アプリのUX(ユーザー体験)は、ダウンロード数ではなく「使われ続けるかどうか」を決める中心変数です。この記事では、アプリにおけるUI/UXの意味と違い、重要な理由、設計フロー11ステップ、モバイルアプリデザインの9原則、ツールと情報源、最新トレンドまでを整理します。後半では、その土台として「そもそもアプリはなぜ使われるのか」——アプリを取り巻く環境の変化と、使われるアプリを作るための課題を掘り下げます。
アプリにおけるUI/UXとは
UI(ユーザーインターフェース)は、画面のレイアウト・ボタン・文字など、ユーザーが直接見て操作する接点のことです。UX(ユーザーエクスペリエンス)は、その操作を通じてユーザーが得る体験全体を指します。UIはUXを構成する一部であり、「きれいなUI」がそのまま「良いUX」になるわけではありません。あわせて押さえたいのがユーザビリティ(使いやすさ)で、目的を達成できるか・効率よくできるか・満足できるかで評価されます。
なぜアプリでUI/UXが重要なのか
アプリはWebサイトより離脱が速く、代替も簡単だからです。操作に迷ったユーザーは戻ってきません。UI/UXの質は、継続率・ストアの評価・口コミに直結し、ビジネス面でも、開発後の手戻りが減ることによるコスト削減、使える人が増えることによるより幅広いオーディエンスへの到達、サポート問い合わせの減少といった効率性、そして良好な利用指標を通じたSEOフレンドリーな評価まで、広く影響します。
アプリUI/UX設計の進め方11ステップ
実務の設計フローは次の順で進みます。①開発目的や目標の明確化、②ユーザーリサーチ(ニーズ把握)、③ペルソナ設定、④カスタマージャーニーマップ作成、⑤ストーリーボード作成、⑥要件定義、⑦UIデザイン、⑧プロダクト開発、⑨プロトタイピング、⑩ユーザビリティテスト、⑪フィードバックと改善、です。核にあるのはユーザー中心設計の考え方で、「作ってから確かめる」のではなく、ワイヤーフレームやプロトタイプで早く安く確かめてから作り込みます。画面が増えてきたら、配色・部品・挙動のルールをデザインシステムとして整備すると、一貫性と開発速度が両立します。
モバイルアプリデザインの9原則
①シンプルにする:大きなタスクを簡単なステップに分解し、重要な情報を隠さない。②ナビゲーションを予測可能にする:3クリックルールを目安に、進捗を保存し、迷わせない。③プラットフォームの慣習に従う:独自の操作言語を発明しない(閉じるは右上、慣れた場所に慣れた部品)。④優先順位の明確なページデザイン:視線のFパターン・Zパターンを意識し、最重要の項目から見せる。⑤ブランドイメージとナビゲーションを統一する。⑥入力とコミットメントを最小限にする:前もって設定情報を求めず、プリフィルと自動入力で文字入力の手間を省く。⑦読み込みは速く、待たせるときは伝える:進行を見せ、視覚的な気晴らしを置く。⑧多様なデバイスに最適化する。⑨人間のためにデザインする:フォントサイズ、色覚多様性、聴覚障害への配慮などアクセシビリティを標準装備にする。9つに共通する狙いは1つ、ユーザーの認知負荷を減らすことです。
使いやすいアプリに共通するパターン
評価の高いアプリには共通点があります。シンプルで直感的な操作性、一貫した配色とフォント設計、操作に反応するフィードバック(マイクロインタラクション)、そして高速なパフォーマンスです。国内でも、家電メーカーの操作アプリや決済アプリ、自治体・イベントの公式アプリなど、UI/UXの改善で利用率を大きく伸ばした事例が公開されています。
デザインツールと情報源
制作の定番ツールはFigma、Adobe XD、Sketch、プロトタイピング特化のFramerやProtoPieです。参考になるギャラリーとしてBehance、Dribbble、実アプリのUIを集めたMobbin、Pinterest、Awwwardsがあります。トレンド(ダークモード、マイクロインタラクション、3D・空間UI、AIによるパーソナライズ、音声UIなど)は毎年動くため、UIデザインのトレンドまとめで別途整理しています。なお、社内にデザイナーがいない場合は制作会社やフリーランスへの外注も選択肢になります。自由度と費用のバランス、実績の直接確認、リリース後のアップデート対応まで見て選ぶのがポイントです。
