各行動を、画面上の操作とシステムの反応のレベルまで落とし込みます。ワイヤーフレームやプロトタイプに接続できる具体度です。
構造化シナリオ法の進め方は①ペルソナを定義する ②本質的要求価値を抽出する ③バリューシナリオを書く ④アクティビティシナリオを書く ⑤インタラクションシナリオを書く、の5ステップです。

この記事では、料理初心者の一人暮らし会社員を例に3つのシナリオの記入例を載せ、実務でつまずきやすい3点と、クックパッドとクラシルを題材にKA法を応用して体験価値を選定したワークショップの過程まで記録しています。

構造化シナリオとは?

構造化シナリオ法は、ユーザーの本質的要求価値・ペルソナ・ビジネスをもとに、シナリオの抽象度のレベルを変えながら、具体的にブレイクダウンをしながらシナリオライティングしていくデザイン手法です。 提供する体験価値→行動・心理→UIと徐々に具体性を上げながら思考することで、提供したい体験価値からブレないUIを作ることができます。「構造化シナリオとは?」を図解したスライド|構造化シナリオ法は、ユーザーの本質的要求価値・ペルソナ・ビジネスをもとに、シナリオの抽象度のレベルを…

構造化シナリオ法の3つのシナリオ

構造化シナリオ法では、抽象度の異なる3つのシナリオを順番に書いていきます。上から順に「なぜ使うのか(価値)」→「何をするのか(行動)」→「どう操作するのか(UI)」と具体化していくのが特徴で、この順番を守ることで、提供したい体験価値からブレないUIにたどり着けます。

バリューシナリオ(どんな価値を提供するか)

最も抽象度の高いシナリオです。ペルソナとビジネス要求をもとに、「このサービスはユーザーにどんな体験価値を提供するのか」を短い物語として書きます。画面や機能の話はまだ書きません。書き方のポイントは、ユーザー調査から導いた本質的要求価値(後述のKA法などで抽出します)を軸に据えることです。

例: 料理初心者の一人暮らし会社員が、仕事帰りでも「今日はこれを作ればいい」と迷わず決められ、健康と節約を両立できている。

アクティビティシナリオ(ユーザーは何をするか)

バリューシナリオで定めた価値を、ユーザーの行動と心理の流れに具体化します。主語はあくまでユーザーで、「いつ・どこで・何をして・何を感じるか」を時系列で書きます。ここでもまだ画面の詳細には踏み込みません。

例: 帰宅前の電車内でアプリを開き、冷蔵庫にある食材を選ぶ。提案された3品から10分で作れるものを選び、足りない食材だけを駅前で買って帰る。

インタラクションシナリオ(どう操作するか)

最も具体的なシナリオです。アクティビティシナリオの各行動を、画面上の操作とシステムの反応のレベルまで落とし込みます。「ホーム画面の検索バーに食材名を入力する」「候補がカード形式で表示される」のように、UI設計の直前まで具体化します。ここまで書けると、ワイヤーフレームやプロトタイプに素直に接続できます。

構造化シナリオ法の進め方|5つのステップ

  1. ペルソナを定義する — ユーザー調査をもとに、対象ユーザーの特徴・状況・目的を具体化します。
  2. 本質的要求価値を抽出する — インタビュー等の定性情報からKA法などで「ユーザーが本当に求めている価値」を導き出します(後半のワークショップ実例で手順を紹介しています)。
  3. バリューシナリオを書く — 抽出した価値をもとに、提供する体験を物語として記述します。
  4. アクティビティシナリオを書く — 価値を行動・心理の時系列に展開します。
  5. インタラクションシナリオを書く — 行動を画面操作のレベルに具体化し、UI要件へつなげます。

各ステップの成果物を前のステップと突き合わせて「価値からブレていないか」を確認しながら進めるのがコツです。

実務でつまずきやすい3つのポイント

1. いきなりインタラクションから書いてしまう
作りたい画面が先にあると、シナリオが「その画面の説明」になりがちです。順番を崩さず、バリューシナリオから書き始めることで、機能ありきの設計を避けられます。

2. バリューシナリオが抽象的すぎて機能しない
「便利で快適な体験を提供する」のような記述では、次のシナリオに展開できません。ユーザー調査の発言に根ざした、そのペルソナ固有の価値まで具体化します。

3. シナリオ間の対応関係が切れる
アクティビティの各行動がどの価値に対応するのか、インタラクションの各操作がどの行動に対応するのかを対応表などで管理すると、レビュー時に「価値からの逸脱」を発見しやすくなります。

