今回のAPP Redesign企画、対象はフィットネスアプリ”NRC (Nike Run Club) /NTC(Nike Training Club) ”です。
コロナ禍となってからというもの、在宅ワークや外出自粛を余儀なくされ、お家時間が増えたのではないでしょうか。
普段からジムに通っていた方も、運動する機会が減ってしまい運動不足を解消するための方法を模索していたかと思います。
ふとした瞬間に運動を始めたいと思い、少しでも運動不足を解消するためにフィットネス系アプリを使ってみようと試み、一度はアプリをダウンロードして使ってみたものの継続できなかった、、などの経験はありませんか?
今回のワークショップでは、フィットネス系アプリの中では知名度の高いNRC・NTCアプリを題材として選定しました。NRC・NTCアプリは知名度はあるものの、アプリのレビューにおいては継続して利用できなかった、などのコメントが寄せられていました。そこで我々は利用継続に着目し、どう改善すれば利用継続を促せるのかを体験シナリオから見直して考えてみることにしました。
どのような仕組みがあると自分でも続けられそうか…ぜひ一緒に考えてみてください!
今回のテーマ
フィットネスアプリ(NRC・NTC)を利用するユーザのニーズからアイディアを抽出し、ワークショップを通じて体験シナリオ作成まで、一連の流れを作成していきます。
また、体験シナリオ作成時に抑えるべき要点を事前に検討することで、体験シナリオで具体性をあげるための考え方を学んでいきましょう。
ワークショップのプロセス
- ペルソナ策定
- アイデア抽出
- 体験シナリオ (今回はここまでを説明します)
- 機能抽出/画面区分
- ワイヤーフレーム
- グランドデザイン
※今回は仮説で作成したペルソナをもとにワークショップを進めていきます。
体験シナリオとは?
今回のワークショップを行う上で、まずは体験シナリオがどういうものなのかを理解する必要があります。
本章に入る前に、体験シナリオについて触れていきたいと思います。
体験シナリオはオンライン・オフラインを問わず、サービスやプロダクトを通じ、ユーザが目的を達成していくための一連のプロセスを可視化していきます。構造化シナリオ法を用いることによって、ユーザが理想とする体験ををさらに図式化していきます。
サービスやプロダクトを提供する側にとっては、ユーザに利用してもらうタッチポイント(きっかけ)の設計や提供価値の明確化、サービス内導線の設計、ロイヤリティー設計などあらゆる施策に活用できます。
また、今回着目した継続利用においても同様に、利用価値の最大化を図るための施策を導く手法としても有効となります。
体験シナリオ作成により、実現可能なことは下記です。
ターゲットユーザにとって魅力的な価値を洗い出すことができる
理想的な体験もとに、ユーザの導線に基づいた情報設計が可能になる
ユーザのニーズに応えるサービスの構築が可能になる
上記のように、体験シナリオを作成することによって、サービス提供価値やユーザの要求事項を明確にすることができます。また、サービス視点・ユーザ視点からも不透明な事象を表面化することで理解を深めることができます。
ここからは、体験シナリオを作成する上で重要なポイントとなる「UXの概念」と「時間軸」について説明をしていきます。
UXの概念とは
UXの概念を理解するためのポイントには大きく分けて3つあります。
1.ユーザーによる主観的な評価
サービスやプロダクトから得られる体験を通じて、結果的に抱かれる感情(満足感や不満)によって評価へと繋がっていく。
2.コンテクスト(分脈)
サービスやプロダクトを利用する前、利用した後、つまりサービスから離れている期間も含め、日常的な分脈から一貫性を持たせることが重要である。
3.サービス・プロダクトとの長期的な関係性の構築
ユーザーとサービスとの関わりにおいて、サービスを使用する前・使用中、使用後、利用時間全体、と一時的なものに限られることはなく、長く使う間の経験すべてがUXの範囲であること。
