前回のJR東日本アプリのRedesignに引き続き、既存のアプリを勝手にRedesignする企画の第二弾は、”TSUTAYAアプリ”について説明します。
特に今回のAPP Redesignでは、なぜアプリを作るのかという、アプリの存在意義をUXデザインの観点から再考するところにフォーカスを当てて説明いたします。
なぜ、アプリを作るのか?
ARCHECOでは、会社設立以来様々なアプリに関するご相談をいただいておりますが、”アプリケーションの役割”がなんなのか明確でないにも関わらず、ただスマホ向けアプリを作る、ウェアラブル向けアプリを作るといったミッションを上司から与えられたクライアント様が、ARCHECOにご相談くださるというケースが少なくありません。こんな時によく耳にするのが、「なぜアプリをつくるべきか考えよう!!」といった言葉です。そうと聞くと、少し大それたテーマのように感じる開発者や設計者が多いように思います。
私は、コンセプトやビジョンを語るだけの言葉遊びのようなデザインに意味はないと考えています。それでも「なぜ、アプリを作るのか?」を問う必要があると考えます。「なぜアプリを作るのか?」の問いに答えなくては最適な設計仕様に落とし込むことができないからです。最近のアプリ動向から考えて、「なぜ、アプリを作るのか?」という問いに対する答えは、下記のような目的に分類できるかと思います。
- アプリ自体を事業の主軸にし、利益をあげる
(ゲーム、SNS、アプリを主体としたIoT等) - アプリを流通させ、ユーザに対して広告/宣伝活動を行い会社の知名度をあげる
- アプリを通じて、ブランディングまたは営業活動を行う
(ドアノックツール、販促目的等) - 既存のサービスの増強、補助としてアプリを制作し、サービスの質を向上させる
(020、デバイスを主体としたIoT等)
既存の”TSUTAYAアプリ”バラしてみました!
JR東日本アプリの現状把握と同様に既存の”TSUTAYAアプリ”をファンクションリストに分解し、機能を書き出しました。これにより、既存アプリで何ができるか一覧できる状態になります。ファンクションリストに分解した結果を下図に示します。
ここで、アプリの機能は、アプリがユーザに提供するサービス内容と言い換えることができます。よって、これらのサービス内容は、ユーザがアプリを所有するに価するだけの魅力と、アプリをなぜ作るかという目的が達成されるものでなければなりません。ファンクションリストに分解した結果から考察すると、”TSUTAYAアプリ”には下記のようなサービス内容が含まれていることがわかります。
- ホームページにて配信している新着、人気、リリース等の情報が閲覧できる機能
- 自分の利用状況(履歴、ポイント等)が把握できる機能
- お気に入り登録等の収集した情報を蓄積する機能
- オンラインクーポン
- 地図機能
ここで、なぜこのようなサービスを提供しているか考察してみると、先述のアプリを作る目的に挙げた
“アプリの既存のサービスの増強、補助としてアプリを制作し、サービスの質を向上させる
(020、デバイスを主体としたIoT等)”
という目的に対する意識が高いように考えられます。
理由としては、情報構造的観点から積極的にTOP画面にコンテンツに関する情報配信系の機能を集めタッチポイントを増やすとともに、マイページ(ポイント確認)やオンラインクーポンにより支払いに対するハードルを下げる工夫をしており、モチベーションの活性化に起因する工夫がされていると解釈したためです。よって、TSUTAYAで映像、音楽等のコンテンツを借りて視聴するという一般化された一連の体験の中で、TSUTAYAアプリではコンテンツを借りるために「店に足を運ぶ」きっかけ作りを行っている(モチベーションの活性化)という考察をしました。
ここで、店に足を運ばせるという目的に対して社内外のメンバーに「どのような条件が満たされた時に店に足を運び映像または音楽等のコンテンツを借りたくなるか?」というインタビューを実施しました。その結果下記のようなモチベーションが発生する共通の条件を抽出しました。
- 自分の価値観で見たい聞きたいと思えるコンテンツに出会った時
これは当然の結果のように感じました。音楽好きや映画好きなら、自分自身にとってお気に入りの音楽や映画に出会いたいと望むのは当然のことでしょう。しかし、もともとの機能に立ち返って観察すると、個人の価値観にフィットしたものをリコメンドするような機能がアプリケーションには含まれておらず、流行や新着情報等のみが配信されている事がわかります。
今までの調査分析とまとめを下記に示します。
- 「なぜアプリを作るのか?」→「店に足を運ぶきっかけ作りのため」
- 「店に足を運ぶきっかけ作りのため」にはどうしたら良いのか?→「自分の価値観で見たい聞きたいと思えるコンテンツに出会う機会を増やす」
よって、次に考慮すべきは「自分の価値観で見たい聞きたいと思えるコンテンツに出会う機会を増やす」にはどのような手段が最適かを検討し、機能案を策定する必要が有ります。このように、「なぜアプリを作るのか」を踏まえてスタートすることでアプリケーションに最適な機能の妥当性を定義する切り口となります。
ここで、「自分の価値観で見たい聞きたいと思えるコンテンツに出会うこと」をサポートする機能として、私は収集するライフログを活用したリコメンド機能が適切ではないかと仮説を立てました。他にも、一画面内でスクロールして全機能に辿り着くような構造を、音楽や映像コンテンツ情報を直接表示させない機能はヘッダーメニュー領域にまとめました。これによって、画面下部のスクロール領域には音楽や映像コンテンツの情報のみが表示され、ユーザがコンテンツに対して興味を抱くための機会の向上を狙いました。実際に今回再構築したアプリのファンクションリストと、それに紐付き作成した画面イメージを下記に示します。
今回は”TSUTAYAアプリ”Redesignとして、”なぜアプリを作るのか”から考えはじめ、”リコメンド機能を盛り込んだTOP画面を作成する”ところまで説明しました。次回は、グラフィックデザインで表現すべき事にフォーカスして説明いたします。