実例:クックパッド vs クラシルのワークショップ

Teamクラシル VS Teamクックパッド

今回のHCDサークルではチームに別れてワークショップで構造化シナリオを学びました。 チームクックパッドとチームクラシルに分かれ、サービスごとのペルソナをもとに、ユーザ体験の分析をおこなった。本ワークショップ においては、アプリが提供する体験価値の抽出から、価値を向上させるためのソリューションを定義し、改修を目的とする。 競合であるクックパッドとクラシルに対し、どちらのチームがより良いサービスへと導けるのか、それをバトル。   ワークショップの流れ    第一回目の授業では、構造化シナリオにおけるバリューシナリオを作成 「Teamクラシル VS Teamクックパッド」を図解したスライド|今回のHCDサークルではチームに別れてワークショップで構造化シナリオを学びました ①各チームにおけるサービス内容とペルソナ   クックパッド 「Teamクラシル VS Teamクックパッド」を図解したスライド|今回のHCDサークルではチームに別れてワークショップで構造化シナリオを学びました   【ペルソナ】 年齢:30代  性別:女性 職種: 専業主婦 特徴;料理好き  思考:料理のレパートリーを増やしたい / アレンジを加えたレシピを楽しみたい   クラシル 「Teamクラシル VS Teamクックパッド」を図解したスライド|今回のHCDサークルではチームに別れてワークショップで構造化シナリオを学びました   【ペルソナ】 年齢:20代  性別:男性 職種: 会社員 特徴;ひとり暮らし、 料理初心者、不器用 思考:健康と節約のために自炊をしたい  

KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出

「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体験価値を導き出す手法である。デプスインタビューなどを通じて得られた発言から特徴的な出来事を複数抽出し、その出来事一つ一つに含まれる価値の翻訳をおこなう。人々の日常的なおこないと、その背景にある価値の構造を視覚化することができるため、体験価値の全体像を把握しやすくなるとともに、価値の共有もしやすくなる。   KA法を使う目的
  • 日常的におこおこなっている行動に関する調査結果から、背景に潜む価値を導き出す
  • 行動に紐付いた体験価値を可視化し、デザインに落とし込む
  • 構造化によって導き出した体験価値を可視化し、、チーム間での共通認識を持つ
  今回の授業ではKA法をアレンジして体験価値を抽出 体験エピソードの抽出(KA法の応用) ペルソナをもとに、体験エピソードの仮説を立てます 書き方ポイント:ペルソナがアプリを使用する瞬間とその前後を想定した体験エピソードを考える   1.体験エピソードの抽出 ペルソナになりきり、体験エピソードを作成   体験エピソードの抽出 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… ※ペルソナがアプリを使用する瞬間とその前後を想定し、時系列で体験エピソードを考える   2.抽出された体験に潜む価値 体験エピソードから価値を抽出 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… Point:価値には「〜する価値」と書くことで価値要素がわかりやすくなる   3.価値要素をグルーピング 体験エピソードをもとに抽出された価値要素をもとにグルーピングをおこなう   チームクラシル-チームクックパッド 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体…   4.価値の選定 グルーピングした価値にラベルを付け、最も優先度の高い価値を選定 チームクラシル-チームクックパッド ※イメージ(ラベル) ※イメージ(選定結果)   チームクラシル結果 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… クラシルチームは   「簡単かつ、栄養バランスの取れた献立をまとめて考えられる価値」   に選定しました。   クラシルチームのよかったところ  
  • クラシルの機能を深く理解した上で、想定する体験を深堀りできていた
  • 他のサービスとの差別化を意識して、価値の選定をしていた
  • サービス視点で提供したい価値を捉えていた
    チームクックパッド結果 「KA法を使い、ユーザーがサービスを通じて得られる本質的な価値を抽出」を図解したスライド|KA法とは? KA法は、ユーザー調査で得られた定性的な情報から、ペルソナが求めている本質的ニーズや体… クックパッドチームは   「普段の料理にアレンジする為の新しい発想がもらえる価値」   に選定しました。   ・体験を網羅的に洗い出して体系的に価値を整理している ・体験エピソードを洗い出すときに、5W1Hを意識していた ・価値の選定をする時にピューメゾッドの評価手法を取りれ、メンバー全員の意見で価値を  選定していた ・ペルソナを更に具体化して、体験を想像しやすくしていた     今回の授業ではここまでをつくりました。 次回はアクティビティシナリオとインタラクションシナリオを授業で作っていきます。

構造化シナリオ法のよくある質問

Q. 3つのシナリオは必ず全部書く必要がありますか?
原則は3つ順番に書くことで効果を発揮する手法ですが、小規模な改修では既存のバリューシナリオを前提にアクティビティ以降だけ更新するなど、実務では範囲を絞って使うこともあります。

Q. カスタマージャーニーマップとは何が違いますか?
ジャーニーマップは現状の体験を俯瞰・分析するためのツール、構造化シナリオはこれから作る体験を価値からUIへ設計していくための手法です。調査結果の整理にジャーニーマップを使い、設計に構造化シナリオを使う、という併用が一般的です。

Q. どんな場面で特に有効ですか?
新規サービスの立ち上げや大きなリニューアルなど、「何を作るべきか」から考える場面で特に有効です。提供価値の合意をチームで作ってからUIに進むため、後工程での手戻りを減らせます。

続きの実践編では、アクティビティシナリオとインタラクションシナリオを実際に書いていきます。
→ 構造化シナリオ法の実践|アクティビティ/インタラクションシナリオの書き方

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