これら3点を理解することで、UX(ユーザ体験)への理解をさらに深め、体験シナリオを作成することができます。
UXの時間軸とは
UXは4つの時間軸に分けることができます。
1.予期的UX
予期的UXとはサービスを実際に使用する前工程における体験です。
例えば何か物を購入する前に広告や口コミ、Webサイトを見て実際に買った場合の体験を想像することが予期的UXにあたります。
2.一時的UX
一時的UXとはサービスを実際に使用している最中の体験であり、この体験は常に変化します。一時的UXでは、主に直感的で感情的な反応に基づいて評価が形成されます。
3.エピソード的UX
エピソード的UXは、体験を内省している状態です。
例えば、webサイトで商品を購入し、気に入った。そして、商品の感想をSNSで共有した。などがエピソード的UXにあたります。また、サービスを利用するたびに蓄積されていくもので、サービスと関わり続ける限り良い体験をした、いつも通りの体験をしたなど繰り返されます。これらの積み重ねがユーザにとってサービスへの理解を深めていきます。
4.累積的UX
累積的UXはサービスの使用期間全体を振り返るときの体験です。
例えば、ストレスなく注文が完了でき、すぐに洋服が届いて大変満足した。口コミサイトに星5の評価を付け、「服が可愛く満足です。」とコメントを記載しておいた。などが累積的UXにあたります。
ここまでで体験シナリオを作成するまでに必要な前提知識の説明は終わりです。
実際にここから、今回ワークショップの説明に入っていきたいと思います。
仮説ペルソナ
まずはペルソナの理解をしていきます。
基本情報
35歳/男性/独身(一人暮らし)/東京在住/職業:ITコンサルタント
ペルソナが抱えている課題の背景
コロナの影響ですっと家にいることによって、外出する機会が減ってしまい、体がなまってしまった。
近所のコンビニやスーパーしか行かず、コロナ前に比べると歩く歩数が減ってしまい、太ってしまったことによって、危機感を感じている。
とりあえず、万歩計アプリを入れ、毎日歩く歩数をカウントしてみることにした。
調べてみると平均的に1日にあるく歩数が圧倒的に足りていないため、足りてない歩数を補う必要があると感じた。
ただ、歩くには時間がかかり効率的ではないと感じたため、ランニングを始めてみようと思った。
NTCアプリをインストールしてランニングを始めてみたが、めんどくさくなり、3日でやめてしまった。またブクブク太り始めた。
アイデア抽出
ペルソナの理解を終えたら、アイデア抽出を行っていきます。
ペルソナが抱えている複数の課題をもとにアイデア記入シートにアイデアを記入していきます。(今回のワークショップでは事前にアイディアの制約があります。)
アイディアの制約
・既存のNRCアプリに機能追加や改修で実現できること
・継続する仕組みを含んだアイディアであること
上記制約を踏まえ、各チームでアイデアの抽出を行います。
Team A
Team B
ここまでで、課題に対するアイデア抽出が終了したので、
抽出したアイデアをさらにブラッシュアップし、それぞれの時間軸ごとに体験シナリオを作成していきます。
体験シナリオ作成(一時的UX)
①まずは、アイデア記入シートで抽出した内容を元に、一時的UXを作成します。
体験シナリオの作成(予期的UX)
②サービスを利用する前の予期的UXを作成します。
体験シナリオの作成(エピソード的UX)
③サービスを利用した後のエピソード的 UXを作成します。
体験シナリオの作成(累積的UX)
④サービスを継続的に利用したくなる累積的UXを作成します。
体験シナリオのブラッシュアップ
ワークショップの成果
TeamAの作成したそれぞれのシナリオは下記です。
TeamBの作成したそれぞれのシナリオは下記です。
一時的UX
まとめ
今回は体験シナリオを考えました。
次回、本日ワークショップで抽出した体験シナリオを元に、機能リストを作成し、UI作成を行っていきます。