自社のデジタルサービスの改善や意見を求めるご相談はとても多く、それに対してARCHECOでは多くの経験と未来を見据えた視点から、それぞれのお客様に応じた最適な提案を行うために、常に様々なプロセスモデルを考えています。

今回は弊社コンサルタントである田代が提唱する、デジタルサービスにおける新しい独自の消費行動プロセスモデルについてご紹介しようと思います。

ATERプロセスモデルとは?

”登録”をゴールとしたデジタルサービスに最適化された消費行動のプロセスモデルです。

昨今のテクノロジーの進化や通信環境の向上に伴い、コンテンツやサービスのデジタル化が加速したことによって、「思い立ったらすぐに試してみる」ということが身近なものとなり、サブスクリプションモデルなどをはじめとした、繰り返し使用して試していく中で、サービスとの信頼関係が構築されていくというサービスモデルが普及しつつあります。これをふまえ、多様化されてきたゴールの1つである、月額課金などへの”登録”という契約アクションに到達していくまでの行動プロセスをモデリングしたのがATERプロセスモデルです。

ATERプロセスモデルの概要

Activate(起動)

膨大な情報量を誇るネットからの情報を受けて発生したモチベーションによって瞬時に情報収集やサービスの検索行動を起こしていきます。

Try(試す)

ユーザーインサイト(ユーザーの隠れた本音部分)によってフィルタリングされていき、サービスを実際に利用することで、ユーザーはサービスに対する評価をしていきます。

Experience Accumulation(体験蓄積)

蓄積していく中でもそれぞれ段階があり、

  Desire:初回の利用体験をすることで新たな欲求が発生する。
  Retry:新たに発生した欲求を満たすために再度サービスを利用し評価を行う。

基本的には以上の2つの行動をぐるぐると繰り返します。
その繰り返しの中で以下の2つの行動が生じてくる場合があります。

  Feedback:発生した欲求を満たすことができないため、サービスに対してのフィードバックを行う。
  Share:自らが利用してみた評価結果の共有や、得られたコンテンツをユーザーのコミュニティで活用し、広げていく。

これらの過程を経ていく中で、ユーザーのサービスに対する信頼を高めていきます。

そして最終的に

Register(登録)

蓄積された利用体験から、ユーザーにとって必須のツールであるとの判断が行われ、お金を払うための登録という行動を起こすようになります。

従来のユーザー消費行動プロセスモデル

デジタルサービス特有の消費行動の出現

以前からあるAIDMAやデュアルAISASなどの消費行動プロセスモデルは、サービス戦略を組み立てていく上で、汎用性も高く有効的であり、現在でも様々な戦略の立案に活用されています。
しかし、デジタルサービスにおける情報量の肥大化は日々加速をし続け、マネタイズポイントやコンバージョンといった定義も多様化してきています。
そうした中では当然そのサービスにとってのゴールに合わせて、最適なユーザー行動プロセスのカスタマイズをしたうえでのサービスデザインが求められています。

AIDMA

  • Attention:注目することで商品やサービスについて知る
  • Interest:商品やサービスに興味を持つ
  • Desire:商品やサービスを欲しいという欲求も持つ
  • Memory:記憶として商品やサービスが残る
  • Action:購買行動を起こす

1920年に提唱された消費行動のプロセスモデルです。現在も様々なサービスデザインに活用されていますが、昨今の体験の購入やサブスクモデルなどの多様化した消費行動を考えていくと、現代に合わせたカスタマイズが必要になってきます。

デュアルAISAS、A+ISAS

  • Attention:注目することで商品やサービスについて認知する
  • Interest:商品やサービスに対して興味・関心を持つ
  • Search:商品の情報を自ら検索する
  • Action:購買や資料請求といった実行動を起こす
  • Share:商品のことをSNS等で共有・発信する

まず、デュアルのついていない元々のAISASモデルとは、インターネットでの購買行動やSearch(検索)・Share(共有)といったものが起こるようになった2004年頃に、新しい時代のプロセスモデルとして日本国内で提唱されました。インターネットでのマーケティングが必要となった時代にとても有効なプロセスモデルとされていました。

しかし、インターネットの進展とともにできることが増えてきて、少しずつ合わない部分が出てきました。そんな中で生まれたのが、デュアルAISASモデルやA+ISASモデルです。

  • Activate:ブランド情報にしかない関心を商品へ向けさせる
  • Interest:ブランド情報から興味を持つ
  • Share:ブランド情報に共感して自ら発信、共有する
  • Accept:受け取った情報に共鳴する
  • Spread:共鳴した人がさらに拡散する

合わなくなってきた部分とは、まずはAttentionの部分。AISASが提唱された頃には大きな力を持っていたマスメディア等による広告が、近年は広告の情報が多すぎて顧客に響かなくなってきています。また、Shareの部分に関しても、SNSの普及によって自分がモノを手にしなくても、情報を得た時点でいいと思ったら気軽に他の人へ情報共有を行うことが可能となりました。

以上のことから購買する際の行動には、検索と共有の概念から生まれる広めたい行動(新しいAISASの部分:横軸)とエンゲージメントの深さから生まれる購入したい行動(元々のAISASの部分:縦軸)があり、それぞれ軸にして立体的にモデリングしたプロセスモデルが「デュアルAISAS」へと進化することになりました。

戦略アプローチ

AIDMAやデュアルAISASはDXに有効か?

昨今、国内においてもUXやCXという概念が浸透し、様々な企業がサービスデザインをする上で体験デザインは重要な要素として捉えられるようになりました。
そうした流れに合わせて、通信環境の向上やデバイスの進化によるコンテンツのデジタル化や情報量の拡充が可能となり、企業はこの機会を活用した、様々な”体験の購入”や”サブスクリプションモデル”といったデジタル特有のサービス提供手法を取り始めています。

これらの新しい消費行動モデルは『モノの価値の購入』ではなく『体験価値の購入』であるといえます。

従来の『モノの価値の購入』のプロセスモデルとなるAIDMAやデュアルAISASを『体験価値の購入』に最適化されるように改良を加えたものが、今回ご紹介させていただいたATERプロセスモデルとなります。

ATER プロセスモデルの活用シーン

ATERプロセスモデルは、単なるユーザーの消費行動のプロセスモデルとしてではなく、様々な戦略立案やサービス設計に活用されることで、初めてその効果を発揮することができます。
ARCHECOでは、カスタマージャーにマップ、マーケティング戦略立案、ソリューション検討など、様々なデジタルサービス案件においてこのプロセスモデルを活用したソリューションのご提案をさせていただいています。



このように、ARCHECOではこれまでのプロセスモデルを活用しつつ、時代やお客様のニーズに合わせて日々進化させていっています。
興味を持った方、ぜひ自社のことも相談したい…といった方、お気軽にご連絡ください!