2015.2.8 日曜日

使われるアプリを作るために

AokiAoki

近年、IT分野の企業以外にも、自社のサービスや製品の延長でアプリ(アプリケーション)を開発・提供する企業が増えてきました。例えば、ヤマダ電機や無印良品(MUJI passport)などの小売業、講談社や小学館といった出版社、JR東日本や小田急電鉄といった鉄道会社などが非IT企業によるアプリ提供の例です。

このような動向から「アプリを提供企業=IT企業」といった概念はなくなってきたといます。しかし、非IT企業にとってもアプリが無視できない存在になってきた一方で、市場には大量のアプリが存在しており(2014年時点でApp Store:約130万、Google Play:約120万)、その中からリリースしたアプリを人々に使ってもらうためには、人々がアプリを使いたくなる要素が必要となります。

では、その要素とは何か?その要素をきちんと把握して盛り込むために、戦略的にアプリを作りこんでいくアプローチを、本ブログで紹介していきます。

本記事では、その第一歩として、アプリを構成する価値について記載します。
 

アプリを取り巻く環境の変化

アプリは、パーソナルコンピューター(以後パソコン)の普及にともなって、一般の人々の間に浸透してきました。そして、インターネットの普及・高速化、スマートフォンの普及に伴って、アプリが担う役割や及ぼす影響も変わってきています。ここ最近では、ウェアラブルデバイスの台頭により、アプリを取り巻く環境がさらに変わる可能性が出てきました。

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スマートフォン普及の影響

特に、本記事では、スマートフォンの普及によるアプリの変化に着目することで、近年のアプリの役割・影響について述べます。

モバイルデータ解析を行うFlurry社では、モバイル端末使用時間が2013年の調査で平均2時間38分であったのに対して、2014年の調査で4分多い平均2時間42分であったと発表しており、モバイル端末使用時間が増加傾向にあることが伺えます。同様に、Flurry社の調査では、モバイル端末使用時間に占めるブラウザとアプリの使用時間が下記の通りであったと発表しています。この結果からも、アプリに触れる時間が増えていることが伺えます。

  • 2013年  ブラウザ:20%、アプリ:80%
  • 2014年  ブラウザ:14%、アプリ:86%

また、情報メディア白書2014による調査データから、人々がアプリを利用するシーン(街中、電車・バス内、職場・学校など)が大幅に増えていることがわかります。
パソコンを利用する自宅外のシーンは、主に街中(この場合はカフェなどの飲食店内が想定される)、職場・学校であったのに対して、スマートフォンでは、その他のシーンが全体的に増えています。特に、各シーンでのスマートフォンへの接触率は高くなっています。

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近年アプリが帯びた役割

スマートフォンの普及に伴って、アプリの利用機会と時間が増える中で、アプリにも役割の変化が起こっています。

前述で示した、モバイル端末使用時間に占めるブラウザとアプリの使用時間の変化に着目すると、2013年から2014年にかけてアプリの使用時間が占める割合が80%から86%と、6ポイント増加しています。

ブラウザからアプリへのシフトの要因の一つとして考えられるのが、元々ブラウザでアクセスして利用していたWebコンテンツやWebサービスのアプリ化の動きです。例えば、アプリ化が進んでいる領域としては、SNSやキュレーション、コマースなどがあります。

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では、なぜこれらのWebコンテンツ・サービスは、ブラウザで利用できるにもかかわらず、アプリ化されたのでしょうか。その要因として、ユーザーにとって下記のメリットがあることがあげられます。ユーザーテストを行っていると、アプリに対してこのようなメリットがよくあげられます。

  • アプリの場合、ホーム画面から直接サービス・コンテンツにアクセスできるため、必要な時にすぐに使える
  • ブラウザよりも操作速度が早いため、快適に利用できる
  • ブラウザよりもユーザーインタフェースを柔軟に実装できるため、操作感を楽しめる
  • サービス・コンテンツに関係ないユーザーインタフェース(ブラウザ自体のユーザーインタフェース)がないため、サービス・コンテンツに没入できる

このような傾向からコンテンツやサービスを快適に利用するためのユーザーインタフェースとして、アプリが求められてきていることがわかります。
 
このように、ユーザーインタフェースとしての役割をアプリに求められる傾向は、パソコンが普及し、アプリが一般に浸透し始めた頃には見受けられませんでした。元々、パソコンが普及し始めた当初のアプリは、機能とユーザーインタフェースが一つのアプリで完結しており、ユーザーインタフェースだけ切り離されて提供されることはありませんでした。
しかし、スマートフォンの普及により浸透してきたモバイル・アプリに関しては、既にWebコンテツやWebサービスとしての機能に対して有用性が認識されているものを、より快適に利用するためのユーザーインタフェースとして求められるものが出てきています。
このことから、「より快適に利用できるユーザーインタフェース」という価値が一つのアプリを成立させており、ユーザーインタフェースを「コンテンツやサービスの快適な利用を提供する働き」という機能と捉えることができます。

つまり、アプリを構成する価値として、下記2つの要素が存在すると考えられます。

  • 従来の意味での機能
    (表計算、写真撮影、メモなど)
  • ユーザーインタフェースという機能
    (コンテンツやサービスを利用しやすくする働き)

 

使われるアプリを作るための課題

使われるアプリを作るためには、作る目的とアプリの特性をきちんと見極めて、先ほど述べた2つの価値をどのように提供するかを考える必要があります。例えば、既にあるWebサービスの利用機会の増加と操作性の向上を目的とするのであれば、「ユーザーインタフェースという機能」を提供するモバイル・アプリの作成が選択肢としてあげられます。また、新たにサービスを立ち上げるのであれば、Webサービスとしてブラウザ経由の利用だけに限定するのか、モバイル・アプリも提供するのか、などを検討する必要があります。

このような検討では、ユーザーの欲求とそのタイミングを見定めながら、判断を行う必要があります。しかし、利用シーンが多様化する中で、ユーザーの欲求とそのタイミングを見定めることは、非常に複雑な思考を要します。そのため、体系的なアプローチで、考慮すべき要素を整理しながら、判断要因をまとめていく必要があります。そのアプローチについて、今後本ブログで紹介していきます。