2015.2.17 火曜日

ユーザのニーズ(インサイト)を探る【後編】

SusaiSusai

「ユーザのニーズを探るアプローチ」として前回は、
①統計的アプローチ|アンケート等を用いて多数の意見を収集し、統計することで市場の動向を探る方法についてお話ししました。今回はもう一つの方法、
②根源的アプローチ|想定顧客を調査/理解/分析することにより、想定顧客に内存する共通の価値観を探るについてのお話しです。

②根源的アプローチ
 想定顧客を調査/理解/分析することにより、想定顧客に内存する共通の価値観を探る

この方法でユーザのニーズを探るために用いられる代表的手法は「フィールド調査」「ワークショプ」「デプスインタビュー」等があります。

手法は様々ありますが、習慣、文化的背景により共通の価値観が形成されるという前提のもと、その共通の価値観を調査し、分析することで市場の動向を探るといったプロセスとなります。
共通の価値観を抽出するにあたり、必要な試験対象者数は経験的に8〜12人とされています。
(心脳マーケティングの分野で知られるジェラルド・ザルトマン氏を始め、多くの専門家は、デプスインタビューを行う場合、対象者は経験的に10名程度いれば十分であると述べている。このような経験的数値、及び数式は、統計的アプローチ、経験的アプローチの両アプローチに含まれます。)

よって①の統計的アプローチの方法に対して少数の標本数に対する調査を実施する事となり、実施時の調査対象者の確保という課題が軽減されます。
また調査対象に対する理解度が深く、顕在化されていない要求事項を抽出する機会を広げる事ができ、さらにアンケート調査には現れない、言語化しづらい小さな感情の変化を観察する機会があります。
そして、対話/問答を通じて行動のきっかけとなる詳細な思考の経緯をたどることができるといった特徴も有ります。

②の根源的アプローチにおける詳細な手法は次回以降の記事で紹介し 、ここでは調査を計画(設計)する際の私達が実施しているプロセスを説明します。

  1. 調査対象、調査により得たい内容を定義する
    (誰をどのような条件下で調査するか/調査した結果、調査対象に共通の価値観を得たい)
  2. 調査により得たい項目までの過程をモデル化する
  3. 調査の実施
    (フィールド調査、ワークショプ、デプスインタビュー等を用いて調査を実施する)
  4. 解析/分析

このアプローチに対しては課題が2つ存在します。

課題1 調査対象の定義に対する正確さ

①の統計的アプローチでは予め標本の中に誤差が含まれる事を前提とし、また、標本数が多数であるため、調査対象者に対する許容性が確保されています。しかし、②の根源的アプローチにおいては調査対象者一人の調査結果が、全調査結果において占める割合が大きくなるため、慎重に調査対象者を定義しなくてはなりません。
対象者の基本属性(年齢、職業、生活様式、家族構成等)だけでなく、質的要因(趣味/嗜好、考え方、性格)も結果に影響を与えるために考慮に入れる必要があります。

調査対象者が想定顧客と違う共通の価値観を持っていた(誤差要因を含んだ)場合、調査/分析におきな矛盾を含む危険性があります。

課題2 汎用的なアプリケーションを想定し調査対象者をあまり限定しない場合、抽出される共通の価値観は顕在化したものが多い。

例えば、「OLのランチに対するニーズ」の調査を実施した場合、OLの〝性別、(年齢)、職業、生活様式〟がある程度限定された条件で、調査対象者を設定し調査を行った結果、「同僚とおしゃべりをしながら片手間で、且つオシャレな姿勢で美味しく食べたい」という共通の価値観を抽出したと仮定します。

ここでOLだけではなく、会社員全体を想定顧客とし同様の調査を実施した場合、会社員に共通して内存する共通の価値観はOLという限定条件をなくすために一般化し、抽出される共通の価値観自体も、これに伴い一般化されます。

「同僚とおしゃべりをしながら片手間でかつおしゃれな姿勢で美味しく食べたい」という価値観の中で、例えば「おしゃれな姿勢」や、「同僚とのおしゃべり」に魅力を感じないセグメントに対しても共通する価値観へと一般化していくため、「美味しいものを食べたい」といったごく当たり前の価値観へと一般化されやすい可能性があるのです。

これは調査結果として正しい結果を得たとしても、自明なため無意味な調査です。

顕在的なニーズの抽出が目的であれば、詳細な調査を実施する必要性がありません。 また統計的アプローチに対して調査で生じる誤差の影響度が高いという危険性を含みます。

このように調査対象を限定せずに調査を実施する場合、より深く緻密な調査が求められるため観測者/調査者の熟練度、理解/判断力に対する依存度が高くなると考えられます。

①、②のどちらの方法を用いるにしても、確実な手法はありません。

私達はプロジェクトの前提条件により下記の図に従いアプローチを行っております。

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重要なことは 「調査における十分な計画」と、「各調査工程で目的に対して適切な手法を設計/選択する」こと、「調査方法に潜む危険性を把握し分析する」ことではないかと私は思います。