ここまでが、アプリUI/UX設計の教科書的な整理です。ただし、原則やフローをなぞるだけでは「使われるアプリ」にはなりません。人々がアプリに求める価値は、デバイスと生活シーンの変化とともに動き続けているからです。ここからは連載の第一歩として、アプリを取り巻く環境の変化と、使われるアプリを作るための課題を掘り下げます。
近年、IT分野の企業以外にも、自社のサービスや製品の延長でアプリ(アプリケーション)を開発・提供する企業が増えてきました。例えば、ヤマダ電機や無印良品(MUJI passport)などの小売業、講談社や小学館といった出版社、JR東日本や小田急電鉄といった鉄道会社などが非IT企業によるアプリ提供の例です。
このような動向から「アプリを提供企業=IT企業」といった概念はなくなってきたといます。しかし、非IT企業にとってもアプリが無視できない存在になってきた一方で、市場には大量のアプリが存在しており(2014年時点でApp Store:約130万、Google Play:約120万)、その中からリリースしたアプリを人々に使ってもらうためには、人々がアプリを使いたくなる要素が必要となります。
では、その要素とは何か?その要素をきちんと把握して盛り込むために、戦略的にアプリを作りこんでいくアプローチを、本ブログで紹介していきます。
本記事では、その第一歩として、アプリを構成する価値について記載します。
アプリを取り巻く環境の変化
アプリは、パーソナルコンピューター(以後パソコン)の普及にともなって、一般の人々の間に浸透してきました。そして、インターネットの普及・高速化、スマートフォンの普及に伴って、アプリが担う役割や及ぼす影響も変わってきています。ここ最近では、ウェアラブルデバイスの台頭により、アプリを取り巻く環境がさらに変わる可能性が出てきました。
スマートフォン普及の影響
特に、本記事では、スマートフォンの普及によるアプリの変化に着目することで、近年のアプリの役割・影響について述べます。
モバイルデータ解析を行うFlurry社では、モバイル端末使用時間が2013年の調査で平均2時間38分であったのに対して、2014年の調査で4分多い平均2時間42分であったと発表しており、モバイル端末使用時間が増加傾向にあることが伺えます。同様に、Flurry社の調査では、モバイル端末使用時間に占めるブラウザとアプリの使用時間が下記の通りであったと発表しています。この結果からも、アプリに触れる時間が増えていることが伺えます。
- 2013年 ブラウザ:20%、アプリ:80%
- 2014年 ブラウザ:14%、アプリ:86%
また、情報メディア白書2014による調査データから、人々がアプリを利用するシーン(街中、電車・バス内、職場・学校など)が大幅に増えていることがわかります。
パソコンを利用する自宅外のシーンは、主に街中(この場合はカフェなどの飲食店内が想定される)、職場・学校であったのに対して、スマートフォンでは、その他のシーンが全体的に増えています。特に、各シーンでのスマートフォンへの接触率は高くなっています。
近年アプリが帯びた役割
スマートフォンの普及に伴って、アプリの利用機会と時間が増える中で、アプリにも役割の変化が起こっています。
前述で示した、モバイル端末使用時間に占めるブラウザとアプリの使用時間の変化に着目すると、2013年から2014年にかけてアプリの使用時間が占める割合が80%から86%と、6ポイント増加しています。
ブラウザからアプリへのシフトの要因の一つとして考えられるのが、元々ブラウザでアクセスして利用していたWebコンテンツやWebサービスのアプリ化の動きです。例えば、アプリ化が進んでいる領域としては、SNSやキュレーション、コマースなどがあります。
では、なぜこれらのWebコンテンツ・サービスは、ブラウザで利用できるにもかかわらず、アプリ化されたのでしょうか。その要因として、ユーザーにとって下記のメリットがあることがあげられます。ユーザーテストを行っていると、アプリに対してこのようなメリットがよくあげられます。
- アプリの場合、ホーム画面から直接サービス・コンテンツにアクセスできるため、必要な時にすぐに使える
- ブラウザよりも操作速度が早いため、快適に利用できる
- ブラウザよりもユーザーインタフェースを柔軟に実装できるため、操作感を楽しめる
- サービス・コンテンツに関係ないユーザーインタフェース(ブラウザ自体のユーザーインタフェース)がないため、サービス・コンテンツに没入できる
このような傾向からコンテンツやサービスを快適に利用するためのユーザーインタフェースとして、アプリが求められてきていることがわかります。
このように、ユーザーインタフェースとしての役割をアプリに求められる傾向は、パソコンが普及し、アプリが一般に浸透し始めた頃には見受けられませんでした。元々、パソコンが普及し始めた当初のアプリは、機能とユーザーインタフェースが一つのアプリで完結しており、ユーザーインタフェースだけ切り離されて提供されることはありませんでした。
しかし、スマートフォンの普及により浸透してきたモバイル・アプリに関しては、既にWebコンテツやWebサービスとしての機能に対して有用性が認識されているものを、より快適に利用するためのユーザーインタフェースとして求められるものが出てきています。
このことから、「より快適に利用できるユーザーインタフェース」という価値が一つのアプリを成立させており、ユーザーインタフェースを「コンテンツやサービスの快適な利用を提供する働き」という機能と捉えることができます。
つまり、アプリを構成する価値として、下記2つの要素が存在すると考えられます。
- 従来の意味での機能
(表計算、写真撮影、メモなど) - ユーザーインタフェースという機能
(コンテンツやサービスを利用しやすくする働き)
使われるアプリを作るための課題
使われるアプリを作るためには、作る目的とアプリの特性をきちんと見極めて、先ほど述べた2つの価値をどのように提供するかを考える必要があります。例えば、既にあるWebサービスの利用機会の増加と操作性の向上を目的とするのであれば、「ユーザーインタフェースという機能」を提供するモバイル・アプリの作成が選択肢としてあげられます。また、新たにサービスを立ち上げるのであれば、Webサービスとしてブラウザ経由の利用だけに限定するのか、モバイル・アプリも提供するのか、などを検討する必要があります。
このような検討では、ユーザーの欲求とそのタイミングを見定めながら、判断を行う必要があります。しかし、利用シーンが多様化する中で、ユーザーの欲求とそのタイミングを見定めることは、非常に複雑な思考を要します。そのため、体系的なアプローチで、考慮すべき要素を整理しながら、判断要因をまとめていく必要があります。そのアプローチについて、今後本ブログで紹介していきます。
よくある質問
アプリにおけるUIとUXの違いは何ですか?
UIは画面のレイアウトやボタンなどユーザーが直接操作する接点、UXはその操作を通じて得られる体験全体です。UIはUXの一部であり、きれいなUIがそのまま良いUXになるわけではありません。
アプリのUXデザインはどんな手順で進めますか?
目的の明確化、ユーザーリサーチ、ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップ、ストーリーボード、要件定義、UIデザイン、開発、プロトタイピング、ユーザビリティテスト、フィードバック改善の11ステップが実務の標準形です。
モバイルアプリデザインの原則にはどんなものがありますか?
シンプルにする、ナビゲーションを予測可能にする、プラットフォームの慣習に従う、優先順位の明確な画面設計、ブランド統一、入力の最小化、高速な読み込み、多様なデバイス対応、アクセシビリティ配慮の9つです。
アプリのUI/UXデザインに使うツールは何がおすすめですか?
制作はFigma、Adobe XD、Sketch、プロトタイピングはFramerやProtoPieが定番です。参考ギャラリーはBehance、Dribbble、実アプリのUIを集めたMobbinなどが役立ちます。
アプリのUXが悪いとどんな影響がありますか?
操作に迷ったユーザーはすぐ離脱し、戻ってきません。継続率とストア評価が下がり、サポート問い合わせが増え、獲得コストが無駄になります。UXの質は事業数値に直結します。
アプリのUI/UXデザインは外注できますか?
できます。制作会社かフリーランスが選択肢で、自由度と費用のバランス、実績の直接確認、リリース後のアップデート対応まで確認して選ぶのが失敗しないポイントです。


